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65.沢村家に感謝を。

Penulis: 朝比奈未涼
last update Terakhir Diperbarui: 2026-02-15 12:54:24

里奈さん、里緒ちゃん、私。

この並びで、私たちは体育館内へと入った。

やはりウィンターカップ会場であるここは、地元の体育館とはスケールが違い、その迫力に思わず息を呑む。

高い天井に、広く開けた場所。

少し向こうには大きな階段があり、さらに別の場所には、バスケの試合を行うコートに続く廊下のようなものが見える。

その廊下の手前には、関係者限定、と書かれた紙まであった。

ここが推しの晴れ舞台か…。

黙ったまま、まじまじといろいろなところを見ていると、里奈さんがふと口を開いた。

「そういえば、悠里は今日、柚子ちゃんがここにいること知ってるの?」

「いえ、悠里くんの邪魔はしたくないので黙って来ました」

「ええ!?」

私の答えに、里奈さんが驚きの表情を浮かべる。

一体、何に驚いているのだろうか。

里奈さんの驚きの理由がわからず、首を傾げていると、私たちの間を歩いていた里緒ちゃんが明るい声で言った。

「お兄ちゃん、絶対、柚子お姫様に会いたいよ!」

曇り一つない綺麗な眼差しに「ま、まさか!」とつい首を横に振る。

悠里くんは晴れ舞台に全集中したいはずだ。

それなのに気を使わなければならない相手、対モテ
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  • 推しに告白(嘘)されまして。   76.失えない。side悠里

    side悠里「あの時は確かに玉砕覚悟で本気じゃなかったけど、今はちゃんと本気だから」賑やかな部室内に、俺の真剣な声が響いた。それによってあんなにも自由に喋っていた部員たちの声がピタリと止まる。しかしそれはほんの一瞬で、すぐにその場にいた部員たちはいつもの調子で声を上げた。「わかってるよ!」最初に明るくそう言って、ガバッと俺の肩を抱いたのは隆太だ。「俺たちはお前の味方だぁー!なぁ、みんな!」それから部員全員にそう同意を求めた。「「おおー!」」隆太の声に部員たちは、部活と同じ声量で応える。みんなの温かさに俺は胸が熱くなった。彼らは大切でかけがえのない存在だ。「お疲れ様でーす」その時だった。盛り上がっている部室内に、大きな茶封筒を抱えた後輩、慎がいつもの調子で現れた。「これ、そこで鉄崎先輩から預かりました。なんか監督からみたいで」慎がたまたま扉の近くにいた陽平に、抱えていた茶封筒を渡す。陽平はそれを目を丸くして受け取った。「そこ?」ぱちぱちと大きくまばたきをする陽平に、部員たちもざわつき始める。「慎のやつ、そこって言ったか?」「そこってどこだ?」「てか、鉄崎先輩、て言ったよな?鉄崎先輩って、て、鉄子であってるよな?」それぞれが顔を見合わせて、慎の言葉を確認し合う。その中で俺は頭を真っ白にしていた。先ほどと同じように賑やかなはずの部室内が、やけに静かに思える。誰の言葉も耳に入ってこない。「…慎。そこってどこ?」ざわつく部員たちの中で、陽平は冷や汗を浮かべながらも、冷静に慎にそう問いかけた。「え?部室の前ですけど…」「い、いつから!いつからいたかわかるか!?」部員たちの反応に戸惑う慎に、今度は隆太が俺から離れて食い気味に質問する。すると、慎は首を傾げてこう答えた。「いつからかはわかりませんけど、少なくとも今、そこにいましたよ」「「な、何ぃ!?」」慎の言葉に部室内にいた全員が大きな声をあげる。「つまり、〝鉄子に玉砕大作戦!〟が聞かれていた可能性があるぞ!」「さすがにやばいって!」「ど、どうする!?」それからそれぞれが顔面蒼白で、悲鳴にも聞き取れる声を出した。俺はその中でやっと聞き取れた声に、顔を青くしていた。…柚子に聞かれた。作戦のことも、告白が嘘だったことも。ーーー柚子にフラれる。まだ

