交際0日、再婚相手は元夫の弁護士です ―復縁狙いのクズ夫が詰みました― のすべてのチャプター: チャプター 61 - チャプター 70

75 チャプター

番外編14話 夫はゼロ日目から完璧なパパ

 「この子の名前だが……『人美(ひとみ)』という名前はどうかな? 俺の漢字『人』と、君の『美』だ。……俺たちの愛がこうして形になったという証を、この子にプレゼントしたいんだ」  病室でそう告げられた時、私は胸がいっぱいになった。 入院している間、悪露に悩まされ、苦しむ私を理人はいつもいたわってくれた。 仕事は完全に休んでいるから、ずっと付き添ってくれた。おかげでゆっくりさせてもらい、退院までにある程度の体が回復できた。 退院してからも、理人の溺愛ぶりはとどまるところを知らない。彼は仕事のスケジュールをすべて調整し、まるで育休を取得したかのように、屋敷にいることが多かった。無敗の冷徹弁護士は、今や完璧なパパに大変身だ。 「美都、君は横になっていてくれ。人美の世話は俺がやるから」  そう言って、理人は手慣れた手つきで人美のミルクを作る。 高価な万年筆を握っていたはずのその指先が、今は粉ミルクの温度を正確に測り、人美の柔らかな頬を優しく撫でている。オムツ替えも、お風呂の沐浴も、彼は完璧にこなす。 「どうだ、人美。いい湯加減だろう?」  お風呂上がりの人美をタオルで丁寧に包み込み、ベビーパウダーをはたいてあげるその横顔は、あまりにも優しくて、私は見ているだけで泣けてくる。 私が少しでも動こうとすると、理人はすぐさま飛んできて、ふんわりとしたクッショ
last update最終更新日 : 2026-04-24
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番外編16話 改心した義妹

  廊下の奥から現れたのは、清良さんだった。 かつての鋭く攻撃的な眼差しは消え、彼女はまるで聖女のように控えめに目を伏せていた。質素なワンピースに、ノーメイクに近い薄化粧。そのあまりの変わりように、私は息を呑んだ。 「……お久しぶりです。お兄ちゃん、美都さん」  彼女は深く頭を下げた。震える声は、いかにも心からの悔恨を滲ませている。 「以前、私の行いがどれほど二人を傷つけたか……。毎日、自分を責め続けました。このまま一生、消えてしまおうかとも思いました。でも、海淵神(かいえんしん)様が……私を許して、導いてくれたんです」  清良さんの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。その姿に、義母はたまらなくなったように、清良の肩を抱き寄せた。 「理人、清良ちゃんは本当に変わったのよ。毎日電話をもらって、あなたたちに許しを乞うていたんだから」    理人は黙っていた。彼の瞳は冷酷なまでに清良を射抜いている。けれど、清良は怯えるどころか、ゆっくりと私の方へ歩み寄ると、震える両手でなにかを差し出した。 「これ……人美ちゃんに。私、自分の罪を贖いたくて……。一生懸命、一針ずつ縫ったんです。……受け取ってもらえないでしょうか」
last update最終更新日 : 2026-04-26
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番外編17話 義妹の婚約者

