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Semua Bab BL小説短編集: Bab 11 - Bab 20

62 Bab

悪い男2

好きなヤツの行動を、簡単に導き出してしまう自分を嘲笑いながら目を閉じると、彼女に向かって優しくほほ笑む藤原の顔が、まぶたの裏にしっかりと映り込む。 1年前はこんなふうに元カレが笑ってくれたらいいなと、何度も思った。ヤるだけヤって、気に食わないことがあれば、容赦なく暴力を振るう元カレにほとほと嫌気がさして、自分から別れを切りだしたのは必然だった。 すると別れた腹いせに、元カレが大学構内であることないことをでっち上げた噂を広めやがった。『那月は誘えば簡単に跨ってくる、ビッチなヤツだぜ』なんていう、信じられないことをあちこちに吹聴しまくったせいで、大学内にいるときはベッドのお誘いが絶えなくなったのである。 もちろん、すべて断った。ただひとり、藤原を除いて――。 あれは半年以上前のこと。青空が眩しく見えるのに、そこまでも暑さを感じない気候的には最高の環境下、大学の中庭にある大きな木の下で、俺はひとり読書にふけっていた。 ありもしない噂をバカな元カレが方々に流したことで、ベッドのお誘いと同時に、みんなから奇異な目で見られることにほとほと疲れきってしまい、人との付き合いを極力避けていた頃だった。『おまえ、名倉那月だろ?』 手にする本の内容が面白くなりかけた刹那、いきなり誰かに話しかけられた。読んでる本から渋々視線をあげると、青空を背負った見目麗しい男が俺を見下ろす。ミスキャンパスと呼び声高い、構内一かわいい彼女といつも一緒にいる有名人のため、誰もが知ってる男だった。「そうだけど。なにか用?」『誘えば寝るって噂、本当なのか?』 唐突に投げかけられた問いかけが意外すぎて、思わず持っていた本を閉じてしまった。栞を挟むことを忘れるくらいに、俺としては衝撃的だった。 コイツの彼女はミスキャンパスに選ばれるようなかわいいコだったし、藤原自身もイケメンに分類されるような男。そんなヤツが自分に声をかけること自体、どうにも信じられなかった。「……アンタ彼女持ちなのに、俺とヤりたいのかよ?」『男とヤるなんて、浮気のカウントに入らないだろ』 耳を疑う言葉をさらっと告げた藤原の顔は、彼女の前でいつも見せてる優しい顔じゃなく、自分の美貌を利用して俺とどうにかなりたいという欲望を漂わせる。俺自身、アッチの関係からしばらく足を遠のかせていたこともあり、妙に惹きつけられるもの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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悪い男3

 こんな人目のつく場所で、キスするような派手なことをしやがってと思ったが、大柄な藤原が自分を隠すようにキスしていることに気づいた。空いている片手で目の前にある胸を連打したら、呆気なく唇が解放される。「っ……。アンタ、なにを考えてるんだよ?」 かわいい彼女持ちの藤原が、誰かと浮気しているのを目撃されないようにとった、咄嗟の配慮なのかもしれない。そんな考えが容易に導き出されてしまったのに、思わず訊ねてしまった。「那月目当てのヤツに見られたら、ここぞとばかりに嫉妬されるかもしれないだろ。大学構内ではかなりの有名人だからさ」 腰に手を当てながら俺の顔を見下ろし、得意げに豪語されても信用できるわけない。だってコイツは遊び慣れてる。さっきされたキスのうまさが、すべて物語っていた。「自分の保身のために、やったんじゃないのか?」「まさか! さっきのキスくらい、彼女に見られても全然かまわないし、その先もOKだって」 飄々と言ってのけた藤原を、このときは穴が開く勢いでじっと見つめてしまった。遠くから見ていた印象とはまるで違う、この男の底の知れなさに、俺自身が沸々と興味がわいてしまったのである。(気がつけば、クリスマスイブもヤっちゃったし、こうしてバレンタインにも寝てるなんて、まんま愛人みたいな関係だよなー) そんなことを思いながら、しっかりベッドから起き上がり、手にしている物に視線を落とした。 クリスマスプレゼントはなかったくせに、他人から貰ったバレンタインのチョコを横流しするような悪い男に、まんまと手懐けられてるみたいだった。 躰だけじゃなく気持ちも散々翻弄されて、いつしか藤原の傍にいることに、居心地の良さを感じている始末。遊び慣れたアイツの手腕なのか、俺を押さえるポイントをきっちり見極めて行動されるせいで、どうしても求めずにはいられなかった。「マジで悔しい! 本命になれなくてもいいやとすでに諦めてるのに、なんだろうな、このムカムカする気持ちは。藤原のことが好きな女のコから貰ったチョコを俺に投げて寄こした、酷い男だって言うのにさー」 女子受けしそうなかわいらしい包装紙を苛立ちまかせにビリビリ破り、自分が変形させた箱を開ける。すると中からハート柄で装飾された、一枚の小さなカードが出てきた。【好きな相手に、あなたの想いが届きますように】 多分、洋菓子店がサ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
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悪い男4