  • 推しに告白(嘘)されまして。   75.知らないふり。

    放課後、いつものように風紀委員室へと向かっていると、バスケ部の顧問、冨岡先生に声をかけられた。『鉄崎!ちょうどよかった!俺、これから会議だから、これ、バスケ部の部室まで届けてくれないか?』そう言われて渡されたのが、この大きな茶封筒だ。どうやら練習スケジュール等が入っているらしい大事な封筒を抱えて、私は今、バスケ部の部室へと向かっていた。その道中、ちらりと封筒の中身を見てみたが、さすが強豪校なスケジュール内容で、私は驚嘆した。スケジュールによれば、悠里くんの休みはほぼないに等しかった。一度、校舎外に出て、部室棟へと歩みを進める。階段を上がり、左から三つ目の部屋こそが、バスケ部の部室だ。辿り着いた扉の前で、私は扉をノックしようとした。「いやぁ、鉄子さまさまだな!」だが、部室内から聞こえてきた明るい声に、つい反射でその手を止めた。…一体、何の話をしているのだろうか。それも私について。特に気にせず入ってもいいのだが、何故か今はその気になれない。部室の扉の前で何となく止まっていると、部室内のバスケ部員たちは、私に聞かれているとも知らずに、私についての会話を続けた。「鉄子に玉砕大作戦がここまで成功するとはな!」明るい声は引き続き、楽しげに声を弾ませている。「今やお前ら2人は誰もが認めるカップルだもんな。ファンたちもお前たちを応援してるし、そのおかげで結果も出たし」「ウィンターカップベスト8達成はやっぱでかいよなぁ。去年は2回戦敗退だったし。先輩たちも最後は負けたけど、いい顔してたよな」「鉄子のおかげで悠里が練習に参加できていると言っても、過言ではなぁい!」それから他の部員たちも、その声に応える形で、様々なことを口にしていた。扉の前で、私は思った。これは聞いてはいけない会話だったのではないだろうか、と。今、ここでこの扉を私が開ければ、気まずさMAXだ。それどころか〝鉄子に玉砕大作戦〟が本人である私にバレた以上、作戦続行は不可能と判断され、作戦終了のお知らせがくる可能性だって十分にある。そんな惜しいことしてたまるか。まだ悠里くんの壁という名の彼女でいたい私は、その場で何とか息を殺して、ゆっくりと後ろへと下がった。ーーーその時。「あれ?鉄崎先輩?」「…っ」突然、誰かから声をかけられて、私は大きく肩を揺らした。喉まで上がっ

  • 推しに告白(嘘)されまして。   74.クリスマスの思い出。

    「悠里くん、おはよう」悠里くんの姿に、嬉しくて嬉しくて、つい緩くなってしまった口元に力を込め、私はいつも通り悠里くんに挨拶を返した。しかし悠里くんは突然、どこか暗い表情を浮かべた。一体、この一瞬で何が悠里くんの表情を曇らせてしまったのだろう。このままではいけない、と何が原因なのか突き止めようとした、その時。私は悠里くんの暗い視線の先に気がついた。悠里くんの視線の先には、我が物顔で私のマフラー(過去)を巻いている千晴の姿があったのだ。まさかあれが原因なのか?私が千晴にマフラーを貸していると思って、嫌な気持ちになってる?せっかく築き上げてきた、私と悠里くんの関係が疑われる要素になるから、とか?「ゆ、悠里くん。千晴のあれはね、もう私のマフラーじゃないんだよ?貸してるわけじゃないの」「…え?」おずおずと千晴のマフラーについて切り出した私に、悠里くんが不思議そうに首を傾げる。よく状況を飲み込めていない表情だ。「これいいでしょ?先輩が使ってたやつ、クリスマスプレゼントでもらったんだよね」そんな悠里くんに私が詳しく説明するよりも早く、千晴は何故か勝ち誇ったように笑った。千晴の笑みの理由はよくわからないが、千晴の説明に便乗して、私は「そう!」と明るく頷く。「ふーん。そっか…」すると、悠里くんはどこか面白くなさそうに、小さくそう呟いた。あ、あれ?何で?「先輩、クリスマスは楽しかったねぇ。これ、貰えて、めっちゃ嬉しかったし。俺があげたクリスマスプレゼント、先輩、ちゃんと付けてる?」様子のおかしい悠里くんなど気にも留めず、千晴が楽しそうに笑う。そんな千晴を無視するわけにもいかないので、私は一旦、悠里くんのことは置いといて、千晴に応えることにした。「付けてません。校則違反になるからね」「そっかぁ。じゃあ、一回くらいは付けてくれた?」「まぁ、うん。あれ可愛いし、付けれる時には付けてるよ。ありがとね、千晴」「ふふ、どういたしまして」淡々と答える私に、千晴は柔らかくその綺麗な瞳を細める。その微笑みがどこか眩しく感じて、私は首を傾げた。ーーーその時。「柚子」悠里くんに優しく名前を呼ばれて、私の思考は一瞬で、千晴から悠里くんへと引き寄せられた。「俺たちも年末、少し遅れたけどクリスマスしたよね。これ、めっちゃ着心地いいよ。俺のこと考えて

