カールが専属執事になってから、ずっと一緒にいる間柄が、唐突に見合いをセッテングされることで、俺と離れるのが寂しく、そんな顔をさせているんだと思った。 世話を焼く以上のことをせず、執事として俺にたいし丁寧に接するカールの心情が見えないまま、自分だけモヤモヤを抱えた。 好きな相手がいるのに、無理やり見合いをさせられたり、パーティで女のコに声をかけられたら、それなりに優しく相手をしなければならない己の立ち位置を、もどかしく思った。「えっと先週逢ったのがソフィア嬢で、今日逢ったのはオリビア嬢だったか。少しずつだけど、インプットできるようになったな」 指折り数えながら廊下を突き進んだら、寝室の扉が目に留まる。しっかり閉めて出たハズのそれが、ほんの少しだけ開いた状態なのを訝しく思い、首を傾げた。(寝室に貴重品は置いていない。盗まれるものはないが、ベッドメイキングしたメイドが、閉め忘れたのだろうか?) それでも泥棒が侵入していることを想定して、足音をたてずに忍び寄り、扉の隙間から中の様子を窺った。カーテンが閉じられていて中は薄暗く、耳だけが頼りになる。「…っん、あぁっ、んんっ……ぁっ…っぁあ」 最初、誰の声かわからなかった。苦しげなものなのに、艶っぽさを含む声を聞いたことがない。「アンドレア様ぁっ、うぅっ……もっとシて」「…っ!」 自分の名が出たことで声の主がカールだとわかり、慌てて口元を押さえたが、下半身がすぐさま反応した。カールの感じている声を聞いているだけで、痛いくらいに熱り勃つ。(アイツ、俺の寝室でナニをして――)「あっあっあっ…好きっ、好きです、アンドレア様っ、イクぅっ!」 掠れた声だったが、しっかりとそれを耳で捉えた。カールの本心を聞くことができて、胸が苦しくなるくらいにしなる。同じ気持ちでいることに、涙が出そうだった。 今すぐカールに抱きつき、襲いたい衝動に駆られた。俺のすべてを使ってアイツを絶頂させて、もっと好きにさせたいと切に願ったが。 唇を噛みしめてゆっくり後ずさりし、その場を静かに去る。曲がり角でしゃがみ込み、深呼吸して卑猥な気持ちをやり過ごすべく、なんとか耐え忍んだ。 そうこうしているうちに、遠くで扉の開閉の音が聞こえたので、曲がり角から様子を窺うと、カールがこっちに背中を向けて、足早に立ち去る姿が目に留まる。 俺
最終更新日 : 2025-11-04 続きを読む