灯火の番 のすべてのチャプター: チャプター 61

61 チャプター

第十五話 ③

「普段僕たちが相手にしているのは夜住でしょ。でもここに落ちてくる人間の数は減るどころか、増えてるんだよね」「それは……誰かが……?」「そー。何かが故意に殺して、もしかしたら夜住にしてるのかもしれないね」 絶句して、神風さんが口元に手を当てる。 しかしその目は死体の幻影から外されることはなく、徐々に広くなっていくように感じる地下室の全てを見つめているようだった。 オロチに関わる死者と、先生は言っただろうか。 つまりここに居る死者たちは──オロチと関わった霧子さんが殺した可能性もあるって、ことなのか? 優しくて頼もしかった霧子さんの姿が、先生の語る霧子さんと重ならない。 先生は「自分に信用がなかった」と言っていたが、神風の封庫であの霧子さんを見ていなかったら、俺も先生の言葉を真っ直ぐに受け止められたかどうか。 最年長の刀主として俺達を見守ってくれていた霧子さんを、疑えた、だろうか。「……ま、信じなくてもそこはしょうがないよ。いきなり言われてびっくりしてるだろうし」「……え」「もうちょっと行った所に神守の封庫があるから、そっちも見よっか。入るのは面倒だけど、君たちなら大丈夫だと思うよ」「せ、んせい」「……どっちを信じても、僕は君たちの意見を尊重するよ」 まるで心を読んだような先生の言葉に、俺は咄嗟に言葉が出てこなかった。 しくじった、と思っても、もう遅い。 違うんだと、貴方を疑ったわけじゃないと言いたくても、言葉が出てこなければ無意味だった。 せめて俺は、俺だけは、先生の言葉を即座に受け入れなければいけなかったのだ。 先生は、慰めて欲しいなんて決して思っていないだろう。 けれど、でも、霧子さんのことで衝撃を受けたのは間違いなく先生も同じだったはず。 先生は、斬られた当事者だ。 その事実を周囲に聞き入れてもらえなかった
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