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All Chapters of BL小説短編集: Chapter 31 - Chapter 40

62 Chapters

両片思い3

「先生は他の家でも、家庭教師をしてるんだろ? 迫られたりしてないのか?」『坊ちゃん以外はみんな高校生で、三軒こなしてます。彼らは大人ですから君のように、むやみやたらに迫ったりはしません』「……だったら首筋にある赤い印は、誰につけられたんだよ?」 自分の左首を指差しながら指摘してやると、わざとらしく小首を傾げるなり、乾いた笑顔で微笑んだ。『きっと、蚊に食われたんでしょう。大学に通いながら自分の勉強をしつつ、家庭教師のバイトをこなすことでいっぱいいっぱいだから、恋人を作る暇はないですしね』 横長の大きな皮下出血はどこからどう見たって、蚊に刺された痕じゃないのは明らかだった。「先生は恋人、欲しいとは思わないんだ?」『今は必要性を感じないですし、経済的な余裕もないですから、社会人になってから作ろうかと考えてます』「だったら先生が社会人になったとき、俺を恋人にしてよ!」 左隣にいる先生の右手を握りしめながら、思いきった提案をしてみる。ガキの俺がこんなことを言っても、一蹴されるのは目に見えていた。『坊ちゃんを恋人に、ねえ……。未成年で同性の君を?』「だって俺は先生が好きだし。この想いはこれからも、絶対に変わらないから」 掴んでいた先生の右手が、強引に外された。あっと思ったときには、その手は俺の太ももに置かれ、際どいところを撫で擦るように蠢く。「ちょっ!?」『俺のことが好きなんじゃなくて、俺の躰が欲しいだけだろ?』「違うっ! 俺は――」『ふっ、ちょっと触っただけで、こんなに熱くなって』 嘲笑う先生の声は、今までとは質の違うものに聞こえた。落ち着いた声なのに、やけに耳の奥に残る異質な声。低くて艶のある先生の声を俺だけのものにしたいと、思わずにはいられなかった。『お前が本当の俺の姿を知ったら、幻滅して嫌いになるかもしれないぞ』「本当の、せん、せぇ」 クスクス笑いながら強弱をつけて触れる先生の手は、俺の感じる部分を簡単に探り当てて、絶妙な力加減で弄り続ける。
last updateLast Updated : 2025-11-14
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両片思い4

「ああっ、ヤバぃ」『それでもずっと好きでいられるのなら、恋人にしてやってもいい』「んっ…は…ぁっ、もっイキそう」『やれやれ、子どもには刺激が強かったか』 触れていた先生の右手があっけなく外され、腕を組んでそれを隠した。その態度でイクまでやってくれと強請っても、触れてはもらえないことが分かった。 寸止めを食らった当時の俺は、涙目で荒い呼吸を繰り返しながら、隣にいる愛しい人を睨むのがやっとだった。『とりあえず俺の恋人になりたければ、志望校に合格は必須だからな。晴れて合格したら、キスすることを許してやってもいい』「キス……?」『ああ、お前が好きなときにしていい権利だ。ただし、それ以上のことをしようとしたら俺は家庭教師を辞めるし、恋人にする権利も自動的になくなる』 このとき以降、先生はタメ口で喋るようになった。だけど親のいる前では敬語を使うという、俺が呆れるくらいの外面の良さを発揮した。 こうして長い間、いろんなことに虐げられた俺は、中学卒業にやっと先生とキスすることを許され、躰の関係にいたるまでには、3年の月日を有することになる。 高校入学と同時に告げられたこと――目指していた大学のワンランク上のところに行って合格しないと、恋人として認めないという、ありえないワガママのせいで、3年も我慢させられたのである。 結果的には塾通いと先生の家庭教師の両立で必死こいて勉強し、ギリギリの成績で何とか合格した。 そんな苦労ののちに先生をはじめて抱こうとしたら、先走って達してしまったことは恥ずかしくもあり、今考えるといい思い出だったりする。 俺を散々翻弄した先生は大学を卒業後、親父のコネで会社に入社した。 そのあとを追うように、大学を無事に卒業した俺も同じところに入社して、先生の部下になった。 部下だけど恋人――俺としては、こうして一緒にいられる環境下だからこそ、ハッピーな出来事が待ち受けていると思っていた。 好きな人と同じ空間にいられる幸せを味わいたかったのに、現実はそう甘くはなかったのである。
last updateLast Updated : 2025-11-15
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両片思い5

