Semua Bab 元夫の後悔をよそに、天才妻は御曹司と溺愛婚: Bab 11 - Bab 20

100 Bab

第11話

「何を待つの?新しいチップのこと?」日和の目がぱっと輝いた。「竹内グループで開発に成功した人がいるの?」「いや」「ふーん……」日和は小声で、「使えないお兄ちゃん」と悪態をついた。「いい加減にしろよ」海斗が冷たい視線を送ると、日和は慌てて逃げ出した。そしてすぐに両親の腕の中に飛び込んで、えーんえーんと嘘泣きを始めた。それを、両親はそばで笑っていた。「せっかく海斗が帰ってきたんだから、毎日けんかばかりしないの」「ちぇっ、誰がけんかなんて。お兄ちゃんが急に帰ってくるなんて、絶対ろくなことじゃないわ」日和は目を細めて言った。「何かやらかしたんでしょ?早く言って!」海斗は微笑んだ。「バイオニック・ロボットの研究、続けたいか?」「お兄ちゃん!あなたは世界で一番最高のお兄ちゃんだよ!お兄ちゃんが帰ってきたのは、父さんや母さん、おじいちゃんたちに会いたかったからでしょ?なんて親孝行なの!」日和の態度は百八十度変わった。海斗は辺りを見回した。「千佳さんはいないのか?」海斗の父親・竹内隆(たけうち たかし)は三人兄弟の二番目で、姉と妹がいる。姉はB市に嫁ぎ、妹の千佳は実家にいる。暇なときはいつも観劇に行くのが趣味だ。海斗の叔父夫婦は、子供の留学に付き添って海外暮らしだ。聞こえは皆それぞれ穏やかそうだが、実際のところは、毎年の株主総会では誰よりも鋭い意見をぶつけ合う。「仕立て屋さんが来てるの。千佳さんの新しいドレスの採寸をしてるのよ」と日和が言った。「お兄ちゃん、千佳さんに何か用?」「少し聞きたいことがあってな」「私に聞きたいことって何かしら?」そこへ、ドレスを着た千佳が現れた。髪もきれいに結っている。「千佳さん」海斗は軽く頷いた。「俺の部署の社員が急に辞めると言ってきまして。彼女はあなたの紹介で入社した子ですが、辞めることは聞いていますか?」その場の皆が、きょとんとした。海斗がここ一年、社内のコネ入社を厳しく取り締まっていたことは家族全員が知っていた。それなのに、身内が紹介した社員がいて、しかもその人が急に辞めると言うのだ。誰だって、何か裏があるのではと考えてしまう。千佳はしばらく考えたが、誰のことかまったく思い出せなかった。海斗が言った。「谷口凛です」「凛ちゃん?」千佳は、しばらくしてようやく思い出した。
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第12話

夜。部屋のドアが閉まる。智也は部屋に入るなり、凛に問い詰めた。「どうして出前のもので済ませたんだ?」ネグリジェを探していた凛の手が止まる。彼女はスカートを避け、ズボンを手に取った。「出前って何のこと?」「今夜の料理は、お前が作ったものじゃない」智也は言った。「4年間もお前の手料理を食べてるんだ。味でわかる」自分が4年間も食事を作ってきたこと、ちゃんと覚えてはいたのね。凛は心の中で冷たく笑った。「すごいじゃない」彼女の口調は淡々としていた。「グルメレポーターにでもなれるわ」その言葉は、智也にはあからさまな皮肉にしか聞こえなかった。「なんでそんな顔で、そんな言い方をするんだ?凛、お前は昔、そんなんじゃなかっただろ」「私は昔からこうよ」凛は、怒りに燃える智也の目を見つめた。なぜ彼がそんなに怒るのか理解できない。初恋の人と同じ屋根の下で暮らすことを許してあげてるのに。「でも、付き合い始めてから結婚して今まで、お前はそんなんじゃなかった」智也は、凛が傘を差しだした時のことを今でも覚えている。雨の中に咲く白木蓮のように、彼女はふわりと微笑んだんだ。史哉の葬儀に付き添った時、自分の肩に寄りかかってきたあのぬくもりも。児童養護施設に一緒に帰った時、水を渡してくれたあの太陽みたいな笑顔も。特に結婚してからの4年間、仕事から帰るといつもキッチンで忙しく動きまわる姿があった。そして、自分に気づくと必ず振り返るんだ。甘くて優しい声で、「おかえり」と囁くように言ってくれた。ちょうど料理を盛り付け終わったところだと、待ちきれない様子で駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きしめてくれたこともあった。凛の目はいつもキラキラしていて、自分が彼女の料理を食べるのを楽しみにしていた。凛は他人の前ではどんなにクールでも、自分にだけは優しくて思いやりがあった。自分の両親には、なおさら親孝行して聞き分けが良かったのに。どうして最近、変わってしまったんだ?凛はまるで、他人行儀な態度で自分に接する。自分たちは、れっきとした夫婦のはずなのに。「凛、もしこれが、仕事を辞めて妊活に専念しろって言ったことへの抗議のつもりなら、容赦しない」智也は言った。「使用人を雇って、ついでにお前の体の面倒も見させることができる。両親はずっと孫の顔が見
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第13話

