夫と愛人に地獄に突き落とされた私を救ってくれたのは「若」と呼ばれる裏の世界の人でした의 모든 챕터: 챕터 191 - 챕터 200

271 챕터

191話

「ほら、泣き止んでくれ音羽。恭を探そう?」 優しい声で、優しい指先で音羽の涙を拭う伏見。 ハラハラと涙を流す音羽。 場違いだとは思いつつ、静かに涙を流す音羽がとても綺麗で。 伏見は思わず音羽に口付けた。 「──んっ!?」 「……ん、ふっ、はは。やっと涙が止まったな。……音羽、恭を探そう。泣くのは恭を見つけてやってからにしよう」 そうだろう?と優しく声をかけてくれる伏見に、音羽は慌てて濡れた目元を拭うと頷いた。 あまり声を出して探さないように、と伏見に言われていた音羽は、足音を極力立てないように気をつけつつ周囲を見回す。 伏見は音羽の腰に手を回し、自分から離れないよう、音羽を守りつつ伏見は周囲を警戒している。 ゆっくり歩きながら、伏見は声を落としつつ話す。 「……火災の知らせを持ってきた工場の職員がいただろう?」 「──はい」 「その工場の職員、あの場がパニックになっている内に姿を消していた。……多分、あれはこの工場の職員ではない」 「……そんな!あ、でも、だから蓮夜は火災が起きていないって……?」 だからそんなに早く火災は起きていない、と判断できたのだろうか。 音羽の考えを肯定するように、伏見は頷いた。 「ああ。普通だったら近くにいた職員と一緒に避難誘導を始める筈だろう?それなのに、姿を消していた。……誰かに雇われたか、金に釣られたか……命令されていたか。詳細は分からないが……子供達を見つけたら、子供達を攫った人間も一緒にいるはずだ。そいつに聞けば全部分かるだろう」 そう話す伏見の表情が、ヒリついたものに変わる。 音羽が口を開きかけた所で、伏見のスマホが震えた。 「──組の者からだ」 「……!」 そう告げた伏見は、即座に電話に出る。 電話相手の声が、伏見に抱き寄せられていた音羽の耳にも聞こえた。 〈若、子供達を見つけました。この工場の職員風の男と一緒にいます!〉 音羽の耳にも、はっきりと聞こえた声。 その報告を受けた瞬間、音羽と伏見は顔を見合わせて指定された場所へと走り出した。 ◇ 時間は少し遡る。 火災が発生した、と叫び声が聞こえた後、保護者達がパニックを起こしてベルトコンベアに駆け寄って来た。 「──わっ、わっ」 恭は突然駆け寄ってくる大人達の勢いに押され、踏み台から足を滑らせてしまった。 そこ
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192話

「──えっ、え……?」 何で、と恭は震える声で呟く。 頭を殴られてしまった職員は、その場に蹲りベルトコンベアに隠れてしまう。 このままだと、向こう側から隠れてしまう──。 恭は蹲った職員に駆け寄ろうとしたが、そこではっと足を止めた。 蹲った職員の向こう側。 そこに、自分を励ましてくれた職員を殴った男が立っていたからだ。 「──えっ、何……」 本能的に危機を感じ取る。 職員を殴った男は、手に持っていた警棒をさっと縮めて動揺する恭に一歩近づいた。 ぱっと見た感じだと、この工場で働いている職員と大差ない格好をしている。 だが、マスクと帽子の隙間から覗く男の目はどろっと濁っているように暗く、据わっているように見えた。 本能的な恐怖を感じ、恭が一歩後ずさった所で、他の園児とぶつかってしまった。 「──わっ、恭くん……?どうしたの、大丈夫──」 「あまり動いちゃ駄目だって、職員さんが言っていたよ。大人の人が来るまで待っていよう」 恭と同じ園に通う友人の男の子2人が、お互いを励まし勇気付けるように声をかけてくれる。 だが、恭はこのままここにいたら危険なような気がして、咄嗟に友人達に振り向いた。 「変な職員さんがいるんだ!さっきあの男の人が、職員さんを殴って──」 「余計な事を言うな」 「──っ!?」 恭が男の子2人に振り向いた隙を付き、職員風の男は一気に距離を縮めると恭を背後から羽交い締めにした。 友人2人は職員がこんな事をするとは思わなくて、驚いたように目を見開いている。 だが、すぐに叫ぼうと口を開いた所で──。 「騒いだら、このお友達が死んじゃうよ。
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193話

