レストランに到着して席につくや否や、律のスマートフォンが鳴った。会社からの連絡で、急な相談事があるらしい。律が通話のために席を外した隙を突いて、紫音はたまらず兄に問い詰めた。「お兄ちゃん、今回こっちに来た本当の目的って何?もしかして会社で何かあったの?二人で私に隠し事してるでしょ」ずっと腑に落ちなかったのだ。多忙な兄がわざわざこの街まで足を運ぶなんて、よほど重大な用件があるに違いない。どう見ても、自分に会うためだけに来た様子ではなかった。「さっきも言っただろ?律と共同で進めるプロジェクトの件だよ。かなり規模の大きい話だから、直接顔を合わせて詰めておく必要があってな。お前は心配しなくていい、何かあっても俺たちで上手くやるさ」可愛い妹に余計なプレッシャーを与えるつもりなど、州には毛頭なかった。厄介事は当事者である男たちだけで背負い込めばいい。今の窮状を紫音に打ち明けたところで事態が好転するわけではなく、ただ彼女を不安にさせ、いたずらに胸を痛めさせるだけなのだから。「最近の律、毎日本当に疲れているみたいで……」紫音は伏し目がちに言葉を継いだ。「会社のことにかかりきりなの。拝島家であんな大きな騒動があったのに、愚痴一つこぼさない。志津様を安心させるためだけに、潔く身を引く覚悟までして」「毎日ものすごいプレッシャーに晒されてるはずよ。社内がこれだけ揺れていれば、彼の陰口を叩く人間だっている。今まで大人しく従っていた連中だって、ここぞとばかりに不満を漏らすだろうし、律の今のポストを狙っている人間は山ほどいるわ」わざわざ調べ立てなくても、紫音には痛いほど分かっていた。彼が今どれほどの逆風に立たされ、社内で再び確固たる基盤を築くために、どれほど茨の道を歩まねばならないかを。志津は今でも律を無条件に信頼し、彼を支持してくれている。だが、志津もかなり高齢だ。トップの一声で全てが解決するような状況ではない。以前なら誰もが志津の言葉に平伏したが、今は彼らの目に、かつてのような畏れはなくなっている。「問題が起きても、あいつならきっちり片付けてみせるさ」州は力強く頷いた。「それに、俺もついている。今回こっちに来たのは、律をバックアップするためでもある。だからお前は余計な心配をせず、自分の仕事に集中してくれればいい。それだけで俺たちは十分安心できるんだ
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