(お客様にお茶を出すのって、新人の女子社員がすることじゃないのか!?) 新人として入社した二日目、給湯室にこもった俺は、淹れたことのないお茶出しに悪戦苦闘していた。 苛立ちまかせに急須に茶っ葉を入れた途端に、背中に何かが当たる衝撃を受けた。そのせいで足元がふらつき、台所に両手をついて何とかやり過ごす。『坊ちゃん、俺の商談を壊すために、渋いお茶を淹れようとしてるだろ』 俺の肩に顎をのせながら、ぼやくように先生が呟く。背中に感じる温かみに、苛立っていた心がほっとした瞬間だった。「せっ……。こんなところで油売ってて、大丈夫なのかよ?」 先生と言いそうになり、口を一旦引き結んでから、文句を言ってやる。頭の中では何度も課長呼びをしてるのに、不意に現れたせいで、いつもの呼び方をしそうになった。『お前と一緒に入社した女子社員と、和やかに談笑中だ。俺よりも若い女の子のほうが、向こうさんも嬉しいだろうさ』 俺の脇から両腕を伸ばして、急須に入れたばかりの茶っ葉をシンクの中に投げ入れた。「ちょっ、せっかく入れたのに!」『やったことのない仕事は誰かに訊ねるなり、ググって調べたりして、少しでも完璧にこなす努力をしろ』 言うなり、頬に柔らかい唇が押し当てられた。「課長……」(そんな子供じみたものじゃなくて、濃厚なキスがしたい――)『先方を待たせてるんだ。早めに用意してくれ』「はい、分かりました」『お前が淹れたはじめてのお茶、期待してるからな』 身を翻すように出て行ったあとに漂う、嗅ぎ慣れた先生の香水。消えた温もりと一緒に、その香りもどんどん薄くなる。それはまるで俺に対する、先生の想いのように感じてしまった。 期待されたら応えたくなる。だから一生懸命に頑張った結果、褒めてもらえる。ご褒美は『よくやったな』という言葉と微笑み、それと先生の躰。 俺が強請れば『好きだ』と言ってくれるけど、自主的に先生の口から、想いを告げられたことはなかった。 そのせいで俺の中にある不安が、いつも胸の中を支配していた。 クォーターの目立つ容姿でそれなりに背も高く、誰にでも愛想が良くて仕事もできる、格好いい先生に近寄ってくる女子社員がいるのを、入社してからたくさん目にした。 恋人の俺が新入社員として入ってくるまでに、間違いなく大勢に言い寄られているだろう。 俺の前以外では外
last updateLast Updated : 2025-11-16
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両片思い6