(どうしよう、どうしようどうしよう!僕のせいで、翔くんと光希くんを巻き込んじゃった……!) 恭は恐怖によってカタカタと体を震わせつつ、それでも巻き込んでしまった友人2人の事を心配した。 (このおじさんの口ぶりだと、僕だけが狙いだったみたいなのに……。どうしよう、2人にどうやって逃げてもらおう……っ) 大人の足から子供である自分達が逃げ出す事は到底無理だ。 とてつもなく難しい事は恭にも理解出来た。 でも、このまま巻き込んでしまった2人が傷付くのは避けたい。 どうしたら、2人を助けられるだろうか。 恭は必死に考えていたが、半ばパニック状態の今では良い案は思いつかない。 そうこうしている内に、電話をしていた男は電話相手からの指示を聞き終えたのだろう。 「分かりました。そのようにいたします」 そう告げて、電話を切ってしまった。 電話をしまった男は、恭に顔を向けると冷たい口調で「こっちに来い」と言い、嫌がる恭を無理やり引っ張って行く。 「いっ、嫌だ……っ、離して……!」 「こ、この野郎っ!恭くんを離せ……っ!」 「ひっ、人を呼びますよ!」 今の会話で、翔と光希にも恐ろしい事が起きる、と察したのだろう。 翔と光希は顔を真っ青にして職員風の男に向かって叫ぶ。 だが、職員風の男は態度を変える事はなく、不意に懐から何かを取り出して翔に投げつけた。 「──痛っ!」 「か、翔くん!」 翔の悲鳴が上がり、頬に薄っすらと赤い筋が出来る。 男が投げ付けたのはとても小さな小さな刃物。 それが翔の頬を切り、そして背後に落ちたようだった。 翔は真っ青になりながら、切れてしまった自分の頬に手をや
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194話

ドガッ、と鈍い音を立てて外から入って来た若い男の足が職員風の男の頭に直撃する。 呻き声を上げてその場に膝を着く男。 外から入ってきた若い男は、味方なのかそれとも敵なのか。 恭にはその判断が付かなかった。 だが、その場で固まる恭達に向かって若い男が声をかけて手を伸ばした。 「──おい!君たち、早くこっちへ!」 職員風の男に向けていたような態度ではなく、若い男からは自分達に対して心配するような感情を感じた。 この人は、信じても大丈夫かも──。 一瞬でそう判断した恭は、後ろにいる友人2人を振り返り、声をかけた。 「翔くん、光希くん。あのお兄さんの所に行こう……!」 「だ、だけど恭くん……」 「本当にあの男の人、大丈夫なの……?」 「──ぐぅ……、逃がすか……っ」 翔と光希が躊躇っている間に、職員風の男が呻き声を上げながら起き上がるのが見えて、恭は顔色をさっと変えると2人の手を取って走り出す。 「た、助けてください……!」 「──待て、クソガキ!」 恭達が逃げる背後から、職員風の男が手を伸ばして追ってくる。 若い男が助けるように恭に手を伸ばしたが、若い男が恭の手を取るより職員風の男が恭を捕まえる事の方が早かった。 「うわぁっ!」 「きょ、恭くん!」 「恭くん!」 恭と手を繋いでいた翔と光希も、恭が捕まってしまった事で足を止める。 恭は急いで2人から手を離し、若い男に2人を託す。 「──捕まえた……!俺はこのガキを始末出来ればそれでいいんだ!」 目は血走り、表情は焦りが滲んでいる。 若い男は自分の傍に逃げてきた恭の友人2人を背後に隠すと、目の前の職員風の男を真正面から見据えた。 そして、軽く自分の耳元に手をやると小さな声で話し出す。 「──若。見つけました。ですが、すみません。合計3名の園児が。……坊っちゃま以外の2名の園児は確保済です」 「おい!何をごちゃごちゃ喋ってやがる!さっさとそこをどけ!この場でこのガキをバラしてもいいんだぞ!」 職員風の男が声を荒らげ、叫ぶ。 若い男の背後で翔と光希が恐怖に身を竦ませ、ぎゅっと目を閉じた。 その間も若い男が誰かと会話をしているようだったが、翔にも光希にも小さな声で会話をしている声は聞き取れず、ただただ目の前の若い男の服の裾を握っていた。 若い男は、園児2人が怖がって
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195話

