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血と束縛と의 모든 챕터: 챕터 871 - 챕터 880

924 챕터

第23話(28)

 しかし今日は、花見会に出席してほんの数時間ほどしか経っていないというのに、一気に情報に触れすぎたようだ。それに人にも酔った。少し頭がぼうっとしている。 縁台に腰掛けた和彦は池を眺めながら、ペットボトルに口をつける。午後に入ってから気温が上がってきて、雲一つない晴天ということもあり汗が滲む。冷たい水が喉を通る感触が心地よく思えるほどだ。 守光に許可を得て、一人で庭を散策できる時間ができて助かった。人前で無様な姿を晒しては、和彦一人が恥をかくならともかく、守光の顔に泥を塗るところだった。 短く息を吐くと、頭上を仰ぎ見る。釣殿を意識したものらしい池の辺にあるこの建物は、風通しがいいよう周囲を吹き放ちにしており、屋根は四本の柱で支えられている。おかげで陽射しは遮られ、休憩をするにはうってつけの場所だ。 何よりありがたいのは、人が来ないということだ。 すっかり気を抜いた和彦が手すりに腕をかけようとしたとき、砂利を踏む音が耳に届く。反射的に振り返ると、賢吾が立っていた。「どうして――」 思わず和彦が洩らすと、陽射しを避けるように賢吾も屋根の下に入ってくる。周囲をぐるりと見回してから、当然のように和彦の隣に腰掛けた。「こんなところに一人でいると、怖い男にかどわかされるぞ、先生」「あんたみたいな男が、他にいるわけないだろっ……」 ムキになって言い返すと、賢吾がニヤリと笑う。その顔を見て、胸の奥がじわりと熱くなる。素直には認めたくないが、賢吾の声を聞いて安心したのだ。ずっと守光の側にいたため、今日賢吾と会話を交わしたのは、これが初めてだった。「少しの間、様子を見ていたが、オヤジの毒気にあてられたような顔をしていたな」「……悪趣味だな」「何を吹き込まれたのかと、考えていたんだ」 実は賢吾は、自分と守光の会話をどこかで聞いていたのではないかと、ありえないことを一瞬本気で和彦は考えてしまう。 警戒心を露わにした和彦の反応に満足したように、賢吾は目を細める。「オヤジはやけに、先生に執心だ。息子と孫が骨抜きになっている色男を、物珍しがっている
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第23話(29)

 和彦と賢吾の妖しい雰囲気を感じ取ったはずだろうが、かまわず南郷は、砂利を踏む派手な足音を立てて側までやってくる。「ご挨拶が遅くなりました、長嶺組長」 南郷は大きな体を折り曲げるようにして、深々と頭を下げる。賢吾は、ゾッとするほど冷ややかな眼差しを南郷に向けていた。 和彦は、静かで穏やかだった場の空気が一瞬にして張り詰めたことを、肌で感じ取る。敵意や悪意といったあらかさまなものではないが、抜き差しならぬ何かが二人の男の間を行き来していた。「新年の挨拶のとき以来か、南郷。オヤジによく尽くしてくれているようで、息子として礼を言う。――花見の席で、オヤジがお前を連れ歩いている姿を見ていると、まるでお前のほうが、本当の息子のようだった」 傍で聞いているほうがヒヤリとするようなことを賢吾が言う。南郷がようやく頭を上げ、賢吾に負けず劣らず鋭い眼差しを向けてくる。陽射しの下で動き回っていたのか、浅黒い肌は汗で濡れていた。「野良犬同然だったわたしを、長嶺会長には過分なほど引き立てていただいています。ご恩に報いるために――」「堅苦しいことはいい。総和会の中では、お前はオヤジの息子だ。そういう役割を与えられている。お前自身、身に覚えはあるだろ?」「……わたしの口からはなんとも」 賢吾は挑発的に、南郷は不気味なほど控えめに。二人のやり取りを息を詰めて見守っていた和彦は、無意識のうちに賢吾の腕に手をかける。それでなくても、賢吾の表現を借りるなら、守光の毒気にあてられたような状態の和彦には、今の緊張感が耐えられなかった。 南郷の目があるというのに、賢吾が再び頬を撫でてくる。「大丈夫か、先生?」「二人で話したいなら、邪魔をしたくないからぼくは場所を移動する」 和彦の言葉に、一瞬の間を置いて賢吾は薄い笑みを浮かべた。そして、南郷を見る。「南郷、俺じゃなく、先生に用があって来たんじゃないのか?」「はい。会長が、先生をお呼びです」「ふん。だったら、俺が先生を独占しているわけにはいかねーな」 そう言って賢吾の手が背にかかり、促されるように和彦は立ち上がる。南郷の元に向
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第23話(30)