 そろそろ本当の理由を言わないと、激昂させてしまうかもしれない。そうなったら、間違いなくお手上げ状態になる。 恋人になったのをいいことに一度約束を無視して、Hなコトを進めようとしたら、平手打ちを思いっきり食らった痛い過去があった。 怒りに躰を震わせながら、鬼のような形相で先生に睨まれた途端に、冷や水を浴びせられた気分に陥った。変なことして怒らせるのはもう二度とごめんだと、強く思った瞬間だった。「……しっ、白鷺課長は午前中、隣の課の女と廊下で喋ってただろ」 変に上ずった俺の声が、部屋の中に響く。「何で、そんなことを知ってるんだ? もしやお前、仕事をサボって、俺のあとをつけたのか?」 動揺を示した俺の声とは裏腹に、先生の声はいつも通りだった。「違う! 分からないところを聞きたくても、みんな自分の仕事に忙しそうだったし、空いてるのは白鷺課長だけだったから、出て行ったあとを追いかけたというか」「…………」 この人は都合が悪くなったら、黙りを決め込む。昔からそうだった。だけどそんな沈黙すら愛おしく思えるのは、先生の視線を俺だけのものにしているから。 先生を独占できる、唯一のひととき――。「はっ、そんなくだらない理由で、ここまで連れられたとは!」「俺としては、それが不機嫌になる理由なんだよ。恋人がいる分際で見せつけるように、あんなところでイチャイチャしてさ……」「イチャイチャしてるつもりはない。彼女に訊ねられたことについて、真摯に答えていただけだ」「鼻の下伸ばして、女の躰を舐め回すように見てたくせに」 先生から『お前が好きだ』とたくさん告げられていたら、こんなくだらないことで、不安になったりしないのかな。俺ひとりでやきもきしながら大好きな人を口撃するなんて、したくはないのに。 こんなことを続けていたら、いつか捨てられるかもしれない。「お前を不安にさせたみたいだな、悪かった。だけど彼女を、そんな目で見ていないから」 下唇を噛みしめながら上目遣いで先生を見たら、眉間に刻んだ深い皺を消し去り、まぶたを伏せながら小さく頭を下げる。言葉と態度の両方で謝られても、俺の気持ちはそれだけではおさまらなかった。「俺を傷つけたバツとして、ここでオナニーしろよ」「ここでって、なんで……」 もの言いたげな先生の視線は俺を突き通して、背後にある扉を見た気がした
last updateLast Updated : 2025-11-17
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両片思い7

スラックスから出すだけ出して、掴んだものを握りしめるだけで終わらせる先生に、追い打ちをかける言葉を即座に考えつき、ところどころを強調させるように口を開く。「とっととしごいてイカないと、勃起して興奮している白鷺課長のあられもない姿を、ルームサービスを運んできた従業員に、思いっきり見せることになるかもな。もしかして男相手に欲情しているところを、あえて見せつけたいとか思ってるんじゃないの?」 くすくす笑いながら先生の背後に回り込み、背広のボタンを外してやった。真正面で何をしているかを、やって来た相手にはっきりと確認させるように――。「壮馬、悪かったって謝ってるだろ。もう許してくれ。こんな姿、お前以外に見せたいとは思っていない」 顔だけで振り返って謝罪する言葉を告げられても、あのとき傷ついた俺の心は癒えたりしない。そしてこんな馬鹿げたことをしても、何も変わらないのは事実。「俺のことを何とも想ってないから、そうやって拒否るんだろ」「…………」「俺が女子社員と目の前でイチャイチャしても、白鷺課長の心は傷ついたりしないもんな。きっと涼しそうな顔で、その場を通り過ぎるだろ」「ふぅ、っ!」 舌先を使って耳の縁を下から上に舐めてみたら、びくりと躰を震わせて変な声を出した。(先生の弱い部分は、すべて把握済み――次はどこを責めてあげようか)「手の中のモノ、大きくなってきてる。もっともっと感じないとイケないでしょ、白鷺課長」 背後から先生の手に自分の手を重ねて、ごしごし力強くしごいてやる。「ん、ふ、あぁ……」 恥じらいを含んだ先生の甘い声に、俺の下半身が反応しはじめる。目の前にあるひきしまったお尻に、ゆっくりとそれを擦りつけた。 お互い布地越しでも分かる。じわじわ上がっていく体温と、相手を欲する気持ちがリンクしていた。「そぉまっ、もうやめ、ろって」「完勃ちしといて、今さら何を言ってるんだよ。俺のが欲しくて、ココをこんなに濡らしてるくせに」「耳元で…ぃうな! 馬鹿っ、あっん!」 先生の躰が大きく震えた。俺が空いてる手で、感じやすい左胸を唐突に弄ったせいだろう。「鉄平って変態だね。乳首を強く抓られてるのに、感じてエロい声を出すなんて」「な、まえでっ、呼ぶな……。もっ、ぐりぐりしないで、くれ」 荒い息を繰り返しながらも、やめて欲しいことを連呼する。
last updateLast Updated : 2025-11-18
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両片思い8

