「そんなこと、どうでもいいわ」心愛は顔を襟元に埋めた。「どうせ、もう二度と会うこともないだろうし」その「二度と会わない」という言葉を耳にした瞬間、暁の胸の奥で燻っていた正体不明の苛立ちは、ようやく少しだけ静まった。「ああ。今後は、あんな手合いには近づかないことだ」車が急カーブを曲がると、前方にかすかな灯りが見えてきた。宿泊先の村だ。「着いたぞ」暁は安堵したように息を吐いた。「俊輔たちは地下室にいるって言ってたな」「ええ。旅館のオーナーが、みんなをそこに集めたみたい」車が旅館の前で止まる。木造の建物は猛吹雪の中で頼りなく佇んでいたが、窓から漏れる柔らかな黄色の灯りだけは、凍えた心をほっと和ませた。二人がドアを開けて降り立った瞬間、中から一つの人影が飛び出してくる。「姉ちゃん!兄さん!」俊輔は吹き荒れる風雪もものともせず、砲弾のような勢いで心愛の胸に飛び込んだ。少年の身体は小刻みに震え、目は真っ赤に充血している。どれほど怯えていたか、一目で分かった。「やっと来た……もう、ダメかと思ったよ……」心愛は衝撃で一歩よろめいたが、背後にいた暁がしっかりと腰を支える。「大丈夫よ」心愛は弟の背を優しく叩いた。その目元にも、じわりと熱が滲む。「もう大丈夫。お姉ちゃんが来たから」暁は傍らに立ち、抱き合う姉弟を見つめながら、静かに目を細めた。やがて顔を上げ、今しがた通ってきた道を振り返る。そこには、漆黒の闇と吹き荒れる雪嵐しかなかった。あの「邸宅」も、カーペットの上で血を吐きながら倒れていた男も、すべては嵐の向こう側へ切り離されたかのようだ。あいつが死なない限り、この因縁は終わらないのだろう。「中に入ろう」暁は二人の肩を抱き寄せた。「外は冷える」地下室には、足止めされた観光客たちがひしめき合っていた。空気は決して良いとは言えず、カップ麺の匂いや様々な体臭が入り混じっている。それでも今この瞬間、ここは世界で最も安全な場所だった。心愛が隅の席に腰を下ろすと、俊輔は彼女が消えてしまうのを恐れるように、ぴたりと隣へ寄り添った。暁は濡れそぼった上着を脱ぎ捨てる。その下は、薄いシャツ一枚きりだった。彼はオーナーから白湯をもらってくると、紙コップを心愛へ差し出した。「
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