 守光とともにダイニングに行くと、入れ違いに一人の男が玄関へと向かう。守光の生活全般の世話をしているそうで、今日、和彦の着替えを用意したり、布団を敷いてくれたのも彼だった。ただし、まだ直接言葉を交わしていない。砕けた空気で接してくれる長嶺組の男たちとは対照的だ。 ダイニングテーブルの上にはすでに二人分のお茶が用意されており、守光に促されて和彦はイスに腰掛ける。 向き合い、熱いお茶を啜ってから、和彦はほっと息を吐き出す。 同じ建物の中で、今も何人もの男たちが働いているのだろうが、少なくともこの空間は静かだった。気を抜くと、ここがどんな場所なのか忘れてしまいそうになる。「今日はご苦労だった。大勢の人間に会って、気疲れしただろう」 守光からかけられた言葉に、素直に和彦は頷く。「まだ、信じられません。自分が、大きな組織の行事ごとに出席していたなんて」「あんたは本当に、肝が据わっている。気負うわけでもなく、澄ました顔で場に馴染んでいた」「……緊張しすぎて、顔の筋肉が動かなかっただけです。とにかく迷惑をかけてはいけないと、それだけで頭がいっぱいでした」 ふふ、と守光が低く笑い声を洩らす。「心配せんでも、あんたは――化ける。下手な極道など太刀打ちできんような、したたかさとふてぶてしさと妖しさで、厄介な男たちを手懐けていけばいい。そしてできれば、長嶺の男たちを可愛がって、支えてやってほしい」 和彦は目を丸くして、守光の顔を凝視する。今日は守光から、たくさんのことを聞かされた。まるでこの先、和彦がどんな日々を送り、男たちから何を求められるのか知っているような口ぶりで。 自分の目の前に、どこに続いているのかわからない道が伸びている光景を想像し、和彦は急に不安に襲われる。つい、ささやかな抵抗を示すようにこう言っていた。「先のことは……、わかりません。そうありたいとぼくが願っても、賢吾さんや千尋が、同じことを願うとは限りませんし」「ふむ。むしろわしは、それはあまり心配していない。あんたが逃げ出そうとしても、賢吾も千尋も許さんだろう。縛り上げて、監禁してでも、あんた
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第23話(31)