◇ 組の部下から連絡を受けた伏見は、走っていた。 「工場内の西側ってここの辺りの筈……!」 その場に足を止め、周囲を見回す。 後方から音羽が着いて来ている足音が聞こえ、伏見は音羽に向かって声を上げた。 「音羽……!誘拐犯は1人だけじゃないかもしれない。俺から一定の距離を保っていてくれ!」 「わ、分かりました……!」 音羽が息を切らしながら答える。 音羽の返事を確認した伏見は、再び走り出した。 暫く走っていると、音羽が「気持ち悪い」と言っていた区画が見えてきた。 伏見は迷いなくその方向に足を向けると、駆ける速度を上げる。 「──っ!」 人の話し声が聞こえ、伏見は走っていた足を止めた。 「──男の声が2つ。……それに、子供の声が幾つか聞こえるな……」 2つある男の声の内、1つは組の人間の声だろう。聞き覚えがあると伏見は考えた。 それならば、もう1つの男の声こそが誘拐犯だ。 「確か、姿を消した園児は3人だったな……」 極力足音を消して声が聞こえる方へ向かって行く。 音羽に対して伏見は後方に向かって手のひらを向ける。 「これ以上近づかないように」と言う意味の合図を送る。 音羽の気配がその場でぴたり、と止まった事を確認した伏見は更に近付いた。 「──見つけた」 すると、伏見の視線の先に探していた誘拐犯の姿が映った。 それと同時に、恭を人質に取るような様子の誘拐犯の姿に、伏見の頭の中で何かがぷちり、と切れた。 それからの伏見の行動は素早かった。 誘拐犯に気取られないよう、死角から素早く接近し、組の人間が誘拐犯の注意を引き付けている間にすぐ傍に辿り着く。 組の人間がほっとしたような、安心したような表情になったと同時──。 伏見は足音を殺す事よりも素早く誘拐犯に接近する事を優先し、駆け寄った。 誘拐犯が伏見の接近する気配と足音に気が付いても、もう遅い。 誘拐犯が反応するよりも早く、伏見は地面を軽く蹴り上げ、振り上げた足を思い切り誘拐犯の側頭部に叩き込んだ。 「──ぎゃあっ!」 醜く、潰れたカエルのような声を出して地面に突っ伏した誘拐犯をそのまま強く蹴り付け、地面を転がす。 「──恭!」 伏見は誘拐犯に捕らえられていた恭にすぐさま手を伸ばすと、真っ先に抱きしめた。 「大丈夫か!?怪我はないか!?」 「お、お父さ
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196話