  理人の拒絶に、お義母さんがハッとして声を上げる。 「理人、あなたなんてことを! 清良ちゃんは今、本当に心を入れ替えて頑張っているのよ。そんな言い方、あんまりだわ!」「母さん、甘いんだ。こいつの本質はなにも変わっていない」 「いいえ、変わったわ。……もし信じられないなら、今日このあと、神宮寺家の方々もお見えになるわ。清良ちゃんの婚約者も、彼らがどれほど清良ちゃんを大切に思っているか、あなた自身の目で確かめなさい!」  お義母さんの庇護は、清良さんにとって最強の防波堤となっている。清良さんは涙を拭い、健気な笑みを浮かべる。 「いいの、お母さん。お兄ちゃんが私を信じられないのは当然のこと。……私、許してもらえる日まで、何度でも謝るから」 「清良ちゃん……」 「いいの。私が悪かったんだもん。だから、お兄ちゃんを責めないで。昔みたいに仲良くしたいだけだから」  彼女は、まるで大切な宝物を失ったかのように悲しげな顔をして、義母の腕にすがりついた。義母もまた、「理人、言い過ぎよ。清良ちゃんはきちんと罪を償って改心したんだから」と、どこか不満げだ。  その時、玄関で呼び鈴が鳴った。  現れたのは、仕立ての良いスーツを纏った一人の男だった。神宮寺と名乗ったその男は、一見すると誠実そのものの好青年だった。柔らかな物腰、誰に対しても分け隔てのない微笑み。何より、理人に対しても決して腰が引けることなく、礼儀正しい敬意を払ってみせた。 「はじめまして。清良さんの婚約者、神宮寺翔太(じんぐうじしょうた)です。……今日は、彼女を支える者として、ご挨拶に上がりました」
last update最終更新日 : 2026-04-27
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番外編18話 義母の訪問

  神宮寺さんはお義母さんとの会話の端々に「海淵神(かいえんしん)」の教えを挟み込み、清良さんの献身ぶりを美談として語った。  彼は言葉遣いも礼儀正しく、理人の冷ややかな視線さえも「お兄様ゆえの厳しさですね」と微笑みで受け流す。そのあまりの完璧さに、お義母さんの信頼は不動のものとなっていった。 「理人、あなたも見習いなさい。人美ちゃんの健やかな成長のためにも、周囲と調和を保つことが大切よ」   彼女の言葉に理人は唇を噛むしかなかった。今ここで両親との対立は避けなければならない。反論しないから、神宮寺さんはさらに饒舌に語った。  食事を共にし、その日の夜。私たちは義実家を後にした。  帰りの車中、理人はハンドルを握りながら低く唸った。 「……気に食わないな」 「神宮寺さんのこと?」 「ああ。あの男、終始こちらを観察していた。清良への愛など微塵も感じない。……まるで、何かを品定めするような目だ」    理人の本能的な拒絶を聞き、私も安堵した。私だけが異常を感じているわけじゃない。 「何者か調べてみる」「素行調査ってこと?」「まあ、そういうことだ。別に問題ないだろう。清良を母さんが受け入れている以上、俺たちにも関りが発生するんだ。ほんとに……厄介なことになった」
last update最終更新日 : 2026-04-28
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番外編19話 嵌められた美都

  「美都さん……っ! 大変です! 今、お義母さんを車で送ってきたのですが、屋敷に到着して突然、お義母さんが体調を崩されて、ひどい目眩と吐き気を訴えて……っ!」  私の心臓が大きく跳ねた。 「えっ……お義母さんが? どこですか、今どこに!?」「屋敷のすぐ裏手に停めた車の中です! ……もう意識が朦朧としていて、屋敷に運ぼうとしたのですが、僕の力だけではできなくて……っ! お願いです、美都さん! 力を貸してください!」  神宮寺さんは焦燥に駆られた様子で、屋敷の裏手へと続く小道を指差した。 そんな、どうしよう……。安易に来てもらおうと思ったのがいけなかったのね。 もしお義母さんになにかあったら……。私は人美を抱いたまま、慌てて彼に続いた。 「救急車はもう呼んであります。あと5分ほどで来てくれるようです」「ありがとうございます。とにかく今は、お義母さんの様子を!」  神宮寺さんは早足で裏庭の茂みへと走っていく。言われるがままに追った先、木々に隠れるように一台の高級車が停車していた。 確かに後部座席で、誰かが苦しそうに身体を丸めているのが見える。 「お義母さん!」  私は迷わずその車へ
last update最終更新日 : 2026-04-29
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番外編20話 追い詰められた美都

