哲朗は疑問を抱えながらも、由樹の指示通り、すぐさまプロジェクト部へ至急の指示を出した。夜十一時。レセプションがようやく幕を閉じた。三久は車をホテルのエントランスに回して待機した。哲朗は接待でかなりの酒を飲まされていたため、由樹がそのまま彼を上の階の客室に泊まらせるよう手配した。エントランスから姿を現したのは、由樹と千歳のふたりだけだった。三久は素早く運転席から降りて、後部座席のドアを開けた。彼女はすでに、あのドレスから元の仕事着へと着替えていた。黒のタイトスカートにシンプルな白いシャツ、襟元には唯一の装飾であるピンクダイヤのピンが一つだけ光っている。急いで車を降りたためコートを羽織り忘れており、冷たい夜風が吹き抜けてシャツの襟元が大きく開き、華奢な鎖骨があらわになった。千歳の胸の中で、どす黒い焦りが膨んだ。由樹の腕を強く引いて立ち止まらせる。「由樹さん。私、もう眠くなっちゃった」いつもなら、接待の酒を哲朗たちに任せた後は、由樹が先に彼らを送り届けてから、自分で運転して帰るのが常だった。由樹は片手でドアに手をかけた。「わかった。先に乗って」千歳を車に乗せてドアを閉めると、由樹は運転席のドアのそばに立つ三久へ向けて低く言い放った。「お前はタクシーで帰れ」「はい」三久が口を開いて返事をした瞬間、冷たい風が胸の奥へと流れ込み、体の芯までが凍りついたように冷えた。運転席側へ回り、自分のコートとバッグだけを取り出して、邪魔にならないよう脇へ退いた。後部座席の千歳が窓をスッと下ろし、嘲笑とも取れる意地の悪い顔で三久を見下ろした。「由樹さん。早坂さん、女の子なのに、こんな夜遅くに一人で帰らせて大丈夫かしら」由樹は運転席のドアに手をかけたまま、その言葉を受けて三久を無言で見つめた。凍えるような夜風の中に立つ三久の薄いシャツが体に張りつき、華奢な細い腰が暗闇に浮かび上がる。小さな顔に整った目鼻立ち。こんな深夜の路上に、こんな女が一人で立っていたら、良からぬ気を起こす輩がいないとも限らない。由樹の眉が不快げに寄った。上司として、夜更けに三久を一人で残していくことに、良心が咎めているようだった。しかし――三久は彼を見ることもなく、あっさりと微笑んだ。「村上さん、ご心配なく。すぐにタクシーを呼
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