だが、州の心は冷ややかなままだった。「結衣、冷静になってよく考えてくれ。俺がこんなことを言うのは、他でもない君自身のためでもあるんだ」州の低い声には、幼い頃から知る妹分に対する最低限の情が滲んでいた。「俺は、浩一にも君にも、それぞれ本当にふさわしい相手と幸せな未来を掴んでほしいと思ってる。昔から君を知っている兄貴分だからこそ、あえて厳しいことを言わせてもらう」州は結衣の涙に動じることなく、淡々と続けた。「帰国したばかりで不安なのは分かる。だが、君ほどの魅力と家柄があれば、本当に君を愛してくれる男はいくらでも見つかるはずだ。自分を拒絶している男に固執して、君自身の貴重な時間を無駄にする必要なんてどこにもないんだよ」親友である浩一をこれ以上苦しませないためにも、ここで結衣の執着を断ち切らなければならない。州は誠心誠意、言葉を尽くして彼女の目を覚まさせようとした。しかし――「もうやめて!!」結衣の甲高い声が、オフィスに響き渡った。先ほどまでの弱々しい態度は一変し、その顔には絶対に引かないという狂気じみた執念が張り付いている。「私は絶対に諦めない!この結婚は絶対にうまくいくの。だって、両家のご両親が全面的にバックアップしてくれてるんだもん!親の力があれば、浩一くんだって最後は折れるに決まってるわ!」涙で濡れた瞳の奥底に、底知れぬドロドロとした欲望をたぎらせて、結衣は言い放った。誰がどう説得しようと、彼女がこの恐ろしい執着を手放すことは絶対にない。その事実が、冷たい絶望となって州の胸に重くのしかかった。「州さん……そんなに警戒しないで。別に、浩一くんを無理やり説得してなんて言わないから」結衣は少しトーンを落とし、しおらしい態度で上目遣いをした。「私、ただ彼のこと……もっと知りたいだけなの。浩一くんの趣味とか、最近ハマってることとか、そういうのだけでいいから教えてくれないかな?」彼女はすがるような瞳で州を見つめた。それは彼女なりの、切実な歩み寄りだった。思えば、これまで彼女は自分から男性を追いかけたことなど一度もなかった。常に周囲からチヤホヤされ、愛されるのが当たり前の人生だったのだ。だから、こんな風に自分から誰かにアプローチするのは初めての経験で、正直どう動いていいのか分からな
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