***『とにかく藤原くんは、私の傍にいればいいんだからね。浮気なんて、もってのほかだよ。あとね――』 ミスキャンパスの彼女の繰り出すワガママが、日毎にどんどん厳しくなるせいで、俺はほとほとまいってしまった。そんな微妙な関係を維持しているというのに、周囲から羨望のまなざしが、いやおうなしに注がれる日々にも、正直ウンザリした。 彼女のことが好きで付き合ったはずなのに、その気持ちは次第に薄れていき、気がつけば自由にのびのびと行動している那月へと、俺の想いは移ったんだ。 俺と違う意味で、周りから注目されている存在――誰とでも寝るという酷い噂が、大学構内のそこかしこで囁かれているというのに、我関せずというマイペースを一切崩さない那月に惹かれたのが、好きになった理由だと思う。 だから彼女には別れを告げたのに、別れたくないの一点張りを貫かれ、俺が冷たくあしらってもずっと彼女面された。断り続けるという面倒くささも手伝ったので、仕方なくそのまま放置し、那月にアタックすることに決めた。 恋した相手は、ビッチと噂されている年上。年下だからと舐められてあしらわれたら、そこで終了なのがわかった。だから逢うたびに毎回声をかけつつ、必死に食らいつきながら、偉ぶった態度を無理やりとり続けるしかなかった。 すると根負けした那月が、俺が触れることを許してくれた。 あからさまな嫌悪感を示されなかったものの、仕方なく付き合ってやるという感じが、肌を重ねているうちに、なんとなく伝わってきた。 見つめると逸らされる、絶対に合わせない那月の視線。煽る言葉をかけても、感じていないをひたすら貫く、強固なメンタル。そんな気難しい相手を夢中にすべく、ゲイビを何本も見て研究した。ひとえに好きな相手を、とことん感じさせるために――。『このあと、彼女とヤるんだろ。せいぜい頑張れよ。俺もアンタに負けないように、抱かれに行ってくる』 クリスマスイブにプレゼントを渡して、募る想いを告白しようと思っていたところにかけられた言葉がきっかけとなり、真実を告げる勇気やいろんなものが一気に削がれてしまったのは、悲しい思い出だった。 躰だけでつながる俺たちは、この先も変わらず、現状維持したほうがいいのだろうか――逢いたいときだけ言葉を交わし、抱きたいときに触れるだけの関係。しかも誘うのは、すべて俺から。那月は動かず、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-28
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悪い男5

