「続きまして……株式会社M&Aホールディングス、九龍湊代表のプレゼンテーションです」 司会者の声に、会場がざわめいた。「九龍湊? あの、元インペリアルのCEOか?」「なぜ彼が、こんな無名のベンチャーから……」 好奇と疑念の視線が、一斉に湊へと突き刺さる。 湊は、全く動じることなく、演台の前に立った。 私は、彼の少し斜め後ろ、スクリーンを操作する位置に待機する。 会場の照明が落ち、スクリーンに静かな映像が映し出された。 それは、剣吾のような派手なCGではない。 朝靄に包まれた静かな海辺、そこを散歩する老夫婦の後ろ姿。 波の音と、鳥のさえずりが、会場のスピーカーから微かに流れる。「……皆様。リゾートとは、何でしょうか」 湊の低く、よく通る声が、ざわめきを瞬時に鎮めた。「巨大なカジノ? 大理石のロビー? 海外ブランドのショッピングモール? ……確かに、それらは非日常を演出する要素の一つかもしれません。しかし、我々が本当に求めている『休息』とは、そのようなものでしょうか」 湊の視線が、審査員たちをゆっくりと見渡す。 その目は、コネや権力で動く人間たちを射抜くように、鋭く、そして深い。「私たちが提案する『オーシャン・テラス・ヴィレッジ』は、自然の景観を最大限に生かした、低層のヴィラ群を主体とします。巨大なハコモノで自然を破壊するのではなく、自然の中に人間がお邪魔する。……それが基本理念です」 私がタブレットを操作し、スライドを切り替える。 海辺の地形に沿うように配置された、木とガラスを基調とした温かみのあるヴィラのデザイン。「しかし、ただの自然回帰ではありません。ここからが、我々の真価です」 湊の声に、熱が帯びていく。「各ヴィラには、最新のAIによる環境制御システムを導入しますが、それを運用するのは徹底的なトレーニングを受けた『人間』です。……我々は、施設と
続きを読む