「もう終わったことだから。気にしないで。お前を責めるつもりはないよ」柚葉は、いきなり智也に抱きついた。智也はずっと部屋のドアを見つめていた。明らかに緊張している様子だ。「少しだけ、こうさせて。ただの友達のハグだから」柚葉は、涙を浮かべながら顔を上げて言った。智也はため息をついて、彼女が抱きつくのをされるがままにしていた。「手が痛いの。あなたからも、抱きしめてほしい」智也はゆっくりと手を上げると、柚葉の背中を優しくぽんぽんと叩いた。けれど、そのドアが内側から開くことはなかった。凛には、聞かなくてもわかった。智也がまた柚葉に優しくしているのだろう。胸が、またチクチクと痛んだ。胸の痛みよりも、今は智也に抱かれるのをどうやって避けるかが問題だった。これまでは、タイミングよく柚葉が邪魔をしてくれた。でも、次も同じように助けてくれるとは限らない。ふと、杏のことを思い出した。……智也が部屋に戻ると、ベッドの凛はすでに眠っていた。そばへ寄って数回声をかけたが、返事はなかった。彼は諦めて、自分もベッドに横になった。そして、寝返りをうつと、凛を自分の腕の中に引き寄せた。もう2週間以上、こうして凛を抱いて寝ていなかった気がする。久しぶりに抱きしめてみると、なんだか猫みたいだ。ツンとしていてそっけないけど、その体は本当に柔らかくて、守ってあげたくなる。智也は、腕の中の体をさらに強く抱きしめた。そのせいで凛は、一晩中ぐっすり眠れなかった。浅い眠りの中、背後で少しでも物音がすると、はっと目が覚めてしまうのだった。翌朝早く、歯を磨いて顔を洗っていると、理恵からメッセージが届いた。【凛さん、退職日までまだ日数があるから、ちゃんと出社してもらわないと困るのよ。事務処理が進められないから】凛にとっては願ったり叶ったりだった。彼女はいつものトートバッグを肩にかけて、家を出た。「おはよう、凛さん」ドアのそばに立っていたのは柚葉だった。だるそうにあくびをする姿は、まるでこの家の女主人のようだった。凛はちょうど、玄関で靴を履き替えているところだった。「もう会社に行くんですか?」柚葉は彼女に近づいて言った。「みんなが憧れる竹内グループですからね。あなたはただの事務かもしれないですけど、それでも残れたらすごいことじ
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第14話

