桐谷家の一族以外で私の記憶喪失を知るのは、お祖父様とお祖母様だけ。私が入院していたとき、お祖父様とお祖母様が私のお見舞いに来てくれた。当然お祖父様たちは私が記憶を失くしているなんて思わず、戸惑う私にお祖父様たちも戸惑って、主治医である武美さんがお祖父様たちに症状として説明してくれなかったらお互いパニックになっていたと思う。 お祖父様たちは私の負担にならないように、桐谷家に迷惑がかからないように、私が記憶を失っていることは言わずに見舞いに来る予定だった叔父様たちを上手く止めてくれた。叔父様たちとは社交中に会うこともあるけれど、時節の挨拶と軽い世間話をしたあとは「また」と言って別れている。悪い人たちでは決してないけれど、花嶺家に嫁いだ姉の娘である『私』とは距離があったみたい。お祖父様たちによれば子どもの頃はお母様と一緒によく西園寺家に行っていたようだけど、お母様が亡くなると徐々にその機会が減り、高校三年生の頃には滅多に会うこともなくなったらしい。それが成長ということらしい。誠司もいずれそうなるのだろうかと思ったら、気が早いけれど寂しくなった。 「そう言えば、最近明子に会ったかい?」「明子叔母様ですか? いいえ、お会いしていません」お祖父様がホッとした。「いやね、実は、出がけに明子と会ってね。どこに行くのかと言われたから桔梗に会いに行くと言ったんだよ。そうしたら自分も行きたいと言い出して……」「あの子がそんなこと言うなんておかしいと思って、理由を聞いたらあなたに話したいことがあるからって言うの。それなら私から伝えると言ったんだけど、自分で言うの一点張りで」……?「お祖母様、なぜ明子叔母様が私に会いたいというのは変なのですか?」確かに私に会う理由はないかもしれないけれど、桐谷蓮司の妻に会いたいならおかしくはない。明子叔母様はヨーロッパのアンティーク雑貨やインテリア小物を輸入して販売する店を都内で
Last Updated : 2026-01-20 Read more