「じゃあ、承輝のことはどうするんですか?」執事が心配そうに尋ねた。「海外にいれば追われる身になるし、帰国すれば死刑になります」「別のところから手を打つしかない。遥真が調べ上げたあの資料を、別の人間に押しつけられないか探ってみるしかないな」常和は今も頭を抱えていた。「まったく、あの承輝は何を考えているんだ。俺に面倒ばかり持ち込んできおって」執事はため息をついた。しばらく考えた末、尋ねた。「本当に株を柚香に渡すつもりはないんですか?」「まるで俺に決める権利があるみたいな言い方だな」常和は今度ばかりは取り繕うことなく、率直に言った。「昭彦がこのところ何をしているか、君も見ていただろう。あいつが何をするかなんて、俺には止めようがない。それに、あの連中はみんなあいつの言うことを聞く」「それなら、柚香があんなふうに常和様に口を利けたのも、そこを頼りにしていたからかもしれませんね」執事が探るように言った。常和は眉を上げた。「さっきは、あの娘の言葉は本心だと言っていなかったか?」「もし、演技がうまかっただけだとしたら?」執事は答えた。常和は鼻で笑った。「昭彦と安江の子供が、そんなに演技上手だと思うか?」あの二人は、思い通りにならなければすぐ無茶をするような性格だ。そんな二人から、柚香のような優しい娘が生まれたこと自体、十分珍しいことだ。やはり、承輝のことは別の手を考えるしかない。「頼んでおいた相手には連絡したか?」常和が尋ねる。「連絡しました」執事が答えた。「向こうからは、ここ二、三日のうちに人を寄こして調べるとのことです」常和は重たく、複雑な気持ちで言った。「来る人間が頼りになるといいがな。安江が会社に不正アクセスして、あの資料を手に入れたことさえ突き止められれば、まだ話をひっくり返せる余地はある」ただ、安江のような人間が、そんな簡単に証拠を残すだろうか。柚香はそんな話がされていることなど何も知らず、レストランを出ると、慎吾と康平に付き添われて車に乗り込んだ。中へ入る前とほとんど変わらない彼女の表情を見て、何よりも噂話が好きな康平が尋ねた。「常和さんと何を話してたんですか?」柚香は車のシートに寄りかかりながら答えた。「承輝を助けてほしいって」康平はすぐに聞き返した。「で、条件は?」柚香は淡々と言った。「昭彦さ
Leer más