だが、今の真奈美に、昔のように威張る資格なんてもうなかった。「先生?」「山崎先生のこと。この前、N市でファンを焚きつけて、散々ひどいことを言ったくせに。もう忘れたの?」真奈美は、杏奈のその態度が気に食わないみたいで、じろりと睨みつけてきた。でも杏奈は、そんな彼女の様子を気にも留めなかった。「先生からの伝言よ。今までたくさんの生徒を見てきて、自分の目は確かだと思っていたけど、まさかあなたがそんな人間だったなんて。だから、もう師弟関係は終わりにするそうよ」杏奈の言葉が終わると、真奈美はついに声を荒らげ始めた。「うそよ!そんなの私を騙そうとして、あなたが作った話でしょ!」真奈美はバンっと机を叩き、金切り声を上げた。刑務所に入ってから、彼女は何度も見捨てられてきた。父親も母親も、兄も、それに竜也も、誰かが助けに来てくれるのをずっと待っていた。でも、光の差さないこの場所で、ただひたすら待ち続けるしかなかった。希望が絶望に変わって、彼女はようやく自分が完全に見捨てられたのだと気づいたようだ。そこに加えて南までも見限られたと聞いて、張り詰めていた最後の糸が切れたみたいで、真奈美は苦しくて、息が詰まりそうになった。「あなたって、本当に性悪ね!私のざまを見に来たんならはっきり言えばいいでしょ!なんで先生との仲まで引き裂こうとするのよ!この性悪、恥知らず!」真奈美は、受話器の向こうで激しくわめき立てた。だが、杏奈はガラスの向こうの真奈美を冷静に見ていた。可愛らしかった顔はすっかりやつれて、怒りに叫ぶその顔は、酷く歪んでいた。そんな彼女はまるで闇をこじ開けて暴れ出そうとする獣みたいに、ヒステリックにわめき散らしているのだった。そこで杏奈も、刑務所にいた数ヶ月を思い出した。あの時自分をいじめた人たちも、同じような溝につかる獣だった。そして自分を骨の髄までしゃぶるように、いたぶり続けていたのだった。その仲間には、真奈美も、竜也も、そして浩も加わってきた。「用件は伝えたから。あとは好きにして」そう言って杏奈は静かに受話器を置いた。そして真奈美の叫び声は、面会室のアクリル板の向こうに消えた。わめき続ける真奈美にもう目をくれず、杏奈は背を向けて面会室を出た。外では健吾が待っていた。杏奈が出てくるなり、彼
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