だけど全部を咥えないように、頭を押さえる手の力に反発してやった。「おい、意地悪ばっかりするなよ」(俺のことを好きじゃない先生に、これからもとことん意地悪してやるんだ) 双丘を撫でていた片手で、スラックスの上から割れ目の部分を指先を使って強くなぞってみた。「くぅっ!」 両足を適度に開いて立ったままでいるからか、ダイレクトに感じたらしい。口の中のモノが、さらに質量を増した。「あっ、あっ、あぁっ…そこばかり、刺激するな。前もちゃんと」「ちゃんと、なに?」 1度だけ深く咥えてから、先生のモノを吐き出した。 やり方を訊ねる俺の顔は、どんなふうになっているのだろう。 頬を真っ赤に染めながら見下ろす、先生のもの欲しげな表情だけで、何をしてほしいか分かる。だけど恋人として、苛立つくらいに焦らしつつ責めてやろうと考えた。「白鷺課長、俺はできの悪い新入社員なので丁寧な指示がないと、要求されるお仕事がこなせません」「何でいきなり、そんなことを……。お前、何度もシてるだろ」「俺の目の前で女とイチャイチャしてるのを見たら、これまでのコトを全部忘れちゃいました」 馬鹿にしたようにへらっと笑いながら、肩を竦めてみせた。「忘れたなんて言うな。2週間前にここで言ったろ。『先生が好き』って」「2週間前なんて俺の中では過去すぎて、記憶に全然残らない」 どんなに情熱的な言葉を使って告白をしても、顔色ひとつ変えずに先生はただ聞き流す。それだけなんだから――。 ふいっと顔を逸らしたら先生の右手が前髪を掴んで、強引に正面を向かせた。「痛っ!」「忘れたなら思い出させてやる。つべこべ言わずに咥えろ」「何でそんなっ、ふぐっ!?」 文句を言いかけた口の中に、先生のモノが押し込まれた。「前回ヤったときは、美味しそうにしゃぶってくれたろ。早く思い出せ」(思い出すもなにも、忘れられるわけがない。先生への想いが心の中を、こんなにも焦がしているというのに) 室内に口淫する音が、いやらしい感じで響いた。好きな相手に抵抗するようなことは、やっぱりできない。 目を閉じながら積極的に動いて、先生を気持ちよくする。すると前髪を掴んでいた手が頬に添えられ、俺の耳朶に意味なく触れた。 それが妙にくすぐったくて、眉根を寄せながら喘ぐように呼吸をするのがやっとだった。「ンンっ…もっと舌を
last updateLast Updated : 2025-11-19
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両片思い9

☆∮。・。・★。・。☆・∮。・★・。 イったばかりのブツをスラックスから出したままという信じられない姿で、慌てふためきながらバスルームに逃げ込んだ。勢いよく扉を閉めて、カチャッと鍵をかける。 中途半端に絶頂を迎えたせいで、躰の奥に熱がこもっていた。アイツの大きくなったモノを挿入する部分が無駄にヒクついて、物足りなさをこれでもかとアピールしてくる。 好きな相手に抱かれる悦びを知ってから、無意識に壮馬を求めてしまった。さらなる快感を得ようと、何度想いを告げそうになったか――。(好きだと告げたら、間違いなくふたりそろって、奈落の落とし穴に向かってしまうだろ。壮馬は生粋の坊ちゃん育ちで、会社の後継者になる身分。落ちるなら俺ひとりで十分なんだ) 不幸を伴う苦労を、壮馬にさせたくない。自分が一度味わっているそれを、何としても防いであげなければ。 俺がゲイになった転機は、高校2年のときだった。 パートに出ていた母親が、妻子ある男性と浮気した。それに気づいた父親が激怒し、離婚届を突きつけて家を出て行った。 身勝手な行為をした母親に巻き込まれた形で、俺も一緒に父親に見捨てられた。母親同様に外人の血を引く俺の顔を、きっと見たくなかったのかもしれない。 それまでの裕福な生活ががらりと変わり、バイトを何件もこなしながら、学校に通う毎日――忙しい日々を送るうちに、どんどん成績が落ちていく。 それと同時に付き合っていた彼女にも振られ、失意のどん底に陥った。(どうしたら楽して、お金を稼ぐことが可能だろうか) 考え込んだそのとき、通学に使ってる満員電車で、何回か痴漢に遭ったことを思い出した。 当時ヤケになっていたのもあり、自分の躰を売ることについて、罪悪感はまったくなかった。 首から下の上半身裸の写真を撮影し、それを添付したコメントを使ってゲイ専門のSNSで呼びかけた。『俺の初めてと1週間好きにできる権利を売ります。どうぞよろしく!』 すると俺の躰を求めて、たくさんの男が競うようにお金を出した。値段がどんどん釣り上げられた結果、一番の高値で俺を買ってくれた人は、某IT企業の若い社長さんだった。 待ち合わせ場所に現れた社長さんをはじめて見たときの印象は、そういう趣味をしているようにはまったく見えない、とても爽やかそうな人で、逆に面食らってしまった。 おとり捜査の
last updateLast Updated : 2025-11-20
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両片思い10

