月島雪代(つきしま ゆきよ)は、財閥の御曹司・桐原慎一郎(きりはら しんいちろう)にとって、忘れえぬ「亡くなった」永遠の初恋だった。 一ヶ月前に、彼女は突然姿を現した。しかし、そこで知らされたのは、慎一郎が彼女の面影を残す異母妹・月島夏実(つきしま なつみ)と、結婚しているという現実だった。……「お願いです。もう一度だけ、確認していただけませんでしょうか?」雪代は窓口に離婚届受理証明書を押し出し、声を詰まらせた。職員は戸惑いながら首を振った。「お客様、これで三度目です。桐原慎一郎様と月島夏実様の離婚届の受理記録は、どこにもございません。お二人は現在も正式な夫婦です」 雪代の胸を、言い知れぬ絶望が襲った。一ヶ月前、慎一郎は離婚届を手に、真摯な眼差しで、彼と夏実の間は単なる取引だったと、彼の心は決して変わっていないと、誓うように彼女に言ったのだ。「雪代、あの時は君が死んだと思い込んでいた。それに、月島家も危機に瀕していた。桐原家が資本を注入する条件は、俺と夏実の結婚だった。全ては仕方なかったんだ」その言葉を、雪代は信じた。昨日、慎一郎のオフィスで、彼が夏実と夫婦名義で基金を設立すると計画を話しているのを偶然耳にするまでは。聞き間違いだと願った。だが今、残酷な現実がもう目の前に。雪代は偽りの離婚届受理証明書を握りしめた。七月の太陽が容赦なく照りつける中、彼女の心だけが、氷のように冷え切っていた。……雪代と慎一郎は幼なじみだった。小さい頃から、彼は彼女の騎士になると誓い、彼女を守り抜くと言っていた。十歳の時、隣家の狼犬に追いかけられて噛まれそうになった彼女の前に、彼が身を挺し、腕の肉を食いちぎられる覚悟で守ってくれた。十五歳の時、彼女が遊びに夢中になって山道で迷子になると、彼が人を連れて三日三晩探し回り、体力の限界で倒れそうになった頃に彼女を見つけた。十八歳の時、海で波に飲まれた彼女を、死の淵から必死の思いで引きずり戻したのも彼だった。同じ年、二人は交際を始め、五年間を共に過ごした。慎一郎が彼女をこの上なく寵愛していることは周知の事実だった。彼はかつて、生涯彼女以外とは結婚しないとまで言った。五年前、結婚式直前のあの事故が起こるまでは……誰もが彼女が火災で亡くなったと思い込んだ。そして再び戻
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