「本当に悪いと思ってるって。マジで反省してる」「それで、渡してくれたチョコの意味はなんだよ? 日ごろの感謝を込めて、俺に渡したってところだったりするのか?」 避けていた話題をいきなり提供されたせいで、混乱がふたたび俺を襲った。「ひっ、日ごろの感謝ぁ?」 声をひっくり返した俺のセリフを、那月はどう思っただろうか?「そう。アンタに誘われて一度も断ったことがない、皆勤賞の俺に対する、感謝の気持ちかなぁと思った」「それはだな、その……」(感謝の気持ちじゃなく、那月が好きだという気持ちで渡したって、さらっと言えばいいだけの話だろ)「らしくないな。いつもウザいくらいにペラペラ喋る藤原が、そんなふうに口ごもるなんてさ。もしかして照れてるのか? わざわざ名前入りのチョコを渡したことを俺が重く受け取って、変な解釈したらどうしようみたいな」「変な解釈については――」「安心しなよ、大丈夫だから! 彼女持ちの藤原に、俺が変な気を起こすハズがないって……」 先手を打つような内容に、自分の気持ちを言うタイミングを、すっかり奪われてしまった。「そ、そうそう。変な気を起こされても、すっげぇ困る。ビッチな那月相手に、俺が本気のチョコを渡すわけがないだろ……」「だよなー。知ってた!」「うん……」 ショックでその場にしゃがみ込み、頭を抱えながら形勢逆転させる策を、必死になって考える。下手に「そんなんじゃない」や「違うんだ」などの否定的なワードを言っても那月の性格上、信じてくれないほうが濃厚だった。「藤原に電話するだけ野暮だと思ったんだけどさ、こんなの貰ったらちょっとね。一応確認しておきたくて」「そっか。びっくりさせたよな」 説得させるような言葉が、俺の脳内に文字として浮かび上がるが、右から左へと虚しく流れるだけだった。「まったく、驚いたのなんの。もしかしてヤってるうちに、俺のことを好きになっちゃったのかと思った。だって、躰の相性がバッチリだからね」「…………」(くそっ! 那月がわざわざ電話をかけてくれたチャンスを、どうして俺はうまく使えないんだ……)「藤原?」「…あぁっ、あにょさっ!?」 想いが空回りした結果、口が空回りして変な言葉を発してしまった。しかもふたたび声がひっくり返るという、格好悪すぎるオマケつき。こんなの、告白以前の問題だろう。「ちょっと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
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悪い男6

「おいおい那月ぃ。それはちょっと、言い過ぎなんじゃないか」「アンタにはこれくらい言わなきゃ、俺の気が済まないんだってば。マジでバカらしい。無意味なことを、体感しまくりじゃないのさー」「なんだよ、それ」 感動させる告白じゃなかったが、こんなふうに怒鳴られる覚えはない。なにがいったい、どうなってしまったんだろう?「あ~もう!! 抱かれるたびに俺がどんな気持ちでいたか、藤原は全然わからなかっただろうさ!」「抱かれるたびにどんな気持ちって、そうだな。「やっぱり藤原とのエッチはサイコー」みたいに、思ってたんじゃねぇの」「アホか……」 那月の喋りをわざわざ真似してやったというのに、アホのひとことで片付けられてしまったのはつらい。ここはひとつ、自分の中に渦巻いている気持ちを、熱く語らなければならないだろう!「これでもな、おまえをとことんまで感じさせるために、ゲイビを見まくって研究したんだぞ。ひとえに愛だよ、愛!」 すると電話の向こう側から、肺の底から吐くような、ものすごい深いため息が聞こえてきた。他にも小声でブツブツ文句を言い続けたあと、堰を切ったように話し出す。「アンタが彼女持ちだとわかっていたから、これ以上好きにならないようにしなきゃいけないって、自分なりに境界線を作るべくして、俺は悪い男を演じていたんだ。これって、無意味なことだろう?」(これ以上好きにならないようにって、もしかしてそれって――)「おまえ、俺のことが好きだったのか?」「はっ! ヘタレ野郎に、教える義理はないね」 いつものような那月らしい反発の言葉に屈しないように、縋りつく感じで訴えた。「那月、お願いだ。教えてくれよ」「…………」 その後、何度も問いかけたのに、だんまりを決めこまれてしまった。これならさっきのように、ため息が聞こえていたほうがマシだと思える。 那月のリアクションがさっぱりわからないままじゃ、手の打ちようがない。「おまえの気持ちを聞き出せないんじゃ、俺はこのまま片想いを貫かなきゃいけないのかよ」「…………」「躰だけの関係で終わらせたくない。那月の心も欲しいんだけど」 両想いが確定なのに、これまでのやりとりですべてが無になるような気がして、焦らずにはいられなかった。「藤原、そんなに俺の心が欲しけりゃ、ストーカーになってる彼女を早いとこなんとかすれば」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-29
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この世で一番ほしいプレゼント‬

