度数の高い焼酎が、容赦なく理性をかき乱していく。奈々美はどうにか意識を繋ぎ止め、ふらつく足取りでバーを出た。震える指で配車アプリを開き、タクシーを呼ぶ。車を待つ間、通りがかった店のスタッフが彼女を不審そうに見やり、やがてハッとしたように二度見した。見覚えのある顔だと確信すると、すぐにオーナーへ電話をかけた。千明はちょうど雀荘で卓を囲んでいる最中だった。着信音に舌打ちし、気のない様子で電話に出る。相手の話を聞き流しながら写真を送らせたが、その画像を開いた瞬間、ピタリと手が止まった。椅子を蹴って立ち上がりかけたが、思い直して深く座り直す。彼はその写真を明弘に転送した。ついでに位置情報も添付する。そのままスマホをマナーモードに設定し、ポケットに無造作に突っ込むと、何事もなかったかのように牌を混ぜ始めた。二十分後。泥酔し、前後不覚に陥った奈々美を乗せ、タクシーが目的地に到着した。運転手が何度も後ろへ呼びかける。「お客さん?お客さん?着きましたよ、ちょっと、お客さんってば!」後部座席からの応答はない。突然、後部座席のドアが開かれた。スーツ姿の男が無言で現れ、泥酔した女性を軽々と抱きかかえる。運転手は呆気に取られ、慌てて制止した。「ちょ、ちょっと待ってくれ!お客さんの知り合いか!?」奈々美はすでに意識がなく、答えることはできない。「ええ、ご安心を。知り合いです」明弘の後ろに控えていた政彦が、素早く奈々美のスマホにメッセージを送った。彼女のバッグの中で通知音が鳴った。政彦はさらに名刺を差し出した。「こちらの名刺です」「あ……」運転手は名刺を受け取り、しげしげと眺めてから胸ポケットにしまい、ルームミラー越しに車内カメラを指差した。「一応預かっておくがね、今のやり取りは全部このドライブレコーダーに残ってるからな。何かあったらすぐ警察に出すよ」明弘は構わず、腕の中の女を抱えてマンションの敷地内へと歩き出した。彼女は、驚くほど軽くなっていた。記憶にある感触よりもさらに痩せていて、こうして強く抱きしめて、ようやくその存在を実感できるほどだ。奈々美の乱れた髪が頬に張り付いている。目は固く閉じられたままだ。明弘は大股で歩きながら、短く問うた。「相手は誰だ」
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