ドッドッド、とまるで早鐘を打つように心臓が物凄い速度で鼓動を刻んでいる。 それは、デザイン室に無事入室した今でも続いていて、もみじは自分の胸を押さえた。 ぱたん、としっかり扉を閉めた髙野辺は申し訳なさそうにもみじに振り返った。 「すみませんもみじさん、怖がらせました、よね……?」 「い、いえっ、大丈夫です!」 しゅん、と眉を下げて申し訳なさそうに肩を落とす髙野辺に、もみじは慌てて両手をぶんぶんと振る。 そんなもみじに、髙野辺は幾分かほっとしたように表情を和らげる。 もみじは気になっていた事を髙野辺に問うた。 「その、あの中途採用の女性社員の方……」 「──徳居さんですか?」 髙野辺の口から女性の名前が出て、もみじはこくこくと頷く。 さっき、徳居が口にしていた事。 髙野辺と徳居は、利用しているお店の常連客同士で、顔見知りのようだった。 それなのに、こんな風にバッサリと断ってしまって良かったのか──。 そう思ったもみじは、素直に聞く事にした。 「その、徳居社員とは……お知り合いなんですよね?せっかくのお誘いなのに、断ってしまって……良かったんですか?」 もみじの言葉に、髙野辺はきょとん、と目を瞬く。 そしてなんて事ないように答えた。 「ええ、大丈夫ですよ。確かに、徳居社員とは利用しているお店が一緒みたいですが、それだけです。……ほら、以前もみじさんと一緒に行った定食屋。あそこを徳居社員も良く利用しているようです」 「──!あ、あのお店の!?」 「ええ、そうです。恥ずかしながら俺も、さっき徳居社員に言われて気がついたんですけどね」 「そ、そうだったんですね……」 「ええ。だけど、以前徳居社員が店に忘れ物をした時に届けた時くらいしか会話をした事が無かったので……徳居社員が俺があの店の常連客だって事を覚えているとは思わなかったです」 そう言って笑う髙野辺に、もみじは何とも言えない表情で笑って返す。 (髙野辺さんみたいな人が、自分がよく利用するお店の常連客だったら……絶対顔を覚えちゃうわよね……) 男女問わず、魅了するような人だ。 異性ならば尚更、髙野辺を覚えているだろう。 だが、当の本人髙野辺は徳居の事を殆ど覚えていなかった。 徳居本人から言われてようやく思い出したほどなのだ。 (た、髙野辺さんって……周囲の事をあ
最終更新日 : 2026-06-13 続きを読む