華やかなパーティの中で 伯爵家次期当主にあたる、アンドレア様の誕生日パーティーに、たくさんの貴族がお越しになられた。記念すべき20回目ということもあり、専属執事の私は朝から大忙し。夕方からおこなわれるパーティーの最中も、まったく気が抜けない。「カール、カトレア嬢のドレスが、ワインで汚れてしまったそうだ。代わりのものを、すぐ用意するように!」「かしこまりました。カトレア様、どうぞこちらに」 アンドレア様は私に声をかけたあとも、カトレア様に気遣う視線を投げかけつつ、丁寧にもてなす。こういう所作を見る度に、この方に仕えることができてよかったと思える。「あのカール様、聞いてもよろしいかしら?」 別室に移動後、カトレア様の体型に合うドレスを選んでいると、背後から話しかけられた。「カールで結構ですよ。なんなりとお訊ねください」 ドレスを手にして振り返ると、カトレア様が神妙な面持ちで私を見据える。「アンドレア様の結婚相手について……なにかご存知かしら?」 結婚相手という言葉に反応しそうになり、慌てて表情を取り繕った。「申し訳ございません。一介の執事には、わかりかねる事情でございます」「今は執事でも、もとは貴族なんでしょう? 確か男爵家だったかしら」「はい。男爵家三男の生まれでございます」「しかもアンドレア様の専属執事なのに、本当にご存知ではなくて?」 理由付きで知らないことを告げたというのに、しつこく食いつかれることに、内心うんざりした。それを表情に出さぬよう、真顔を決め込みながら口を開く。「大変申し訳ございません」 深く一礼したのちに、カトレア様にドレスを手渡し、了承を得てからメイドを呼び寄せ、着替えていただいた。その間、扉の外で待つ。カトレア様が着替えた後は、私がパーティー会場にお連れしなければならない。「アンドレア様の結婚相手の候補が、大勢いらっしゃるせいで、誰なのかさっぱりわかりません」 彼が16歳になったあたりから、伯爵家次期当主にふさわしいご令嬢の紹介が増えていくのを、目の当たりにした。 アンドレア様がお相手の写真を眺めたり、直接逢瀬するお姿を垣間見るたびに、胸が締めつけられるように痛んだ。そのことで、自分がアンドレア様に好意を抱いていることを知った。「男爵家の三男で執事の私が、アンドレア様に邪な想いを抱くだけでも罪なことな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-30
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この世で一番ほしいプレゼント‬2

主の誕生日プレゼント*** 昨年、アンドレア様の誕生日に強請られたものは、私が愛用している懐中時計だった。その前の年は万年筆という具合で、身の回り品をアンドレア様はなぜかほしがられた。「伯爵家次期当主になる貴方様が、わざわざ使うようなものではございません」 そう言って窘めたのに、まったく聞く耳を持たず、「俺の誕生日なのに、おまえはほしいものをプレゼントする気持ちはないのか?」と言い放ち、苛立ったご様子で、私の手から身の回り品を奪取した。 毎年おこなわれるパーティー後に、強引に奪われたプレゼントを思い出しつつ、今年の誕生日パーティーを無事につとめた主の横顔を眺める。 アンドレア様は疲れた面持ちで、昨年プレゼントした安物の懐中時計を眺めながら、大きなため息をついた。「アンドレア様、お疲れでございますよね? ぐっすりお休みいただけるように、カモミールティーをご用意いたします」 時刻はすでに、午前零時を回っている。昨年以上に来賓の多かった誕生日パーティーは、準備を含め大変だった。たまった疲れを取るべく、少しでも早く就寝していただくために、カモミールティーを手早く用意する。「なぁカール、今年の誕生日プレゼントなんだが」「はい、どのような品をご所望でしょうか?」 差し上げることのできる身の回り品を思い浮かべながら、ティーポットから紅茶を丁寧に注ぐ。 注ぎ終える前に、軽く肩を叩かれた。手を止めて、背後にいるアンドレア様に視線を飛ばす。自分よりも背の高い彼は、熱を感じさせるまなざしで、私の顔に視線を縫い付けた。「アンドレア様?」 ただならぬ気配をひしひしと感じて、彼の名を口にしたら、アンドレア様は私が持っていたティーポットを手から外し、強引に振り向かせると、いきなり強く抱きしめる。「今年の誕生日プレゼントはカール、おまえがほしい」「は?」 耳に聞こえたセリフは、信じられないものだった。驚きのあまり固まる私に、アンドレア様は震える口調で告げる。「おまえがずっと好きだった。10年前に、はじめて逢ったときから」 私を抱きしめる両腕に、骨が軋んでしまうのではないかというくらいの力が込められた。まるで想いの強さを示すようなそれに抗えず、嬉しさを噛みしめる。「子供の頃は俺を意識してほしくて、わざと困らせることばかりしたんだ。いたずらばかりしてしまった俺
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-31
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この世で一番ほしいプレゼント‬3

