この電話を受けた瞬間、凛の全身から血の気が引いた。自分は、智也の卑劣さと偽善を、少し甘く見ていたようだ。智也はまさに、優しさという名の刃を持つ男。その優しさの刃は、血を流させることなく、相手を傷つける。「智也、一体何考えているわけ!」凛は研究室の外にいたが、周囲には人が行き交っているため、怒りを押し殺しながら声を落として問いただすしかなかった。「別に何かをしようってわけじゃないさ。ただお前と話をしたいだけ。なあ、話を聞いてくれないか?」智也の声はひどく優しく、むしろ懇願しているようにさえ聞こえる。「凛、内容証明書は受け取ったよ。6日前に届いてた。かなり婉曲的な書き方だったけど、竹内社長に教えてもらったのか?お前には言っただろ?あの男は卑怯だから、一緒にいるとろくなことにならな……」「智也、今一番卑怯なのはあなただから」そう言って、凛は通話を切った。表面上は冷静に見える凛でも、その内側では溶岩のような怒りが煮えたぎっていた。どれだけの冷風でも、その熱を冷ますことはできないだろう。凛は感情を抑え込むため、何度も深呼吸をする。しかし、すぐさま智也からショートマールが届いた。【凛、明日10時に待ってるから。康平は今、岡田という姓を名乗っていて、今は親戚の家で暮らしている。暮らしはあまり良くなくて、学校にも通わせてもらっていなかった。でも、俺が学校に通わせる手配はしたから。詳しいことはまた明日、直接会って話すよ】一見すると何の害もない文章だが、その中には巧妙な意図が隠されている。智也が康平を学校へ通わせた以上、「監禁」や「誘拐」として扱うことはできないため、警察も介入できない。では、康平はどこの学校に通っているのか?それを知っているのは智也だけ。知りたければ会いに行くしかない。もし会いに行かなければ、智也が康平に何をしでかすか……その先は未知の世界だ。智也は、凛の康平への情を利用して賭けに出ている。これまで毎年、施設へ戻ってきていたのは、凛ただ一人で、施設を巣立った人たちはたまに顔を出す程度。だからこそ、子どもたちは皆、凛によく懐いていた。康平は特別に凛が可愛がっていた子どもでもなければ、一番気にかけていた子というわけでもない。それでも、凛が自分の連絡先を康平に渡し、何度も迷惑電話がかかってきていたにもかかわ
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