ナディアがユトの名前を呼びかけると、彼がふわりと笑った。そうすると気品に満ちてはいたが、少し近寄り難かった雰囲気が柔らかくなって、人懐っこさが増した。「嬉しいです。覚えていてくださったんですね」「前髪が短くなっているのを見るのは初めてですけど、わかりますよ。かなり印象が変わりましたね!」 ナディアも朗らかな笑顔で返す。 以前のユトは、本当は強いくせにどこかオドオドしていて、自分に自信がないのが丸わかりだったが、今は違う。瞳が隠れるほどに伸ばしていた前髪を切ったことで、外見の印象がかなり変わったこともあるが、彼のこの変化は内面からくるものも多分にあるだろと思った。 首都から離れた後に新聞で知ったが、ユトはアンバー公爵家の次期当主になったシャルロットと結婚していた。ユトが変わったのはシャルロットと伴侶となれた影響がかなりあるのではないかと思う。 ユトには全体的に余裕が生まれていて、彼自身が現在とても幸せであることが全身から伝わってくる。彼の左手の薬指に光る指輪もまぶしい。 美しくなるのは、内面も外見も、きっと両方大事。「そんな、立派だなんて私はまだまだです。将来に渡ってきちんとシャル様のお役に立てるように、今必死で勉強をしている最中なんです」 謙遜はするが、それは卑屈とは違う。彼の自信は揺らいでいないように思えた。ナディアが最後にユトを見てから一年の間に、彼が積み重ねてきた努力に裏打ちされているのだろうと思う。 ユトは以前シャルロットのことを「お嬢様」としか呼んでいなかったと記憶しているが、現在は愛称呼びのようだ。そのことからもこの一年での二人の関係性の変化が見て取れる。「あの、シャルロット様は――」「すみません、シャル様はナディアさんには会わないと言っています」「あ…… そう、ですよね……」 なぜここにいるのかは不明だが、とにかくナディアが現在いるのはアンバー公爵邸のようだ。シャルロットの家にお邪魔しているのなら、一言くらい挨拶した方がいいのではないかと思って彼女の名を口にしたが、ユトは申し訳なさそうにしつつも、はっきりとシャルロットの意向を伝えた。 ユトがナディアに対して友好的なので忘れかけていたが、人間と偽り首都にいた頃とは状況が違う。ユトはナディアの本名を知っていたので、彼女が獣人であることはユトもシャルロットも
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