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第7話

Author: 酔夫人
last update publish date: 2026-03-25 10:09:25

生き残る、つまり、死なない。

死なない男ならいいじゃないか。

アリアの出した解決策に、フィンが呆れた。

「なんだ、その条件は?」

フィンはアリアのツッコミ担当。

呆れつつも、仕事はこなす。

「誰かが言っていたんだけど、兄弟から紹介された人との結婚ってうまくいくらしいの」

「俺が言った条件はそっちではないが、“誰か”なんて出典の怪しいものを信じるなよ」

「でもフィン兄さんも、私の周りに可愛い子がいたとき“紹介して”って強請るじゃない」

「……そうだな」

肩を落としたフィンに、レオンハルトが呆れる。

「お前、そんなことを妹に頼んでいたのか」

「仕方がないだろう、アリアのほうが女の子にモテるんだから」

フィンのため息交じりの言葉に、レオンハルトとカイムは顔を見合わせて苦笑した。

「確かに、そうだな」

.

ヴァルグリム家の三兄弟は領内の女性たちにかなりモテるが、アリアはその比ではない。

「老若男女、アリアはモテまくっているからな」

「問題の若い男性が少ないっていうのが問題だが」

「アリアの隣に並ぶと自信をなくすらしい」

美形で、武芸に秀でていて、女子どもなど庇護対象にはとことん優しく紳士的。

アリアは女性にとって理想的なアイドル。

そんなアリアを「お姉様」と慕う女性多数。

彼女たちの中には、アリアの遠征に補給物資をたんまり乗せた馬車でくっついていくほどのファン、通称「ガチ勢」もいる。

このガチ勢について、三兄弟の認識は違う。

カイムとレオンハルトの場合、彼女たちとの年齢がやや離れ気味であることから、ガチ勢の行動は可愛らしい・微笑ましいものとして映っている。

さらに、カイムとレオンハルトの場合、同年代の女性たちが二人に対してかなり積極的なため、人口の少なめの厳しい土地でも二人はうまいこと“彼女”に困らずにいる。

ちなみに、その女性たちがカイムやレオンハルトに対して積極的なアプローチを試みるのは、ヴァルグリム家の女主人の座を狙ってといるというわけではない。

彼女たちは「アリア様みたいな妹が欲しい」と思っており、アリアの義姉の座を主に狙っており、ヴァルグリム家の女主人の座は一緒にくっついてくるオマケの感覚でいる。

つまり、カイムとレオンハルトが女性のモテるのもアリアの威光であるのだが、兄の矜持で二人ともそこのところは黙っている。

一方で、フィンの恋愛対象の女性たちはアリアのファンばかり。

「いいな」と思って近づいても「アリアお姉様と比べると……」とダメ出しされてしまう。

性愛にならない安心感から彼女たちはアリアを慕っているのだと思い、ガツガツせずにいい人全開でアプローチるすると結果は「お友だちでいましょう」となるからバランス取りがとても難しい立ち位置にいる。

 .

「それよりも、私の旦那様! 兄さんたちの知り合いでもいいから、不死身の男の人っていない?」

「いるか!」

「兄さんが渋るから、友人から知り合いに格下げしたのよ」

「格下げが必要な条件はそっちじゃない」

フィンは即突っ込んだが……。

「「あ……」」

カイムとレオンハルトは、思い当たる節があるって感じの声を出した。

「え、いるのか?」

それにはフィンが驚いた。

「「ああ、知人にいる」」

「いたのか!」

「友人という条件を緩めて正解ね」

驚くフィンと、満足気なアリア。

「不死身なんて伝説のようなお伽噺だと思ったけれど、言ってみるものね」

アリアの言葉にレオンハルトが首を横に振る。

「いや、殺せば死ぬ」

「不死身じゃないじゃない」

あっさりと否定され、アリアは膨れたが……。

「殺せば死ぬのは、人間なら当たり前のことだろう」

「そうよね」

辺境の地で、幾人もの死を看取ってきたアリアはすんっと落ち着いた。

「それじゃあ、ダメじゃない」

「不貞腐れるなアリア。“死なない”条件は満たしているんだ」

「どのレベルで?」

不貞腐れたアリアの言葉に、カイムとレオンハルトは顔を見合わせた。

そして、カイムが頷いて口を開く。

「牙の全力をもってしても、この男は殺せないだろうな」

カイムの言葉にレオンハルトは同意するように頷き、アリアとフィンは驚いた。

ヴァルグリム騎士団「牙」は、ルクスハイム王国の最強。

つまり、二人が言っているその知り合いは、最高の攻撃力を持っても殺せない男となる。

「え、誰? そんな伝説の騎士なんていたか?」

そんな騎士なら、自分も名前を知っているはずだとフィンは首を傾げた。

「黒曜魔塔の主、ルシアン・ノクスだよ」

レオンハルトの出した名前に、フィンは驚いた。

「実在したのか?」

「当たり前……ああ、そうか。フィンたちの世代では、彼を見たことはないか」

黒曜魔塔の主とは、ルクスハイム王国の魔導師たちのトップ。

十年前、新たな主になったルシアン・ノクスは当時十五歳。

最年少の魔塔主だと評判になったが、その後に彼を見た者はいない。

そのためフィンたち世代にとっては都市伝説のようになっている男だった。

「そんな神秘的な奴ではないさ。究極の面倒臭がりで表に出るのを面倒がっているだけだ」

「「面倒臭がり」」

復唱した弟妹に、レオンハルトは苦笑した。

「基本的にベッドの上で生活し、排泄と入浴のときしかベッドから出ないと言っての過言ではない」

レオンハルトは説明の合間に苦笑した。

「ルシアン・ノクスの生涯をかけた夢というのが、排泄と入浴をベッドの上ですませる魔導具を作ることだからな」

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