  • 推しに告白(嘘)されまして。   73.冬休みを終えて。

    あっという間に年末年始が過ぎ、冬休みが終わった。寒空の下、新学期を迎えた校内の下駄箱前で、私は今日も朝から生徒たちの波に厳しい視線を向けていた。もちろんここに立っている理由は、朝の委員会活動でだ。生徒たち一人一人をじっくり見つめながら、私は充実していた冬休みに思いを馳せていた。ウィンターカップでの私の推し、悠里くんのかっこよさが忘れられない。コートを縦横無尽に走り回る勇姿にどれほど感動し、またその姿に少しでも彼女という名の壁として貢献できたことがどれほど誇らしかったことか。少し遅れた悠里くん一家とのクリスマスは最高に楽しかったし、クリスマスプレゼントまでもらえて、最後にはキ、キスまでしてしまった。なんと幸せな冬休みだったか。私は前世でどんな徳を積んでいたのか。悠里くんのことで頭がいっぱいだったが、ここでふと冬休みといえばと、千晴の顔も思い浮かんだ。この冬休みで何かと謎の多かった千晴を、私は少しだけでも知れた気がしていた。家庭環境や今までしてきた苦労、きっと私が知らない千晴の一面はまだまだたくさんあるのだろうが、それでも少しでも知れたことに意味がある。どこか寂しげで独りぼっちな千晴を、私はもう1人にはしたくない、と思った。それに千晴とのクリスマスも案外楽しかった。2人でゆっくりと過ごした時間は暖かく穏やかで、とても優しい時間だった。千晴のことを考えると、胸がぎゅう、と締め付けられる。温かくて、でもどこか苦しくて切ない。原因はわからない。最近よくある正体不明の不調だ。…いけない、いけない。今はこんな考えてもわからないことに、時間を割いている場合ではない。私は軽く首を横に振って、私の思考からさっさと千晴を追い出した。今は生徒たちの服装チェックの時間だ。冬休み明けは夏休み明け同様、生徒たちの気が緩む。少し気を抜くと、すぐに校則違反生徒を見逃してしまう。気持ちを切り替えて、再び生徒の波に厳しい視線を向けていると、その波の奥から朝日を浴びてキラキラと無駄に輝く金髪が現れた。あの堂々としたダイナミック校則違反は間違いなく、紛うことなく、100%、千晴だ。「華守千晴!」人混みの中から厳しい声で千晴を呼ぶ。すると、千晴は嬉しそうにこちらに歩み寄ってきた。「おはよぉ、先輩」「おはよぉ、じゃない!今日も今日とて違反が多すぎる!」

