声のトーンは一定で、そこには何の起伏もなかった。「だから、これで終わりにします。悔いも、未練も……もう何もありませんから」そう言い切る蘭の態度は、痛々しいほどに潔かった。彼女は自らの手で、この恋に完全な終止符を打とうとしているのだ。叶わない夢にこれ以上しがみつき、惨めに時間を浪費したくはなかった。「本当に、浩一さんにもう一度チャンスをあげる気はないの?」あまりにも頑なな蘭の態度に、紫音は胸を痛めながら問いかけた。「彼、ずっと彼なりに足掻いているのよ。ここ数日も、毎晩浴びるようにお酒を飲んで自暴自棄になっていて……見ているこちらが辛くなるくらい。あんなにボロボロになった浩一さんを見るのは、私だって初めてなの」紫音の知る浩一は、どんなトラブルが起きても決して取り乱さず、いつも飄々としている男だった。「いつも余裕ぶっていた彼が、今回は本当に心底傷ついている。それだけ、あなたのことを本気で愛しているのよ」紫音は、愛する部下であり大切な友人でもある彼女に、なんとか思い留まってほしくて必死に言葉を重ねた。蘭がこれほどまでに誰かを深く愛したのを、紫音はずっと間近で見てきたのだ。性格の不一致やすれ違いが原因で別れるのなら、まだ納得できる。しかし、ただ「親が認めてくれないから」「家柄が違うから」という理不尽な理由だけで、深く愛し合う二人が引き裂かれるなんて、紫音にはどうしても受け入れられなかった。しかし、蘭は無理に口角を上げ、不自然なほど明るい笑みを作った。「紫音さん、そんなに心配しないでください。ほら、私、今すごく元気ですよ?これからは恋愛なんて忘れて、自分のエネルギーをすべて仕事に注ぎ込むつもりです。そうすれば、毎日充実して楽しく過ごせますから!」彼女はわざとらしく声を弾ませた。「最近、自分でも仕事の処理能力が上がってきたって実感してるんです。紫音さんがいつも丁寧に指導してくれて、重要な仕事も任せてくれるおかげです。私、今の仕事が本当に大好きですし、担当しているプロジェクトは絶対に全部完璧に成功させたいんです」蘭は痛いほど理解していた。身分違いの恋に破れ、すべてを失ったかのように空っぽになってしまった今の自分にとって、決して裏切らずに残り続けるのは「自分自身で磨き上げた実力」だけだということを。ひ
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