凛は朝食を食べようと商店街を歩き回り、結局定食屋に入ることにした。塩味がちゃんとする焼き鮭に、お豆腐の味噌汁。彼女はしょっぱいものが大好きだけど、智也のために、この4年間ずっと薄味の食事で我慢していた。何年も食べていなかったせいで、普通の焼き鮭でも、すごく美味しく感じた。でも、やっと食べた気がした。ご飯をたいらげると、ゆっくりと会社に向かった。手に持っていたコーヒーを飲みながら歩いていると、うつむいた瞬間に、走ってきた誰かに勢いよくぶつかられた。凛は、たいして影響はなかった。むしろぶつかってきた女の子のほうがよろけてしまって、手に持っていた書類が宙に舞った。凛はとっさに彼女の腕をつかんで引き寄せ、腰を支えてあげた。「大丈夫?」日和はぱちぱちと瞬きをした。目の前には、片手にコーヒー、もう片方の手は自分の腰に回している女性。フレームのない眼鏡に、低い位置で結んだポニーテール。飾り気のない、整った顔立ち。どこか冷めた表情をしている。まさに、クールな研究者タイプの美人。一目見ただけで研究者だってわかる。特に、手首の力が強くて、きっと研究室で重い機材とかを運ぶのに慣れてるんだ。「大、大丈夫」彼女は体勢を立て直すと、地面に散らばった資料を見て、急いでしゃがみこんで拾い始めた。凛も一緒に拾おうとかがんだ時、ふと、ある書類に書かれた一連のデータに目が留まった。日和は必死に資料を拾い続けた。でも一番大事な数ページが見つからなくて、振り返ると、さっき助けてくれた凛の手にあったので、すぐに受け取った。「綺麗なお姉さん、本当にありがとうございます!ちょっと急いでますので、先に失礼します!」数歩、歩いたところで彼女は振り返った。「そうだ、お名前は?お兄ちゃんに会った後、お礼にミルクティー奢ります!」目の前の女の子が太陽みたいに笑うので、凛はつい本名を名乗ってしまった。「谷口凛です」「分かりました!では、また!」日和は手を振りながら走っていった。少し離れた場所で、理恵は日和の後ろ姿と凛の顔を、いぶかしげに交互に見ていた。凛は社長の叔母からの紹介っていうだけじゃなくて、グループの令嬢とも知り合いなの?しかも社長から直々にご指名で社長室に呼ばれてる。ただ者じゃないわね。「凛さん」理恵は笑顔で近づ
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第15話

「谷口凛」という名前を聞いて、海斗の眼差しがふと止まった。彼は受話器を手に取り、内線をかけた。すると、拓海が電話に出た。「彼女は来たか?中に通してくれ」「谷口さん、社長がお呼びです」拓海はそう言うと、社長室のドアを開けた。凛は、一人で部屋へと足を踏み入れた。背後でドアが閉まった。振り返ると、突然、聞き覚えのある声がした。「綺麗なお姉さん?!」凛が振り向いて顔を上げると、デスクのそばにさっき1階で慌てていた女の子が立っていた。そして椅子には、黒いシャツを着た男性が座っていた。黒いシャツに赤いネクタイ。腕には、ボーナスが出たら智也に買ってあげようと思っていた時計と同じブランドのものが着けられていた。彫りの深い顔立ちの男性が、彼女をじっと見つめていた。なんだか、この人も見覚えがあるような気がした。でも、どこで会ったのかは思い出せなかった。竹内グループの社長なのだから、きっとどこかの経済誌で見かけたのだろう。「社長」「綺麗なお姉さん!」日和が駆け寄ってきて、手元の資料を凛に見せた。そして丸で囲まれた部分を指差しながら、「これ、あなたが印をつけてくれたところですよね?」と尋ねた。凛は頷いて、「凛さんって呼んで」と言った。「お名前は知ってます、凛さん!ありがとうございます!すっごく助かりました!お兄ちゃんよりよっぽど頼りになります!凛さ……ん?凛……」日和はそこではっと我に返ると、勢いよく兄を振り返った。「この人、昨日の夜お兄ちゃんが……」「コホン」海斗が軽く咳払いをすると、日和はぱちりと目を瞬かせ、口をつぐんだ。凛は、この兄妹の様子がなんだかおかしいなと思った。「凛さん」海斗は立ち上がると、妹の手から資料を受け取った。そして、少し顎を上げながら尋ねた。「アンドロイドには詳しいのか?」「いいえ。私はただの一社員です」海斗は、彼女の言葉を否定しなかった。「妹が世話になった礼だ。今日から、社長室で働いてもらう」凛は、呆気にとられた。日和も、目をぱちくりさせている。自分に、そんな影響力あったっけ?「社長、私はもう退職届を出しました」凛は思わずドアの方に目をやった。退職のことは理恵に伝えてあるはずなのに。「ああ、知っている。正式な退職日までの残り1ヶ月は、社長室で勤務して
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第16話