  • 推しに告白(嘘)されまして。   72.光の海で溺れた。

    すっかり日も暮れ、沢村一家とのクリスマス会はお開きとなった。暗くなり始めた空には、ポツポツと輝く星が見え出している。もうすぐ夜だ。名残惜しくも悠里くんの家から帰ることになった私は、寒空の下、悠里くんと共に並んで駅まで向かっていた。私の横を歩いてくれている悠里くんを、チラリと盗み見る。吐く息は白く、鼻先が少し赤い。寒そうな悠里くんに私は申し訳なさと、それから嬉しさでいっぱいになった。推しをこんな寒い中、歩かせたくない。今すぐにでも暖かい場所に戻ってほしい。けれど、まだ一緒に居られることが嬉しい。幸せな気持ちを噛み締めながらも、肩にかけてあるトートバッグの紐をぎゅう、と握る。この中には悠里くんへのクリスマスプレゼントがある。別れ際に絶対に渡さなければ。「…ねぇ、柚子。ちょっと寄り道してもいい?」突然、伺うように悠里くんに瞳を覗かれて、一瞬、その尊さに息を呑む。何をさせても絵になる罪な男。それが私の推しである。「う、うん。もちろん」この胸の高鳴りを悠里くんには絶対に悟られまいと、私はいつも通りの平静を保って、笑顔で頷いた。*****悠里くんに連れられてやってきたのは、駅からほんの少し離れた、とある広場だった。ビル群の中にあるその開けた場所には、普段は住民たちの憩いの場として自然が広がり、ベンチや子どもたちが遊ぶ広いスペースがある。だが、今日はそこが少しだけ違った。生い茂る木々には、暖色のイルミネーションが施されており、その他にも様々なクリスマスに関するオブジェが並べられている。もちろんそのオブジェたちも木々のイルミネーションのように暖色の光を放っていた。もうクリスマスは終わってしまったが、ここはまだクリスマスのままだった。「…うわぁ」広がる光の海に、思わず感嘆の声を漏らす。するとそんな私を見て、悠里くんは柔らかく笑った。「ここ綺麗でしょ?柚子と一緒に来たかったんだ」私をじっと見つめて離さないその瞳には、どこか甘い熱がある気がして、心臓がゆっくりと加速し始める。すごくすごく反則な視線だ。心臓に高負荷がかかってしまう。このままではムキムキな心臓になってしまう。イルミネーションよりも眩しい推しに、つい瞳を細めていると、悠里くんはダウンのポケットから何か小さな箱を取り出した。「これ、クリスマスプレゼント」悠里くん

  • 推しに告白(嘘)されまして。   71.好きなところ。

    それから私たち4人でのクリスマスパーティーは始まった。リビングの大きなテーブルには、悠里くんと私が作った料理が並べられており、それをみんなで食べながら、話に花を咲かす。時間を忘れて楽しいひと時を過ごしていると、机を挟んで向こう側に座る里緒ちゃんが、ふと、明るい顔で口を開いた。「ねぇ、柚子ちゃん。柚子ちゃんはお兄ちゃんのどんなところが好き?」「え?」里緒ちゃんの可愛らしい質問に私は目を丸くする。「んー。いっぱいあるなぁ…」そして箸を置き、視線を左上へと向けた。正直、好きなところをあげるとなると、一日中でもあげ続けられる。しかし、それは流石によくないだろう。重要な部分だけでも伝えなければ。そう思い、じっくり思案していると、隣にいた悠里くんは「無理に答えなくてもいいよ」と、気遣うようにこちらを見てきた。里緒ちゃんの隣にいる里奈さんは「いい質問だねぇ」と楽しそうだ。全員の視線を浴びながら、私はゆっくりと話始めた。「えっと…、まずは誰にでも優しいところが好きで、周りをよく見てて、気配りができるところも好き。あとはバスケをしているところもかっこいいし、笑顔も眩しいし、たまに見せてくれる男の子っぽいところも好きだし、見た目も非の打ち所がなくて…」「ま、待って!もういい!もういいから!」まだ重要な部分を全て伝えきれていないのだが、真っ赤な顔の悠里くんからストップが入り、もう喋れなくなる。強制終了だ。まだまだ言い足りず不満げに悠里くんを見ると、悠里くんは恥ずかしそうに、フイっと、私から視線を逸らした。…か、可愛い。耳まで真っ赤だ。ついつい可愛らしい悠里くんに頬が緩む。すると、今度は里奈さんが怪しく笑った。「柚子ちゃんだけ悠里の好きなところを言うのはフェアじゃないよね?悠里も言おうか」ふふふ、と笑う里奈さんに、少しだけ悠里くんが嫌そうな顔をする。だが、すぐに「…わかった」と小さく頷いた。おおおおおおお、推しが!?私の好きなところを言ってくれるぅ!!!!????今まさに大決定されたとんでもないことに嬉しさのあまり、叫び出したくなる。もちろん、表向きはあくまで冷静に、にこやかにしているが、内なるリトル柚子は喜びで大はしゃぎだ。今から悠里くんが言ってくれる私の好きなところを、一言一句聞き逃してはいけない。今日からそこが私のウィークポ

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