伏見の腕の中から小さな手を精一杯伸ばす恭。 そんな恭に駆け付けた音羽は恭の小さな手をぎゅうっと握った。 「良かった!本当に良かった……!無事!?どこにも怪我はしていない!?」 「お母さん……!」 ぼろぼろと涙を零し、泣きじゃくる恭。 伏見は恭を音羽に渡すと、音羽は小さな恭の体を力いっぱい抱きしめる。 そして音羽は恭の体に怪我がない事を確認するとほっと安心したように今度は優しく抱きしめた。 「──音羽」 「は、はいっ!蓮夜!」 恭の無事を安堵していると、伏見の声が聞こえ、音羽は慌てて伏見に振り向く。 すると伏見は地面に転がっている男を縄のような物で縛っている最中だった。 伏見は自分の懐に入っているトランシーバーを音羽に投げて渡すと、言葉を続ける。 「それで職員に連絡をしてくれ。誘拐犯を捕まえた事と、警察への通報もして欲しい、と」 「わ、分かりました!」 音羽は慌ててトランシーバーを受け取り、伏見に言われた通り事前に教わっていた手順でトランシーバーを操作する。 そして繋がった職員に伏見に言われた通り報告した。 職員がすぐこっちに行くと告げて、やり取りは終わった。 「──良かった」 ぽつり、と音羽は零して恭を抱き直す。 すると少し離れた場所で縮こまっている園児2人が居る事に気が付いた音羽は、怖がらせないように優しく2人に声をかけた。 「怖かったよね、もう大丈夫。こっちにおいで?」 音羽の声に弾かれるようにこちらを見た園児2人。 園児2人は、緊張がふつりと切れたように一瞬で顔をくしゃくしゃに歪めると、両手を伸ばして音羽に駆け寄った。 「翔くん!光希くん……!」 音羽の腕の中で、恭が園児2人の名前を呼ぶ。 2人に向かって手を伸ばすのを見て、音羽は恭に「お友達?」と優しく問いかけた。 こくり、と頷く恭に音羽は恭を片手で抱き寄せると、もう片方の腕は2人に向けて広げて見せた。 「さあ、もう大丈夫だからこちらへいらっしゃい」 音羽の優しい声と表情に、翔と光希は走っていた勢いそのままに音羽に抱きついた。 「うっ、うわああん!」 「こ、怖かったです……!」 大声で泣く2人を、音羽は優しく抱きしめて撫でてやる。 すると、翔の頬に血が滲んでいるのに気が付き、音羽は眉を寄せた。 「翔くん、怪我をしているわ……!早く手当をしな
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197話

◇ それから。 工場の職員達が駆け付け、その場は慌ただしくなった。 伏見や音羽が職員にあった事を伝えると職員や園の職員は顔を真っ青にした。 翔や光希の両親もその場に駆け付けており、自分の子供を見つけた瞬間、駆け寄り抱きしめた。 翔や光希もずっと不安だったのだろう。 両親の顔を見た瞬間、幼い子供らしく大声で泣き出し、両親にしがみつく。 音羽と伏見が職員に事の顛末を話していると、今度は警察が駆け付ける。 警察の姿に、音羽はびくりと肩を揺らしてしまった。 伏見の正体の事を考えると、警察と接触するのは不味いのではないか──。 そう考えた音羽だったが、当の伏見本人は落ち着き、警察と話している。 捕まえた誘拐犯を警察が拘束し直し、工場の外に連行していく姿を見た音羽は、ほっと息を吐き出す。 あの誘拐犯の男が外に出て行ってくれたお陰で、恭を始め、翔や光希も安心しただろう。 「──恭ちゃん、大丈夫?」 「……ん、お母さん……」 緊張し、疲れていたのだろう。 恭は音羽の腕の中でこくこくと船を漕いでいた。 体力の限界も訪れている。 これ以上幼い恭に警察の聴取に付き合わせるのは可哀想だ。 「蓮夜……」 「ああ、分かっている。早く休めるようにしてもらおう。少し警察と話してくるから、待っていてくれ」 「ええ、ありがとうございます」 音羽が伏見に話しかけると、伏見も頷いてくれる。 伏見が警察の所へ歩いて行く後ろ姿を見送り、音羽は恭を抱いたまま職員に用意してもらった椅子に腰を下ろした。 ◇ 「疲れたな。今夜は少しゆっくりしてから明日、都内に戻ろう」 ぐぅっと伸びをした伏見が、柔らかく微笑んで振り返る。 ここは、別荘地。 伏見が所有するいくつかの別荘の内、その1つにやって来たのだ。 あの事件のせいで、園外学習はもちろん中止になってしまった。 誘拐犯に誘拐された当事者である恭、翔、光希の3人とその保護者は、警察の聞き取りがあるため園のバスで帰る事が出来なかった。 バスが行ってしまい、帰る足が無い。 伏見の組の人間が着いて来ているとは言え、警察がいる以上彼らを迎えに寄越す事は出来ない。 そんな中で、途方に暮れる保護者達の前で伏見はここが自分が購入した別荘地の近くだと思い出したのだ。 そして、別荘の管理人に連絡を取り、また警察の協力も
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198話

