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第44話

Auteur: るるね
last update Date de publication: 2026-04-18 22:50:33

 慎一はそれだけ言い残すと、振り返ることもなく部屋を出ていった。

 紗月は箱の中身を確かめることすらしなかった。……いや、正確には、触れることすらできなかった。

 その箱を手に取るだけで、胸の奥からこみ上げてくるような強い不快感に襲われる。

 結局、彼女はそれを部屋の隅にある、ほとんど使われていないキャビネットの一番下へと押し込んだ。

 慎一から贈り物をもらった喜びなど、欠片もない。

 見えなければ、ないのと同じだ。

 美沙子みさこから電話がかかってきたのは、それからほぼ一週間後のことだった。

 紗月がその着信に出たのは、会社の昼休みの時間だった。

 番号は登録していない。

 受話ボタンを押した瞬間も、それが母親からの電話だとは思いもしなかった。ただの営業電話か、何かだろうとしか考えていなかった。

「……もしもし」

「紗月、よね?」

 受話口越しに聞こえてきた美沙子の声は、不思議なほど老いを感じさせなかった。むしろ、どこか艶を帯びた、大人の女性特有の色香を含んでいて、現実味が薄いほどだった。

 もしかすると、もともとそういう声だったのかもしれない。

 紗月の記憶の中には、母
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