「ビジネスですか」「そう。現実問題、鉄平くんはお金が必要だろ。俺はそれを、たくさん支払うことができる存在だよね?」 しがない高校生の俺を、高値で買ってくれる人が目の前にいる。「そうですね……」「それだけの大金を払う価値が、君にはあるってことさ。俺と付き合えば、あくせくバイトをする苦労がなくなって、自由な時間が手に入る。下がった成績を上げるのなら、その時間を有効活用すればいい。何だったら、俺が塾に通わせてやるよ」 俺にとって、告げられた言葉のすべてが至れり尽くせりで、迷うことなく二つ返事でOKした。 社長さんと付き合ってる間は、他の男と関係を持たないことを条件に、丸1年いろんなことを教わりながら、たくさんのお金を貯金することができた。 付き合いを解消しても、大学受験までは塾代を払い続けてくれたりと、最後の最後まで面倒を見てくれたいい人だった。 そんな優しい社長さんと別れたあとの俺は息抜きを兼ねて、いろんな男と関係をもった。1年かけて念入りに開発された躰は、男を求めずにはいられないくらいに、卑猥なものになってしまった。 そのせいで大学に入ってからも、細々と援交を続けた。 資金は当面大丈夫な額を持っていたが、快楽を得るためだけに、惜しげもなく躰を許してしまった。しかしそんなことばかりしてお金を稼いでいることや、ゲイだとバレたら身も蓋もなくなる。 友人のツテで、高校生の家庭教師のバイトをはじめることにした。 ノウハウは社長さんに通わせてもらった、塾の指導を元にした。それと一緒に自分の躰をエサにして、教え子たちを誘惑する。 そんなやり方で家庭教師を続けて、教え子たちの成績を伸ばしていたところに、壮馬の父親に声をかけられた。『中学3年の息子なんだが、塾に通わせてもさっぱり成績が上がらなくて困っているんだ。優秀な君を、家庭教師として雇いたい』 ちょうど1件、勉強をそっちのけで性的に迫りまくるという、問題ありまくりの高校生との関係を解消すべく、家庭教師を辞めるところだったので、実にいいタイミングでスカウトされたと、このときは思った。「はじめまして。白鷺と言います」 相手を魅了する微笑みをちゃっかり浮かべながら、目を合わせて挨拶した。 この笑みを見て頬を染めたり、視線を泳がせる挙動不審な行動をすれば、その後の関係はこっちの思うツボになる。「はじ
last updateLast Updated : 2025-11-21
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両片思い11

