凪があそこまで図に乗っていられるのは、誠が関係しているからだ。美羽の予感通り、誠は病院を出るとそのまま車を走らせ、水月郷へと向かった。凪は大きな窓の前で絵を描いていて、白いキャミソールのワンピースは絵の具で汚れていた。静かに座る凪は、まるで何にも触れられない聖域のようにも見えた。しかし、キャンバスに描かれていたのは、血を流す恐ろしい骸骨で、背筋が凍るような絵だった。誠は視線をカルトンから逸らしたが、それでも、この時の凪がとても魅力的であることは認めざるを得なかった。まるで誘惑的な毒リンゴのようで、思わずかぶりつきたくなる。「凪、また何をするつもりなんだ?」誠は凪の背後に立ち、その真っ白で滑らかな肩に手を乗せ、身を乗り出して顎で彼女の頬を優しく撫でた。凪は顔をそらし、その手を避けた。「あっちへ行って」飛んできた絵の筆を避けようと、誠は慌てて後ろへ退いた。しかし、完全に避けきれず、首元に冷たい感覚が走る。赤い絵の具がたっぷりついた筆が滑り、まるで刃物で斬られたように、首元から血が流れているような痕跡を残した。窓に映るその跡を見て、誠はぞっとした。凪という女は、自分の思い通りにならなければ何をするか分からない狂気をはらんでいる。「どうしたの?怖い?」凪は少し横を向き、見上げてきた。笑みを浮かべつつも、鋭い視線が魂まで見透かすようだ。「この小悪魔、俺が怖いわけないだろ?」誠は凪の顎を掴み、身をかがめて唇を奪った。凪は持っていた筆を捨て、その腕を首に回して応えた。誠が彼女の細い腰をしっかりと抱き寄せ、軽々と持ち上げた。1時間後、二人はベッドで重なり合っていた。寝室には、まだ熱を帯びた空気が漂っている。誠は凪の長い髪を撫で、額に愛おしそうに口づけた。「凪、俺が一生愛する女は君だけだ」それは本心からの言葉だった。凪を深く愛している。他の男なら、凪のために妻や家族さえも捨てるだろう。しかし自分には無理だ。また、その程度の情しかないのも事実だった。凪は誠の胸元にすり寄り、甘ったるい声で言った。「馬鹿なこと言わないで。愛してるなら私を妻にして」自分にとっても、深く愛した男は誠だけだ。湊に対しては悔しさがあった。綾に負けることが、どうしても許せなかった。湊は自分
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