怜司の喉が、わずかに動いた。 次の瞬間、唇が重なった。 静かなキスだった。 けれど、深くなるのは早かった。 怜司の手が背中へ回り、私を引き寄せる。 息が乱れて、指先が彼のシャツに沈んだ。 舌先が触れた瞬間、膝から力が抜けそうになる。 逃げたいのではなく、立っていられない。 そう思った途端、怜司の腕が支えるように強くなった。 湖の光が、まぶたの裏で揺れる。 唇を離されるたびに、呼吸が足りなくなる。 また欲しくなる。 自分から追いかけるように顔を上げると、怜司の腕に力がこもった。 「澪」 名前を呼ばれる。 それだけで、身体の奥が震えた。 私はこの声に弱い。 この人の目に弱い。 この人に欲しがられることに、まだこんなにも弱い。 けれど、今日はそれを恥じたくなかった。 怜司の指が、ブラウスの釦に触れる。 一つずつ外されるたび、肌に空気が触れた。 肩が震える。 薄い布が胸元からゆるみ、怜司の視線がそこへ落ちる。 見られている。 そう分かるだけで、背中の奥が甘く痺れた。 彼は急がなかった。 その丁寧さが、かえって苦しい。 「そんなふうに見ないでください」 「無理だ」 「怜司さん」 「見たい」 低い声が、胸元へ落ちる。 「三年、見ていない」 その言葉に、喉が詰まった。 三年。 逃げた時間。 怜生を抱いて生きた時間。 一人で立つために、何度も歯を食いしばった時間。 その全部を、この人は知らない。 でも今、知らなかった時間ごと、私に触れようとしている。 怜司の唇が、首筋に触れた。 熱い。 細く息が漏れる。 唇が離れた場所から、また別の場所へ降りていく。 首筋、鎖骨、開いた釦の端。 触れられるたびに、肌の下で熱が広がった。 ベッドへ押し倒されるのではなく、ゆっくり座らされる。 その動きだけで、大切にされているのが分かってしまう。 それが、余計に胸を乱した。 三年前、私はこの人の腕の中で、自分を失いかけた。 けれど今夜は違う。 失うためではない。 確かめるために、私はこの人に触れている。 私から、怜司のシャツに手をかけた。 指が少し震えた。 怜司が、私の手を上から包む。 「
最後更新 : 2026-06-01 閱讀更多