「アンドレア様、お手を煩わせてしまいますが、一本だけ蝋燭に火を灯していただけますでしょうか」 暗闇の中での会話に味気なさを感じたので、思いきって提案した。「五本じゃなく一本というところが、控えめなおまえらしいな」 アンドレア様は弾んだ口調で返事をし、すぐさま蝋燭に火を灯してくださった。「ありがとうございます」 仄暗い中でも、アンドレア様のお顔を見られるのが嬉しくて、自然と微笑んでしまう。やはり声だけじゃなく、好きな方の表情を見たほうが、私としては話がしやすい。「カールにお願いがあるんだ。今後のことなんだが」 伯爵家次期当主の座を退いた後は、どうするのだろうと思ったタイミングで話しかけられたので、耳をそばだてる。「俺はこれから流行り病にかかり、三ヶ月後に亡くなる予定だ」「え?」 まるで、いたずらを企てる子供のような面持ちで仰った。「俺が寝込んでいる間は、おまえは暇を持て余すだろう? だから書斎のキャビネットにしまっている『古城の管理』と『骨董品の取り扱い』関連の本を読んで、勉強してくれ。セットでそれぞれ保管しているから、かなりの冊数になるけどな」 人差し指を立ててレクチャーされても、さっぱり意味がわからない。「勉強することは構いませんが、どうして古城の管理と骨董品の取り扱いなのでしょうか?」 アンドレア様が三ヶ月後に亡くなることのほうが気になったものの、命令されたふたつの意味を先に理解すべく訊ねた。「それは俺が亡くなった後に、おまえはここを出て、南方にある古城のメンテナンスをするためだ」「私の再就職先をお決めになっているとは。ちなみに、アンドレア様が亡くなるというのは?」「プレザンス家の次期当主が、生きてちゃダメだろ。俺がこの世から消えたことにより、妹が婿をとって跡を継ぐのだからな」(――アンドレア・デ・プレザンスという名前をお捨てになるのですね)「カール、そんな顔をするな。俺は自分の立場に、まったく未練はない。むしろ別の名を考えるのが、今は楽しくてな。それに――」 靴音をたてて近づき、片膝を床について私の利き手を掴む。真剣みを帯びたまなざしに射すくめられて、おいそれと喋ることができない。「男爵家三男のカール・ドゥ・イタッセの使用人として、俺は仕えることになるんだ」「アンドレア様が私に仕えるうぅっ!?」 深夜帯だったが驚
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-01
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この世で一番ほしいプレゼント‬4