 守光の発した穏やかな声に我に返り、和彦は慌てて手を動かす。何度となく賢吾や三田村の刺青を撫でているというのに、浴衣を通してとはいえ守光の刺青に触れるのは、ひどく抵抗がある。恐れ多い、という感覚があるのだ。 その気持ちを抑えつけ、守光の腰や背だけではなく、肩も揉んでいく。意外な力仕事に、風呂上がりということもあって和彦の肌は汗ばみ、息が弾む。「なかなか、体力がいるだろう。やり方を覚えて、賢吾にもしてやるといい。きっと喜ぶ」「そうですね――」 前触れもなく守光が身じろぎ、体を起こす。何事かと思ったとき、和彦は腕を掴まれて引っ張られ、咄嗟に守光の肩に手を置いた。この瞬間、自分の本来の役目を果たすときがきたのだと悟った。 長嶺守光の〈オンナ〉としての役目を。 室内をぼんやりと照らす明かりは、守光の端整な顔に、昼間とはまったく違う表情を造り出す。静かだが、凄みを帯びた眼差しに見つめられ、漠然と和彦は感じた。世代は違えど、抱えた欲望の激しさは、賢吾とまったく同じだと。 総和会会長という肩書きを持っていながら、守光にはまだ欲しいものがあるのだろうか。そんなことを考えているうちに、和彦は唇を塞がれる。 味わうように何度も唇を吸われながら、まだ湿っている後ろ髪を梳かれ、うなじを撫でられる。口腔に守光の舌が入り込み、まさぐられる頃、和彦はぎこちなく体から力を抜いていた。目隠しをしていない状態で初めて守光に求められて、緊張している。和彦のその緊張を愛でるように、浴衣の上から守光が肩や背を撫でてきた。 緩やかに舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を、露骨に濡れた音を立てながら吸われ、軽く歯を立てられると、たまらず和彦は鼻にかかった声を洩らす。守光の息遣いが笑った。 抱き寄せられ、自然な流れで布団に押し倒される。伏せていた視線を上げると、驚くほど間近に守光の鋭い目があった。怖い、と思った瞬間に、無視できない肉欲の疼きが和彦の胸の奥で生まれる。 もう一度、深い口づけを交わしながら、浴衣の胸元を広げられていた。さらに守光の手は下がり、下着を脱がされる。「うっ……」 両足の間に差し込まれた手に、いきなり
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第23話(32)

 戸惑いと恐怖、興奮と快感が嵐となって和彦の中で吹き荒れる。総和会会長という肩書きを持つ男に、欲望を口腔で愛撫されているのだ。やめてもらいたいと思う反面、絡みつく愛撫に、異常なほど感じてしまう。 ビクビクと体を震わせる和彦の反応を楽しんでいるのか、守光の舌が優しく先端にまとわりつき、次の瞬間にはきつく吸い上げられる。 いつの間にか和彦は、放埓に声を上げて乱れていた。求められるままに、はしたなく先端から透明なしずくを垂らし、守光に舐め取ってもらう。しかし守光は貪欲で、一体どうすれば和彦がさらに悦びのしずくを垂らすかを熟知している。汗とそれ以外のもので湿りを帯びた内奥の入口を、指の腹で刺激してきた。「待って、ください……。まだ、そこは……」「まだ、じゃないだろう。もうこんなに、欲しがっている」 柔らかだが、否とは言わせない口調で言い切って、守光の指が内奥に侵入してくる。追い討ちをかけるように、反り返った欲望をじっくりと舐め上げられ、満足に息もできないほど和彦は感じてしまう。「ふぁっ……、あっ、あう……ん」 布団の上に両足を突っ張らせ、腰を浮かせる。かまわず守光の指は蠢き、内奥の肉を割り開きながら、巧みに襞と粘膜を擦り上げてくる。快感を知らせるように、和彦のものの先端からとめどなく透明なしずくが垂れ、守光の唇に吸い取られる。 これまで守光は、こんなふうにしどけなく乱れる和彦の姿を、つぶさに観察してきたのだろう。今になってそのことが例えようもなく恥ずかしいと思え、官能を煽る。肌を重ねていないとはいえ、相手の姿が見えるというだけで、行為は情熱を増すのだ。 和彦の内奥がどこまで蕩けるのか試すように、時間をかけて愛撫を加えられ、三本の指を内奥に含まされる。内から刺激するように軽く指を曲げられると、自分でもわかるほどはしたなく内奥を収縮させ、嬉々として指を締め付けてしまう。「うっ、くぅっ――」 守光は、素直な〈オンナ〉に褒美を与えるように、蠢く襞と粘膜を丹念に指の腹で撫で、擦り上げてくる。和彦は腰を震わせ、甘い呻き声を洩らしていた。
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第23話(33)