  冷たい床の感触と、鼻をつく埃の匂いで意識が浮上した。 全身がずっしりと重く、動かそうとすると手首と足首に食い込むロープの感触に気づく。私はどこか廃屋のような場所に縛り付けられていた。  朦朧とする頭で周囲を見渡すと、そこには恐ろしい光景が広がっていた。  私のすぐ傍らには神宮寺さんが立っていた。――ああ、もうこの男や清良に敬称なんかいらないわ。 彼は先ほどまでの紳士的な佇まいをかなぐり捨て、冷酷な目で私を見下ろしている。 「よく眠っていたね。あんたの主人が血相を変えて屋敷に戻ってくる頃には、君はもう蹂躙された後だ」  神宮寺が合図すると、影から屈強な男たちが数名現れた。彼らは獲物を値踏みするような卑猥な視線を、私に這わせてくる。  彼は男たちが飢えた獣のように私を囲んでいるのを見て満足げに目を細めた。神宮寺はゆっくりとジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを緩めながら私に歩み寄る。   「まずは俺がやる」    彼は私の顎を無理やり掴み上げ、その卑劣な顔を至近距離まで近づけてきた。彼の吐息からは、不快な煙草と傲慢な匂いがした。 「神宮寺さん、そのあと、俺たちにも回してくださ
last update最終更新日 : 2026-04-30
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番外編21話 お母さんが守るから

  清良が人美を抱えて近づいてくる。その腕の中で人美は状況を察したのか、か細い声で泣いた。 「あらあら、お義姉様。あなたが抵抗するたびに、この子をどうするか……ちょっと考えちゃうわね」  清良はさらにニタッと歪んだ笑みを深めると、人美の柔らかい足を無理やり掴み、吊るすように持ち上げた。人美の泣き声が悲痛に響き渡る。心臓が凍り付き、引き裂かれるような痛みを覚えた。 「やめて! 人美を降ろして! お願い、なんでもするから! 子供だけは助けてください!!」  泣き叫ぶ私の髪を神宮寺は容赦なく掴み、無理やり仰け反らせて人美の方を見させた。 「なんでもする?  面白い。じゃあ、お前が這いつくばって俺たちの足元まで来い。赤ん坊を助けたいなら、俺たちに懇願してみろ」  神宮寺が合図すると、周りの男たちが飢えた野獣のような笑みを浮かべて私の周囲に集まってきた。  私のブラウスは先ほど無理やり引き裂かれ、肌が冷たい空気に晒されている。男たちの卑猥な視線が容赦なく私の身体を舐め回す。  屈辱と恐怖で全身が震えた。でも、私の視界には、清良の手の中で泣き叫ぶ人美しか映っていない。  ボロボロの体を引きずり、男たちの足の間を縫うようにして、一歩、また一歩と這い出した。  泥と埃に塗れ、髪は乱れ、血が滲む顔。男たちが私の服に手をかけ、引きちぎろうと足で踏みつけてくる。痛みに意識が飛びそうになるが、私は唇を噛み締め、その激痛を糧に前へ進んだ。
last update最終更新日 : 2026-05-01
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番外編22話 阿修羅