凛は、思い出した。ホテルのエレベーターで、行く階を押すように声をかけてくれた男の人だ。あの時は、誰かに顔を見られないように必死だった。うつむいて髪で顔を隠していたから、自分の視界も遮られていたのだ。あの日エレベーターの中で覚えているのは、ピカピカな革靴と、すらりとした背の高いシルエットだけ。彼の顔までは、ちゃんと見ていなかった。まさか竹内グループの社長だったなんて。しかも、これから自分の上司になる人だったなんて。カフェのテーブルを三人で囲む。凛は背筋を伸ばし、臆することなくまっすぐに海斗を見つめた。海斗は意味ありげに凛を見つめ、口の端を上げた。「思い出したか?」と、彼はもう一度尋ねた。凛はうなずく。「はい、思い出しました。あの時はありがとうございました、社長」「なになに、二人の内緒話でもしてるの?」日和がテーブルに突っ伏して、二人の顔を交互に見比べた。「凛さん、何を思い出したんですか?」凛は他人のこのような熱心さには慣れていなかった。でも、キラキラと輝く日和の目に見つめられると、どう返事をすればいいか分からなくなってしまう。智也の妹の胡桃もよく喋る子だったけど、ただうるさいだけだと感じていた。それに比べて、海斗の妹は、とても可愛らしい子だと思う。「社長とは、以前お会いしたことがあるんです」「ああ」と、海斗はうなずいた。日和は驚いた。「え、どこで?お兄ちゃんからそんな話、聞いたことないけど」「ホテルで」と凛は答えた。「うっそー!二人って、もしかして……きゃーっ!そうゆうことだったの!」日和は突然立ち上がり、嬉しそうに叫んだ。「お兄ちゃんについに春が来たんだ!誰か……んぐっ!」彼女の口が、大きな手で塞がれた。海斗が、有無を言わさぬ視線で妹を黙らせた。日和は不満そうにうなずいた。「落ち着いて座れ。いつもそそっかしくて」と海斗が厳しく言った。「はーい」と日和は座り直し、こっそり凛に耳打ちした。「凛さん、お兄ちゃんは表向きは怖そうに見えるでしょ?でも、本当は……裏でも怖いんです」凛は思わずクスっと笑ってしまった。「だから、お兄ちゃんってモテないんだよ。両親が必死でお見合いさせようとしてるのに」凛は特に相槌を打つこともなく、静かにミルクティーを飲んでいた。まるで周りの騒がしさ
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第17話

「スマホを買い換えるお金もなくて。全部、生活費に回してたから」「ご家族は幸せでしょうけど、あなた自身は全然幸せじゃなさそうです」日和は口をとがらせ、悲しそうな顔をした。まさか自分より若い子に心配されるなんて。凛は少し驚いたけど、心は温かくなった。黙って話を聞いていた海斗が、ふいに口を開いた。「谷口社長はたかが数万円のスマホも買えないのか。家計も火の車だとは。ホシゾラ・テクノロジーはとんだブラック企業だな」凛は思わず表情をこわばらせた。海斗は、自分のことを調べたんだ。「日和さん、ミルクティー、ご馳走様」彼女は立ち上がり、海斗に向き直った。「社長、私の仕事内容について教えていただけますか」「森田が説明する」「わかりました」凛は部屋を出ていった。海斗は背もたれに寄りかかり、ミルクティーを一口飲むと妹に釘をさした。「次はアイスコーヒーを頼むな」「でも、飲み慣れてるんだもん」日和は口をとがらせた。「これが一番、目が覚めるの。研究者にとっては必須アイテムなんだから。お兄ちゃん、さっきの谷口社長って誰のこと?凛さんを怒らせちゃったんじゃない?」「大人のことに子供は口を出すな」海斗も立ち上がり、大股で部屋を出ていった。日和は呟いた。「足が長いからって偉そうに。どうせ凛さんには追いつけないくせに」ガッ。閉まりかけたエレベーターのドアに、すっと手が差し込まれ、凛はびくっとした。ドアが再び開くと、海斗が何食わぬ顔で乗り込んできた。凛はそっと横にずれた。「社長」「ああ」海斗は凛を横目でちらりと見た。彼女がうわの空なことに気づいたが、それ以上は何も聞かなかった。凛も黙ったまま海斗の後についてエレベーターを降りた。すると拓海がやって来て、彼女に仕事内容の説明を始めた。主な仕事は、海斗のスケジュール管理だ。会議や出張、提携先とのやり取りまで多岐にわたる。凛にとって、それらはなんてことない仕事だった。拓海が海斗に報告した。「谷口さんは、仕事の覚えがとても早いですよ」「ああ」海斗はふと何かを思い出したように顔を上げた。「普通の雇われ社長の年収はいくらぐらいだ?たとえば、ホシゾラ・テクノロジーの谷口社長とかな」拓海は黙り込んだ。社長は、まさか本気で他人の妻を奪うおつもりでは……「相場は数百万から
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第18話

