父さんは妹の父親でもある恋人と別れた。 いくら好きでも、拉致監禁する人とはこの先一緒にいたくないと父さんは話していた。病院のベッドで、涙を流しながら決意を語る父さんの横顔が忘れられない。妹のゆりを抱いて、これからは一人で育てると宣言した父さんの声は震えていたが、強かった。 そういうことなら、と鷹臣さんは、父さんの恋人を容赦なく遠い所へと送ったらしい。 確実に稼げる厳しい場所らしいが、僕たちには教えてくれなかった。どこに送られたのか聞いても、鷹臣さんは「知らないほうがいい」と言うだけだった。北の方だという噂を鉄平さんから聞いたが、本当かどうかはわからない。 父さんは生活費を稼ぐために、ホストに復帰した。 産後の体調が戻ってきたタイミングで、以前働いていた店に相談したらしい。店長が快く迎えてくれて、すぐに復帰が決まった。夜の仕事だから、ゆりをどうするのかと聞いたら、二十四時間営業の保育園を探してどうにかすると話していた。僕が預かると言うと、夜泣きもまだあるからと一度は断られた。 まだ生まれたばかりのゆりを保育園に預けるのが、僕にはどうしても我慢できなくて、もう一度父にお願いをした。 そしたらやっと父が頷いてくれて、父が仕事の日は僕が預かることになった。 夜になると、父さんがゆりを連れてくる。 鷹臣さんのマンションに父さんが現れて、ゆりを僕に預ける。哺乳瓶やおむつ、着替えは鷹臣さんが一式揃えてくれていて、僕の部屋にベビーベッドも用意されていた。父さんは「ごめんね、柊。よろしくね」と頭を下げて、仕事に向かっていく。 四ヶ月になったゆりは、夜中に一回から二回ほど夜泣きをする。大抵は、ミルクで飲み終わるとすぐに寝てくれた。 ベビーベッドでは寝てくれずに、僕のベッドで一緒に横になるとすやすやと気持ちよく寝てくれるいい子だ。 ゆりを預かるようになってお預けの日々が続く鷹臣さんだが、意外と機嫌がそこまで悪くはない。 ある夜、ゆりと一緒にベッドで眠っていると、ドアが静かに開く音がした。 薄目を開けると、鷹臣さんが部屋に入ってくるのが見えた。月明かりが窓から差し込んでいて、鷹臣さんのシルエットが浮かび上がっている。ベッドに近づいてきて、僕の隣に座った。「起きてるか?」 低く囁かれて、僕は目を開けた。鷹臣さんが僕を見つめていて、欲望に染まった瞳が月明かり
Last Updated : 2026-03-27 Read more