その後のふたり アンドレア様の誕生日パーティーのあとで告げられた愛の告白について、本当の意味がわかり、驚愕してしまったのは仕方のないことでしょう。『おまえに窘められて、凹むくらいに叱られて、たまに褒められなきゃ、俺は生きてる意味はない』 しかも私限定という点において、そこにリアリティを感じてしまったのは、惚れた弱みなのかもしれません。 あのあと、たくさんの誕生日プレゼントをいただいた次の日から、予定どおりにアンドレア様は寝込まれた。 病人とは思えない幸せに満ち足りたお顔を、あえて指摘せずにスルーいたしました。まぁ三ヶ月も寝込めば、その状況に飽きて、しまいにはふて寝を決め込むのがわかります。 その間に私は、自分のできることを率先しておこなう。 まずは伯爵様に謁見し、アンドレア様を次期当主の座を退かせた理由をお聞きすることと、大切なご令息を私のような者が面倒を見ていいのか、きちんと話し合う必要がある。 それが終わったら南方に赴き、古城のメンテナンスにかかる費用の概算を出す。そしてリーシア様に謁見し、援助をしていただけないか、頭を下げなければならない。 アンドレア様の個人資産は、正直なところたかが知れている。古城のメンテナンスと生活費を考えたら、あっという間に消えてしまうであろう。我が子のようにアンドレア様を愛でているリーシア様なら、二つ返事でOKしてくれる見込みで援助を頼む。 アンドレア様が第二の人生を有意義に送っていただくため、リーシア様の援助をもとに、新たなビジネスをはじめるべく、専属執事兼恋人である私は、これから頑張らなければならない。 だって愛するお方が私を手に入れるために、華やかな表舞台から退き、今回の計画を企てたのだから。「まずは書斎のキャビネットから、指定された書籍を取り出して読み漁りつつ、伯爵様とリーシア様との話し合いの内容をまとめましょうか」 気怠い躰を抱えつつ、愛する人とひとつになれた幸せをしっかりと噛みしめながら、自分の仕事に従事したのだった。♡♡♡ やはり私の予想どおり、長く療養することができなかったアンドレア様は、一ヶ月半でギブアップし、予定より早く永眠なさった。 期間が短くなった分だけ、私の仕事が究極に忙しくなり、とても大変だったのは言うまでもない。 その後、滞りなく葬儀を終えた足で、南方にある古城に向かう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-02
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この世で一番ほしいプレゼント‬番外編 運命の人

チューリップの赤い色を思わせる赤髪の下にある緑色の瞳は、屋敷の裏にある森の木々を水面に映した湖の色だった。「アンドレア様はじめまして! 私はカール・ドゥ・イタッセと申します。どうぞ仲良くしてくださいね」 透明感のある緑色の瞳に見つめられて、妙にドギマギした。表現のできないその感情を持て余した結果――。「おまえ男のクセに、下まつげが長くて、気持ち悪いヤツだな」 挨拶をすっ飛ばして、目についた事実を突きつけた俺を、カールは苦笑いを浮かべてやり過ごしたんだ。 カールにはじめて逢ったのは、俺が10歳のとき。それまでは母上が一番だった。だけど妹が産まれてからは、母上は俺に構う余裕がなくなり、寂しくなった俺は、なんとかして母上に構ってもらおうと、いたずらばかりしてしまった。 そんな俺を見た父上が、次期当主にふさわしい男にするために家庭教師を雇い、厳しい教育をほどこした。 母上に甘えたい気持ちを我慢しながら、勉強ばかりの毎日は、ものすごくつまらなくて退屈だった。それゆえに隙を見ては逃げ出して隠れたり、家庭教師にいたずらして、散々困らせた。そのせいで一週間ももたずに、家庭教師は次々と辞めていった。 そんな俺を制御しようと考えた父上は、年の近いカールを連れて来た。(どうせコイツも俺の仕掛けるいたずらに困って、さっさと逃げ出すに違いない) 不機嫌をそのままに、カールを見上げていたら。「私の下まつげが長いのは、父譲りなんです」「おまえの父親と同じなのか……」 てっきり母親に似ているのだと思っていただけに、意外な返答に目を瞬かせた。「あのさ、おまえ――」「カールとお呼びください、アンドレア様」「カール、俺の部屋に案内してやる」 辞めていった家庭教師たちと同じように、親しげに接するカールと生活を共にした。 はじめて逢ったときに感じた、胸の疼きの理由がわからないまま、たくさん困らせることをカールにする。隙を見て勉強を投げ出すのはデフォルトで、かくれんぼをしたときは、屋敷にある一番背の高い木に登ってやった。 使用人たちが怖気付く中、カールは命綱をつけて俺を捕獲し、無事に地面にたどり着くや否や、腰を抜かしたんだ。「おい、どうした?」「高所恐怖症を思い出したら、力が抜けてしまいました……」 下まつげを涙で濡らし、今にも号泣しそうな雰囲気を醸すカールに、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-03
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