昼休みに入る前、凛はノートパソコンを抱えて部屋に入り、海斗の前に置いた。「社長、できました」海斗は少し驚いた。「もうできたのか?」「はい。写真を撮って、識別して、データをグラフにしただけです」凛は平然と答えた。研究所のデータに比べたら、ずっと簡単だった。海斗はパソコンの画面に表示されたアイコンに目を落とした。データがグラフ化されているだけじゃない。分析や今後の対策までまとめられている。「人並みだって?」彼は顔を上げて聞き返した。凛はうなずいた。「はい、人並みです」海斗は言葉を失った。やはり、凛はただ者ではないと確信した。「君は二宮先生の教え子だろう。それなのに、どうして竹内グループの事務職なんかに甘んじている?」海斗は立ち上がると、凛の周りをぐるりと歩いた。そして、突然腰をかがめて彼女に顔を近づけ、鋭い眼差しで尋ねた。「誰のために動いている?」耳元で聞こえる声は低く冷たいのに、吐息は熱を帯びているようだった。「叔母の千佳さんか?それとも、ホシゾラ・テクノロジーの谷口社長か?」尋ね終えると、彼はゆっくりと体を起こし、いつもの表情に戻った。「竹内グループがIT分野に参入して以来、ホシゾラ・テクノロジーはこの業界での最大のライバルだ。谷口社長は、うちの部下から何度もプロジェクトを横取りしていった。彼は先見の明があって、業界の動向を読む嗅覚が鋭いと聞いている。投資すれば必ず成功させる、と。君は谷口社長と結婚するとすぐに竹内グループに入社した。だが妙だな。ホシゾラ・テクノロジーの谷口社長が結婚していることは、誰も知らないようだが」凛の経歴を調べ、拓海に直接調査させなければ、海斗も知らなかっただろう。IT業界の風雲児と呼ばれる智也が、4年も前に結婚していたなんてな。「これほどまでに隠しているのは、どうにも怪しい」海斗は凛の表情をじっと見つめた。しかし、彼女の顔に浮かんだのは、ほんの少しの驚きと嘲笑だけだった。「俺の言ったことは間違いか?」凛は彼を見た。「ええ、間違っています」智也はもともと、心から愛して結婚したわけじゃない。公表するはずがなかった。「社長、考えすぎですよ。智也は、私が竹内グループでスパイをできるほどの人間だなんて思っていません」智也は彼女のことを、まったく評価していなかった。
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第19話