「玉櫛さん、本当にありがとうございます。とても助かりました……」 「気にしないでください、交渉してくれたのは管理人と警察ですから」 翔と光希の両親が申し訳なさそうに伏見に話しかける。 伏見は軽やかに笑い、自分の力ではない、と肩を竦める。 そんな彼に毒気を抜かれたのだろうか。 2人の両親はほっと肩を撫で下ろし、伏見の笑顔に釣られるように笑う。 そして、別荘の庭先で楽しそうにはしゃぎ、走り回る恭や自分の子供に顔を向け、ぽつりと漏らした。 「本当に、良かった……。自分の子供がいない、と分かった時……目の前が真っ暗になりましたから」 「……ええ、私も妻も同じです。だけど、子供達は元気ですね。怖くてどうしようもなかったはずなのに、今はああして笑顔で笑っている。……だから、私達がずっと不安そうな顔をしないよう、気をつけましょう」 「──!そう、ですね。確かに、玉櫛さんの仰る通りです。親である私達が不安そうにしていたら、子供にもそれが伝わってしまう。笑わなければ……」 伏見の言葉を受け、翔と光希の両親はこくりと頷き、もう一度伏見と音羽に頭を下げてからその場を離れ、子供達に声をかけに行く。 去って行く両親を見送っていると、飯野が2人に近付いた。 「伏見さんも、奥様もお疲れ様でした。本当に……坊っちゃまをお救い頂いてありがとうございます」 「飯野さん」 「恭を助けるのは当然の事ですよ。私や妻にとっても、恭はかけがえのない存在ですから」 「伏見さん……!」 頭を下げる飯野に、伏見がそう言葉を返す。 すると伏見の言葉に感動したように、飯野は瞳をキラキラと輝かせた。 「私、坊っちゃま達を見ております。お2人は、警察とのお話もありお疲れでしょう?少しお休み下さい」 笑顔でそう告げると、飯野は恭達の方へ歩いて行く。 「音羽、飯野さんの言葉に甘えさせてもらおう。……話しておきたい事もある」 「蓮夜……。分かりました。一旦中に入りましょう」 真剣な表情の伏見。 その言葉に、音羽はこくりと頷いた。 ◇ 別荘内に入った音羽と伏見は、外の様子が良く見える場所に移動すると、大きなソファに2人で並んで座った。 そこからは、外で遊ぶ恭や翔、光希が良く見える。 すぐ側には飯野が控えて見守ってくれている。 その事に安心した音羽は、隣に座る伏見に顔を向けた
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199話