 内奥深くまで欲望を埋め込んだ守光は、すぐに慎重さを取り戻し、嬲るように掻き回してくる。感じやすくなっている襞と粘膜は、媚びるように守光のものにまとわりつき、吸い付く。そして、内奥全体は淫らな蠕動を繰り返す。 「はっ……、あっ、あっ、はあっ……」  一度声を上げてしまうと、もう抑えられなかった。守光にしても、あえて和彦に声を上げさせるように、弱い部分を攻めてくる。 「やっ、めて……くだ――、そこは、つらいんです」  両足の間に片手が差し込まれ、柔らかな膨らみを揉みしだかれる。もう、下肢に力が入らなくなっていた。 「男を悦ばせる体だ。わしは、あんたに触れるのが、楽しくてたまらん」  そんなことを囁いてすぐに守光は、襖の向こうにいる男には冷静な指示を与える。何か問題が起こったようだが、交わされる会話の内容を理解できるほどの思考力は、和彦には残されていない。  不意打ちのように内奥を強く突き上げられ、布団の上に二度目の精を飛び散らせていた。  呻き声を洩らした和彦はこのとき、鼻先を掠める優しい香りに気づいた。昼間嗅いだ、桜の花のものだ。  この部屋に花など飾っていない。窓を閉め切っているため、外から香りが入り込んでくることもないはずだ。  そうなるとこの香りは――。  ここで和彦は、立て続けに嬌声を上げる。内奥深くに熱い精を注ぎ込まれ、桜の香りはあっという間に霧散していた。 「あんたも、悦んでいるな……」  そう洩らした守光が、汗に濡れて熱くなった和彦の肌をてのひらで撫でる。  いつの間にか、襖の向こうにいた男の気配はなくなっていた。どれだけ恥知らずな嬌声を聞かれただろうかと考えた途端、激しい羞恥に襲われ、突き出したままの腰をわずかに揺らす。それが合図のように守光が繋がりを解き、内奥からは、注がれたばかりの精がゆっくりと溢れ出してきた。  いまさらかもしれないが、最低限の慎みから浴衣で下肢を隠そうと手を伸ばしかけたが、守光に止められる。それどころか、内奥に指を挿入された。 「うっ、うぅっ」  驚くほど脆く、感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、守光の指に絡みつく。精を掻き出すように指が出し入れされ、
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第23話(34)

 ここでふいに指が引き抜かれ、守光が動いた気配がした。喘ぐ和彦の耳に、室内を歩く微かな足音が届く。守光が何をしているのか、頭を動かして確認するほどの気力は和彦にはなかった。守光に注ぎ込まれた快感という毒で、全身が甘く痺れている。 すぐに戻ってきた守光に促され、仰向けとなる。まだ蕩けたままの和彦とは対照的に、浴衣の乱れを直した守光は、端然とした佇まいを取り戻していた。いや、そもそも守光は乱れていたのか――。 そんなことを考えているうちに、力の入らない片足を抱え上げられる。濡れて綻んだ内奥の入口を、守光はじっと見つめていた。そんな守光を、和彦は見ていられなかった。こんな光景を目にするぐらいなら、まだ目隠しをされていたほうがよかったとすら思った。 たまらず顔を背けると、落ち着いた声で守光が言った。「あんたのために、〈オモチャ〉を作らせよう。太さ、長さ、形と、希望があれば全部言えばいい。細かいところまでな」 何を言っているのかと問いかけようとしたとき、内奥の入口に滑らかな感触が押し当てられる。不思議な感触を持つそれは、まるで熱を持たない欲望のようでありながら、同じような強引さで内奥をこじ開けてきた。「あっ……」 ようやく和彦は、自分の中に押し入ってくるものがなんであるか理解した。男の欲望の形を模した、卑猥な道具だ。 内奥深くまで収まったものが、円を描くように動かされる。自分ではどうしようもない反応だが、和彦は卑猥な道具を締め付けていた。内から焼かれそうな熱さも、官能を刺激される逞しい脈動もないが、それでも襞や粘膜を擦り上げられると、慎みを失っている内奥は悦び、感じてしまう。「うっ、うぅっ」 和彦の声が艶を帯びていることに気づいたらしく、守光は本格的に道具で内奥を嬲り始めた。「この遊びは、賢吾と千尋には秘密だ。あの二人は、欲望に体力が伴っているが、わしは――。多少の見栄を張らせてもらいたいと思うのは、悪いことかね?」 長嶺の男がこういう言い方をするときは、和彦から欲しい返事をもぎ取ろうとするときだ。一度内奥から引き抜かれた道具を奥深くまで突き込まれ、和彦は声も出せずに喉を反らす。 爪先から
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第24話(1)