4万円のじゃなくて、10万円のものを。デスクに戻った凛は、水を飲もうとして、今朝タンブラーを持ってくるのを忘れたことに気がついた。一つは家に、もう一つは研究室に置きっぱなしだった。給湯室には紙コップがあった。凛は紙コップを手に取って、初めて目の前の設備に気づいた。コーヒーメーカー、ウォーターサーバー、そしてジューサーまで置いてある。冷蔵庫にはカットされたフルーツがきれいに並んでいた。その時、凛のすぐ横からすっと手が伸びてきて、冷蔵庫のドアを開けた。凛は少し横にずれて顔を向けると、そこに立っていたのは海斗だった。彼はぶどうをさっと洗うとジューサーに入れ、スイッチを押した。あっという間に、搾りたてのぶどうジュースが出来上がった。ちょうど、グラス二杯分だった。海斗はグラスを一つ、凛の前に押し出した。そしてもう一つを自分で手に取り、喉を潤した。「やり方は覚えた?」「え?」凛は目の前のぶどうジュースをぼんやりと見つめた。甘くて爽やかな香りが鼻をくすぐる。「やり方を覚えたなら、これからは自分でやれ。手伝うのは今回だけだ」と海斗は言った。凛は、「できます」と言いそうになった。ただジュースを作るだけじゃない。フルーツのカットだって得意だ。「甘さが足りなければ、あそこに砂糖がある」海斗が視線で教える。「ありがとうございます、社長」凛はジュースを手に取りながら答えた。「甘いのは、あまり好きじゃないです」「じゃあ何が好きなんだ?」海斗は何気ないふりを装って聞いたが、その視線は凛の横顔から離れなかった。彼女はいつも、心ここにあらず、といった様子だ。「辛いものです」凛は顔を上げ、きっぱりと言った。「すごく辛いのが好きで、おせんべいとかも、唐辛子味のを選ぶくらいです」海斗はわずかに眉を上げると、何も言わずにその場を去った。凛は海斗の広い背中を見送りながら、この男には裏表があると感じた。午前中はあれほど自分を問い詰めて疑っていたのに、昼休みには何事もなかったかのように甘いものが好きか、辛いものが好きかなんて話をしているのだから。凛はデスクに戻り、短い昼休みをとった。2時半から午後の業務が始まった。秘書の仕事は彼女にとって特に難しいものではない。指示通りにこなし、時には予定より早く終わらせることすらあった。
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第20話

智也は、にこやかに手を差し出し言った。「竹内社長」隣にいた人が楽しそうに言った。「竹内社長と谷口社長は、以前からお知り合いだったのですね」「いえ、お会いするのは初めてですが、お噂はかねがねです」海斗はそう言いながら、ちらりと凛に目をやった。凛には、その意味が分からなかった。他の人が海斗の椅子を引くのを見て、凛は自分の気が利かなかったことに気づいた。でも、もう手遅れだった。海斗が席に着くと、他の人々もようやく腰を下ろした。彼は凛を見て、隣の椅子を軽く叩き、何でもないように言った。「ここに座って」その仕草に、その場にいた全員が注目した。元々、海斗の隣に座るはずだった重役が、さっと席を譲った。普段着にトートバッグというラフな格好で、こんな席に来るなんて。この秘書がただ者じゃないのは明らかだった。「竹内社長が新しく雇った秘書の方ですか?」と、誰かが興味深そうに尋ねた。智也は、鋭い視線で、二人を、特に凛を睨みつけていた。会社を辞めるんじゃなかったのか?なのに、どうして海斗の秘書なんかになっているんだ?凛は自分を騙したんだ。「総務から引き抜いたんだ」海斗は面白そうに、智也と凛の二人を見比べた。智也が怒りに燃えているのに、凛はまるで他人事のように落ち着き払っていた。どうやら夫婦仲はうまくいっていないようだ。また別の誰かが尋ねた。「竹内社長の新しい秘書さんは、何とお呼びすればいいですか?」「苗字は谷口です」智也が、凛が口を開く前に口を挟んだ。質問した人は驚いた。「谷口社長と、お知り合いですか?」凛は目を上げて、智也がどう答えるのか見守った。「ええ、知り合いですよ」智也は笑顔でそう答えた。ただ、それだけだった。それ以上、付け加える言葉はなかった。凛は伏し目がちに、嘲るような笑みを浮かべた。やはり、智也は自分が目の前にいても、人前で二人の関係を認めることはない。でも、もういい。もうすぐ離婚するのだから。「そうなのか?」海斗は、凛に問い返した。凛は頷いた。「はい、知り合いです」海斗は意味ありげな眼差しで、ぽつりと呟いた。「奇遇だな」会食の席で、誰もが凛に非常に親しく接していた。そして、海斗に秘書として抜擢されるくらいだから、何か特別な魅力があるに違いないと、誰もが心の中で思って
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