「奥さんの携帯からの方が面白いだろ」 神宮寺が私のスマートフォンを奪い、慣れた手つきで理人の連絡先を呼び出す。  画面の向こうで、理人の焦りきった表情が浮かんだ。彼は今、GPSを追ってこの廃屋へと猛スピードで向かっているはず。でも、間に合わない。あの人は、私たちが連れ去られた時間は法廷中のはず。「……ッ! 美都!! 無事か、美都!!」 電話がつながり、画面の中で叫ぶ理人の姿を、神宮寺が私に見せつける。私は地面に這いつくばったまま、泥のついた顔をカメラへ向けた。「理人……」 清良が私の髪を後ろから強く引き上げ、カメラを固定させる。「ねえ、お兄ちゃん。今から見せてあげるわね。あなたが命をかけて愛したこの女が、別の男に抱かれているところを」 「へへっ。奥さんもお楽しみ希望だってさ」 神宮寺が私のブラウスに手をかけた、その瞬間だった。――――バァァン!!  金属の扉が火花を散らして吹き飛んだ。  煙の向こうから現れたのは、地獄の業火を纏ったような理人の姿だった。彼の後ろから黒づくめの男たちがなだれ込んでくる。中央に立った理人の瞳は冷徹なまでの静寂を宿している。  その目には、一点の迷いもない確固たる殺意が込められていた。「そこまでだ」 理人の声は、低く、重く、周囲の空気を凍りつかせた。神宮寺が驚いて振り返る。「いつの間に!?」 理人は動じない。彼は真っ直ぐに私と、私の腕の中にしがみつく人美を見つめた。その瞳に一瞬だけ、慈愛が浮かぶ。けれど次の瞬間にはまた、獲物を狙う猛獣のそれに戻った。「清良。君はほんとうにどうしようもないクズに成り下がったな」 理人が歩み寄る。その足音一つ一つが、清良を追い詰める。  手下の男がナイフを片手に飛びかかるが、理人は一瞬でその懐に入り込み、手首を折るような音と共に男を床に叩きつけた。あまりの速さに、誰も反応できない。手下は次々にSPに確保された。 やがて理人は清良の目の前に立っていた。彼女の顔は恐怖にひきつり、悲鳴すら上げられない。人美を奪い返した理人は、そのまま人美をSPの腕へ預けると、私の前に膝をつき、上着を脱いで私を包み込んだ。「……遅くなってすまない、美都。もう大丈夫だ。よく頑張ってくれたな」「理人……」「美都や人美を傷つける奴は、俺が許さない」 私を抱き上げた理人の顔は、阿修羅の顔に
last update最終更新日 : 2026-05-02
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番外編23話 阿修羅の裁き

 「お兄ちゃん、待って! 誤解なの! 私は神宮寺さんに脅されて……!」 清良が醜く這いつくばり、理人の足元に縋り付こうとする。だが、理人はその手を汚らわしいものを見る目で一蹴した。「誤解? 配信までしようとしておいてか。清良、君は昔から詰めが甘い。……清良が信奉していたその男、神宮寺の正体を教えてやろう」  理人が指を鳴らすと、SPの一人が神宮寺の顔面を無造作に掴み、無理やり顔を上げさせた。 「神宮寺翔太。本名、佐藤一夫。大学中退後、女性への暴行で前科二犯。……お前がエリート婚約者として紹介したこの男は、インチキ宗教の教祖になりきったマルチ商法で荒稼ぎする、ただの詐欺師だ」「な……っ!? なにを言って……」「ぜんぶ知っているんだ。隠すことは無い」「お、お義兄さん、それはプライバシーの侵害というものですよ。僕は……」「黙れ。その口で二度と俺のことをお義兄さんなどと呼ぶな。……神宮寺。お前、さっき美都になにをしようとした?」  理人の冷徹な問いに、神宮寺はガタガタと震えながら、後退りした。 「ひっ……いや、これは……遊びで、ただの余興です……!」「余興か。ならば、俺も余興を楽しませてもらおう」 理人が合図すると、背後の黒ずくめの男たちが、大きなモニターと機材を運び込んできた。 「神宮寺、お前は女性を騙し、ハメ撮りした動画で脅すのが趣味だったな。お前のクラウドデータにあったデータは俺が回収した。あと、お前が最も恐れているスポンサー……お前の借金を肩代わりしている闇組織の連中にも、お前が彼らの女に手を出していた証拠を添えて、今この瞬間に送信し終えた」「な……っ!? やめろ! それだけは……殺される!!」 神宮寺の顔から血の気が引き、土下座して床に額を打ち付ける。だが、理人の怒りはそんなものでは収まらない。「殺される? 甘いな。死なせはしない。……お前がこれまで女性たちにしてきたこと、そのままお前が味わう番だ。俺が顧問を務める海外の非合法な強制労働施設へ、お前を商品として売り渡した。そこでは、お前のような男を好む連中が待っている。……一生、搾り取られながら地獄を這いずり回れ」「そ、そんな……」 隙を見て逃げ出そうとしたけれど、SPに押さえつけられ、結局彼はその秀麗な顔を地面に擦り付けられていた。「連れて行ってくれ」「やめろ触るなぁぁ――
last update最終更新日 : 2026-05-03
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