 シートに身を預けた和彦はぼんやりと、ウィンドーの外を眺める。仕事から解放されている土曜日の昼間というだけで心浮き立つものがあるが、そこに、春の暖かな気候とこれ以上ない晴天が加わると、もうじっとはしていられない。 そんな和彦の視界に飛び込んでくるのは、花見の名所として知られる公園周辺の光景で、人や車で混雑している。通りを行く人たちが浮かれているように見えるのはきっと、和彦自身が浮かれているからだろう。 みんな楽しそうだと口中で呟き、堪えきれず和彦は口元を緩める。本当は、信号待ちの車から今すぐにでも飛び出して、駆けていきたい気分だった。車中で過ごす一分一秒がもどかしくて仕方ないのだ。「混んでますね」 ハンドルを握る組員に話しかけられ、数秒の間を置いて慌てて頷く。意識が外にばかり向いていたため、危うく聞き流すところだった。「ようやく桜が満開になったところに、天気のいい土曜日だ。みんな、考えることは同じなんだろうな。――ここから歩いていくから、適当に車道脇に寄せてくれ」「酔っ払いに絡まれないよう気をつけてくださいね」「そんな度胸のある人間がいるとも思えないが……」 誰のことを指して言っているのかわかったらしく、組員は短く笑い声を洩らした。 車が素早く車道脇に寄り、すかさず和彦は車から降りる。ガードレールを跨いだときには、すでに車は走り去るところで、それを見送ってから人の流れに乗る。〈あの男〉はどこにいるのだろうかと、歩きながら軽く周囲を見回す。そして、すぐに見つけ出した。なんといっても目立つのだ。 そこだけ空気が違うようだった。春の陽射しが降り注ぎ、楽しげな様子の人たちが行き交う中、その男――三田村は、ごっそりと感情をどこかに置き忘れたような無表情で立っていた。地味な色合いのスーツをきっちりと着込んでおり、人に紛れればかろうじてビジネスマンに見えなくもないが、それでも三田村の持つ雰囲気は鋭すぎる。 その三田村の手にはデパートの紙袋があり、微妙な生活感を醸し出している。裏の世界で生きている男に無体なことをさせているなと、和彦はそっと苦笑を洩らしていた。 ゆっくりと辺りに視線を向けていた三
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第24話(2)