「恭ちゃんがターゲット……!?恭ちゃんが狙われてたって言うの……!?」 どうして!と声を震わせる音羽を、伏見は慰めるように、落ち着かせるように強く抱き締めた。 「──その理由を、確認してくる」 「……えっ」 どう言う意味?と音羽の目が言っている。 伏見はふっと笑うと、音羽の頭を優しく撫でてから答えるように口を開いた。 「あの誘拐犯が警察署に着く前に、組の奴らに誘拐犯を拘束させる。……後は、俺がその場所まで出向いて誘拐犯と話をしてくるよ」 「れ、蓮夜が……!?」 「ああ」 「大丈夫なんですか!?相手は刃物を持っていたって……!」 「大丈夫だ。警察に拘束された時に身体検査はされているはずだし」 優しく頬を撫でられ、安心させるように柔らかく微笑みながら言われる。 それでも音羽は伏見が心配な気持ちは晴れない。 「……無理だけは、しないでくださいね。……警察がちゃんといてくれるから、大丈夫だと思いますが……」 音羽の言葉に伏見は頷いて音羽を抱きしめる。 まるで「大丈夫だ」と言うように「心配ない」と伝えるように音羽の背中を優しく叩く。 「──じゃあ、俺は少し出てくるよ。夕食の手配はしてある。俺の帰りを待たずに、眠くなったら寝てしまって構わないから」 「分かりました。蓮夜、気をつけてくださいね」 「ああ。行ってくる」 音羽の額に軽く唇を落とし、伏見はソファから立ち上がる。 裏口から出た方が車に乗りやすい。 そのため、伏見は別荘の裏口から出て行った。 ◇ 伏見を見送った音羽は、外で遊んでいる恭のもとに向かうため、正面玄関から外に出る。 「──あ!お母さん!」 「恭ちゃん」 音羽が外に出て来た事にすぐ気がついた恭が、遊んでいた翔と光希に何かを言ってから音羽に駆けて来る。 恭の後方では、飯野が軽く頭を下げるのが見えた。 「お母さんっ」 「ふふっ、なあに恭ちゃん。沢山遊んだ?」 「はい!」 音羽に駆け寄ってきた恭は、そのままの勢いで音羽に抱きつく。 恭をしっかり抱きとめた音羽は、恭を抱き上げるとそのまま翔や光希、2人の両親のもとへ向かった。 「お母さん、お父さんは?」 「ん?お父さんはね、用事があって少しだけここを離れたのよ。だけど、すぐに戻ってくるわ」 「そうなんですか……?残念です。お父さんとも一緒に遊びたかっ
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200話

◇ 夕食は、翔と光希の家族と一緒にとった。 バーベキューの準備を音羽も恭も手伝い、飯野が食材を切ってくれる。 皆で談笑しつつご飯を食べ、あちらの家族は軽くお酒を飲む事にしたようだ。 「玉櫛さんの奥さん、ビールでも飲みますか?」 「私は大丈夫です」 有難いお誘いだが、音羽はごめんなさい、と断る。 伏見が恭のために誘拐犯に会いに行ってくれているのだ。 そんな中、自分だけお酒を飲んで楽しむなんて事、出来ない。 音羽はソフトドリンクで。 翔と光希の両親は昼間の恐怖を忘れるようにアルコールを沢山飲んでいた。 「……大分、酔いました……」 「我々は、そろそろ……」 アルコールで真っ赤になった顔で、音羽に話しかける両親。 音羽は微笑みつつ「分かりました」と告げるとキャンプ用の椅子から立ち上がった。 そして、庭先で遊んでいる恭に話しかける。 「恭ちゃん」 「お母さん!」 たたた、と走ってくる恭に音羽は頬が緩む。 「恭ちゃん、もう遅いし別荘に戻ろうか?」 「えっと……、その……」 もじもじとしている恭に、音羽は首を傾げる。 もしかして、まだ遊びたいのだろうか。 音羽は恭の手を取って、その場にしゃがみ込んだ。 「どうしたの?もしかして、まだ翔くんや光希くんと遊びたいかな?」 「──っ!は、はい。その……遊び足りなくて……」 まだ遊びたいの、駄目?と言うように見つめてくる恭に、音羽はそのあまりの可愛さに微笑んでしまう。 そうしていると、恭の後から翔と光希もたたた、と駆けてきて音羽の前にやって来た。 「恭くんのお母さん、僕たちまだ遊びたくて……。もうちょっと遊んでもいいですか?」 キラキラと期待が籠った目を向けられてしまい、音羽はそのお願いをバッサリ断る事が出来なかった。 「そうね、いいわよ」 「わぁっ!本当ですか!?やったあ!」 「恭くん、遊ぼう!」 お互い、手を繋いで嬉しそうにはしゃぐ恭と翔、光希。 その3人を優しく見つめていると、音羽の所に翔と光希の両親がやって来た。 「玉櫛さんの奥さん。もしよければ、恭くんを私たちの別荘で遊ばせますよ。もう夜中だし、外で遊ぶのは難しいので……。出来れば、今日は3人で眠らせてあげたいな、と思っていて……」 昼間の事件があったからだろう。 怖い思いをした3人だからこそ、一緒に
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