 約束通り高校生の壮馬と恋人同士になったが、大学合格まではプラトニックな関係を無理やり続けた。 親に隠れて付き合ってることもあり、仕事が早く終わったときは、勉強を見てやるという名目で壮馬の自宅に寄ったりして、それなりに恋人らしいことをしていた。 そんなある日、ふたりきりになった途端に、抱きしめながら押し倒されてしまった。多分、これまで我慢させたせいで限界が来たんだろうなと、容易に想像ついた。「ふぅんっ…んぁっ」 壮馬と恋人になってからは、貞操を無意識に守る生活を続けていた。別に他のヤツと関係を持ったとしても、壮馬にはバレないというのに、なぜだかそういう気になれなかった。 そのせいで、いつもより敏感になっていた。キスされただけで、甘い声がどんどん出てしまう。「んっんっ、あぁあっ」 何度となくキスを交わしているからだろう、俺の感じる部分を狙って、口内を責められまくった。(このままじゃ流されてしまう。約束したのに――) 唇から首筋に顔を動かしたのを見るなり、両肩を強く押して抵抗した。『先生――』 壮馬が呟きながら顔を上げた瞬間、俺は右手で思いっきり平手打ちを繰り出す。室内に乾いた音が響いた。「壮馬の馬鹿っ! 大学合格まではやらないって約束したろ」 叩いた右手の甲を意味なく左手で撫で擦った。本当は壮馬の叩いた頬を撫でたかったのに。強く叩いて悪かったって言いながら。『確かに、先生とヤりたい気持ちだってある。でもそれ以上に、俺を見てほしかった。俺の好きっていう想いを、先生に見てほしかったんだ!』「俺を抱けば、お前の想いが見えるのか?」『だって先生はいつも視線を外して、俺を見ようともしない。言葉ではぐらかすし、まともに向き合ってくれないじゃないか。俺が高校生のガキだからって、そんな態度を取り続けてるんだろ』 指摘された壮馬の言葉に、ハッとさせられた。「俺は――」 俺は最初から、壮馬の視線を避けていた。ビジネスと欲で平気な顔して躰を許す、汚い自分を直視されるのが恥ずかしかった。 それと同時に羨ましかった。自分の躰を売ってしまってから、心までなくしてしまった俺のことを、素直に好きと言えることが。「壮馬、俺はお前が……」 まっすぐ迷いなく好きだと言ってくれるお前となら、恋人になりたい。だから俺は――。【壮馬は私たちの宝物です。これまで大切
last updateLast Updated : 2025-11-22
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両片思い12

「無理して、格好つけようとするからだろ。しかも俺の手元をよく見ないでやるから、そんな雑な動きになるんだ」 くすくす笑いながら壮馬の手を取り、グラスを一緒に揺らしてやった。「だってしょうがないだろ。課長の顔とか指先に、どうしても目がいくし」「そうか……。でもそれじゃあいつまで経っても、覚えられないだろ」 触れていた手をそそくさと退けた瞬間、手首を掴まれた。触れられた皮膚から感じる壮馬の熱。シャワーを浴びたあとだというのに、熱くてどうにかなってしまいそうなものだった。「課長から教わったことは忘れない。だけど俺に教えることがなくなったら、どこかに行ってしまうんじゃないかって、心配になるときがある」「そんなこ、と」「せっかく同じ会社に入って一緒にいられる時間が増えたのに、やけによそよそしいし、相変わらず目を合わせてくれないよな。たまにくっついてくれることもあるけど、なんつーか見えない線を引かれてる気がする」 壮馬の長い文句を聞きながら、グラスに入ってるワインを煽るように飲み干した。「俺たちの関係、バレたら困るだろ」 掴まれたままでいる手首に、そっと視線を落とした。こうして触れられることも、実はとても嬉しい出来事のひとつになる。 今みたいに壮馬の傍にいられる幸せを感じて、会社だというのに妙にはしゃいだりウキウキしてしまうことがあった。あれはそう――お客さまのお茶出しに困った、大きな背中を見たときだ。 いつまで経ってもお茶を持ってこない壮馬に焦れて、新入社員の女の子を呼び寄せ、お客様の相手をしてもらった。 何やってるんだと思いつつ給湯室の扉を開けたら、小さな声で文句を言い続けながら、大量の茶っ葉を急須に入れるタイミングに遭遇した。 目の前にある大きな背中からシンクを覗いてみると、一度お茶を淹れたらしい形跡を発見。きちんと自分で飲んで確かめたからこそ、この茶っ葉の量らしい。それにしても正直なところ、ものすごい量だ……。(ここは、しっかり者の恋人を褒めなければならない場面だろうが、お客様を待たせているので減点しなければ)「坊ちゃん、俺の商談を壊すために、渋いお茶を淹れようとしてるだろ」 適度に厚みのある肩に顎をのせながら、耳元でぼやいてやった。『せっ……。こんなところで油売ってて、大丈夫なのかよ?』 先生呼びが日常化しているせいで、すぐに課長
last updateLast Updated : 2025-11-23
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