 長嶺組の男たちは、怖くて物騒なくせに、和彦に優しい。その優しさが、裏の世界から逃がさないための打算含みのものだとしても、やはり心地いいし、嬉しいのだ。「……あまりぼくを甘やかすと、とんでもないわがままを言い出すぞ」「この間も言ったが、先生のわがままはささやかだ。先生が本気を出したら、俺が困るぐらいのわがままを言ってくれるのかな」 三田村の困り顔を見てみたい気もするが、それを見た自分が、ひどい罪悪感に苛まれるのは容易に想像できる。和彦はぼそぼそと応じた。「あんたに嫌われたら、ぼくが困る」 土曜日の昼間から、酔っ払ったような会話をしているなと、和彦は急に気恥ずかしさに襲われる。一方の三田村は巧みに表情を隠してしまい、何を考えているのか読めない。 不自然に会話が途切れたまま公園内を歩いていると、ちょうど空いたベンチを見つける。広場でシートを広げて大人数で花見を楽しんでいる人は多いが、二人連れでベンチに腰掛け、のんびりと昼食をとっている人の姿も意外にある。おかげで、妙にちぐはぐな組み合わせともいえる和彦と三田村も、さほど肩身の狭い思いをしなくて済む。 ペットボトルのお茶と弁当を手渡され、さっそく昼食の時間となった。 ご飯を口に運びつつ、和彦は頭上の桜を見上げる。揺れる枝の間から青空が覗き、桜色の花びらとの対比にため息が洩れそうになる。「――去年は、こんなに桜を見られなかった」「いろいろあって、そんな余裕はなかっただろうからな、先生は」「今も必死だ。ただ、折り合いをつける方法を覚えたんだろうな……」 ヤクザに守られながら、表向きは健全なクリニックを経営し、裏では不法な治療に手を貸す。そして、賢吾の許可の下、複数の男たちと関係を持っているのだ。そうやって和彦は毎日、道徳心や良心といったものに折り合いをつけて、バランスを取りながら生活をしている。「一年前は、自分がこんな状況になっているなんて、考えもしなかった」「……一年前の今頃、先生は確か――」「組長に振り回されて、怯えていたな」 弁当を食べながら話
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第24話(3)

 空になったグラスを受け取ろうと三田村が片手を伸ばしてきたが、反射的に躱す。不思議そうな顔をした三田村に腰を屈めてもらい、和彦はやっと、大事な〈オトコ〉に触れることができる。 片手を頬に押し当てると、気が緩んだように三田村は顔を綻ばせた。和彦はそっと目を細め、何度も三田村の頬を撫でてから、あごにうっすらと残る細い傷跡に指先を這わせる。ここまでされるがままになっていた三田村がふいに手を伸ばし、今度こそグラスを取り上げられる。 キッチンまで持っていく時間すら惜しむように、グラスを床の上に置いた三田村が立ち上がり、和彦は肩を掴まれてベッドに押し倒された。 体中で三田村の重みを感じた瞬間、気が遠くなるような高揚感が和彦の中を駆け抜ける。「三田村……」 我ながら赤面したくなるような甘い声で呼びかけると、あっという間に三田村の表情が余裕のないものになる。だが、それは和彦も同じだ。三田村に荒々しく唇を塞がれると、もう何も考えられなくなり、すがりつくように三田村の背に両腕を回していた。 激しく互いの唇と舌を吸い合い、唾液を啜り合う。まるで口腔を犯すように三田村の熱い舌が押し込まれ、粘膜を舐め回される。その一方で、Tシャツを乱暴にたくし上げられていた。汗ばんだ大きなてのひらに脇腹や腹部を撫でられて、たったそれだけのことでゾクゾクするような疼きを感じる。 露わになった胸元に、三田村が濡れた唇を押し当ててくる。口づけの荒々しさとは打って変わって、じっくりと丁寧に。身につけているものすべてを脱がせてもらうと、今度は和彦が、三田村の着ているものに手をかける。 ジャケットを脱がせ、ネクタイを解き、ワイシャツのボタンを一つ、二つと外していたが、突然三田村が体を起こし、自らボタンを外し始める。三田村の体が露わになっていく様子を、和彦はぼうっと見上げる。三田村の体の熱さと感触を、身を捩りたくなるほど待ち焦がれていた。はしたないと感じながらも、早く欲しいと考えてしまう。 堅苦しいスーツを脱ぎ捨てた三田村は、明らかに高ぶっていた。覆い被さってきた三田村の体に両腕を回そうとした和彦だが、手首を掴まれてベッドに押さえつけられる。三田村は、和彦の体をじっと見下ろしてきた
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