老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~ のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

78 チャプター

33.いざ勝負のとき 後編

 「マーガレット様の写真をご覧ください。クローゼットの前で背中から刺され、地面に崩れ落ちるように死んでいます。何かおかしいと感じませんか?」 マーガレットの問いに、しばらく沈黙が続く。 もとより、犯罪に関わった三人は何を言うつもりもないのだろうけれど。 「マーガレットが部屋のどの位置に居たとて、強盗に背を刺される状況は考えにくい……というのは分かったが、あまり見ていたくはない写真だ。私には他に気づけたことはない」 「そうですね。つまり、内部の犯行である可能性が高く、事件が起きたそもそもの時系列が違っていたのでしょう。侯爵夫妻が出かけて、その後にマーガレット様は殺された。それが正しい順番なのだと推測しています」 唯一答えてくれた義父に、自分の考えを伝える。 すると、急にキルエンが立ち上がった。 「はははっ! なにが正しい推理だ。この女、自分が愚かだと自分の口で証明したぞ! マーガレットは、僕と一緒に馬車に乗っていたんだ。父上、もう馬鹿の話は十分ですよね? エンヴィ伯爵、そろそろお帰りの準備をどうぞ」 ここぞとばかりにまくし立ててきた。 そう、このアリバイこそがキルエンの武器。それをこれからへし折ってみせる。 
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38.第二王子派の初仕事

  裁判の日から三日後。  ファーブリック侯爵家の空気は、表面上こそ静かだったが、その実、目に見えぬ波紋が屋敷中に広がっていた。  キルエンとモルガン夫人が罪人として連行されたという事実は、すでに王都の上流階級へと伝わっている。表立って騒ぐ者はいないものの、使者の数は増え、届く手紙の束は日に日に厚みを増していた。  お見舞いを装った探り。  心配の言葉に紛れた値踏み。  あるいは、倒れた家に手を差し伸べるふりをして、利用価値を確かめようとする卑しい打診。  そうしたものを一つ一つ受け止め、振り分け、切り捨てていくのが、いまのダグルド・ファーブリックの仕事となっていた。  その日の午後、マーガレットは屋敷の一室に呼ばれていた。  通されたのは、以前キルエンと共に初仕事を与えられたあの書斎ではなく、侯爵家当主の私的な応接室だった。執務机の代わりに低めのテーブルと長椅子が置かれ、壁際には酒棚と本棚が並んでいる。客人を構えるというより、腹を割って話すための部屋という印象だった。  すでにエンヴィがいて、長椅子の端に足を組んで座っている。  いつものように余裕ありげな顔をしていたが、その赤い瞳は、ふざけているときの色ではなか
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39.愛と悪党と第二王子

 第二王子派として動き始めてから、数日が経った。 ダグルドお父様が選んだ貴族の名前、レグス伯爵が挙げた商人の名前、それらをもとに、私はエンヴィと一緒に招待状の文面を考えていた。  喫茶ウィステリアを広げたような、けれどもっと政治の匂いがする集まり。茶会という柔らかい名前で包んではいるけれど、実際にやろうとしているのは、第二王子派の新しい金の流れを作るための下準備だ。 難しい。  でも、こういうのは嫌いじゃない。 紙の上で人と人が繋がっていく感じは、店の計画を立てていた頃によく似ている。誰と誰を同じ卓に座らせれば話が弾むのか、誰を先に招けば体裁が整うのか。そんなことを考えていると、死んだ人間だとか、生き返っただとか、自分の身に起こった異常事態を一瞬だけ忘れられた。「マーガレット、こっちの文面どう思う?」 向かい側に座るエンヴィが、インクのついた指先で一枚の紙を差し出してくる。  今日は珍しく真面目だ。髪を後ろで一つに括り、簡素なシャツの袖をまくっている。見た目だけなら、街の若い職人と言われても通じそうなほどだ。「うーん……悪くないけど、ちょっと硬いわね。エンヴィが出す招待状なら、もう少し柔らかい方がよくない? 堅苦しいと、警戒されるもの」「な
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