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ようこそ万来堂へ!〜先輩から教わった接客技術で看板娘、がんばります!〜
ようこそ万来堂へ!〜先輩から教わった接客技術で看板娘、がんばります!〜
Author: 柊雪鐘

1食目・ようこそ万来堂へ!

Author: 柊雪鐘
last update Last Updated: 2025-11-01 07:05:48

静かな店内、明るい日差しが窓を通して室内を照らす。

モップや雑巾を使って清掃、お客様に出すお水の準備、備品の整頓や補充……。

厨房からは「あれ切って!」「ソースの準備はしたか!?」「もうそろそろ時間だぞ、揃えとけ!」と慌ただしい声と一緒にほんのりと美味しい匂いが漂ってくる。

カチリ、と時計の長い針がもうすぐオープン時刻であることを知らせると、厨房の人も接客係の人も、お店の責任者みたいな人も、皆が一人のお姉さんを囲むように並んだ。

私達の前に立ってこちらに振り向く女性は「おはようございます!」と元気で明るい声を上げると、両頬に人差し指を当てる。

そして、「朝礼最後の準備運動!ニッコリ笑顔で」と満面の笑みを見せた。

「――復唱!いらっしゃいませ!」

「いらっしゃいませ!」

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

「少々お待ちくださいませ」

「少々お待ちくださいませ」

「申し訳ございません」

「申し訳ございません」

「お待たせいたしました!」

「お待たせいたしました!」

「では今日も一日頑張っていきましょう!」

「よろしくお願いします!」

女性の掛け声に皆が同じ言葉を繰り返し、最後には頭を下げて挨拶を終える。

そのまま女性は私の手を引き、皆の前に立たせた。

「こちらのルシェット・サイファ=明音あかねさんが今日からこの万来堂の仲間になります!お仕事は初めてだということなので、皆で協力して明音さんを支えていきましょう。それでは今日もお店の無事を祈って!」

「よ、よろしくお願いしますっ!」

「お願いします!」

並ぶ従業員たちの前で深く頭を下げる。

纏め上げた髪、着慣れないフェイトレスの制服。

恥ずかしくて、不安で、緊張しちゃって。

それでも挨拶をすれば、皆も挨拶を返してくれる。

そんな、明るくて皆が真面目そうなこの雰囲気なら、お仕事頑張れそうな気がするって思ったんだ。

この世界、フォス=カタリナは私が生まれた世界じゃないけれど、落胆なんてしてられない、楽しそうな世界だと思った。

***

「もう、ちょっと……大丈夫だからね、猫ちゃーん」

木の上にいた白い猫に向けて、私は手を伸ばしていた。

もうすぐ届く距離、まるで「助けて」と何度も無く子猫に向けて。

手が届けばもう大丈夫。

私が助けてあげる。

そんな気持ちで、ちょっとの高さに心臓を震わせながら、手を伸ばしていた。

でも。

「ほら、もうちょっとだよー。私が、助けてあげるから……あっ!」

パキパキ、と大きく響いた音は無情にも、私が求めた音じゃなかった。

届きそうだった手は離れて、視界は真っ逆さま。

最後に背中か腰あたりに何かが当たった感覚がして、私の視界は暗転した。

人生が終わった。

まだ、なんにもしてない高校生活。

ただ学校に通って、友達と喋りながら、お金が少ないからバイトしなきゃと言いながら、それでも遊んで帰った毎日。

本当に何もない、空虚な毎日でしかなかった。

「……ん、んん?」

「お、気がつきましたか。お嬢さん、大丈夫ですか?」

それから気付けば知らない場所で、海外の祭祀みたいな人が目の前に立っていた。

正面で分けた金色の長い髪を降ろしたまま、整った顔立ちは明らかに外国人。

それでも話す言葉は日本語で、ちゃんと聞き取れる声で心配を向けてくる。

「あれ、ここは……」

「ここは、フォス=カタリナと呼ばれる世界です。目が覚めて突然のことなので、中々頭には入らないかとは思いますが……ここは貴女がこれまで住んでいた世界とは、違う世界なのです」

「…………はい?」

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