僕だってチートがあれば苦労なんてしていない のすべてのチャプター: チャプター 81 - チャプター 90

116 チャプター

水の確保は大事なことよ

「場所は決めてるんだけど、ちょっと迷ってるんだ」「何を?」「大きさとか諸々……」 他の民家と差別化するってのは、曲がりなりにも民主主義国家で生きた前世の知識が「それはどうか?」と自問してくるんだけど、封建的王国で世の中が乱れていることを考えると歴史オタクとしての前世がこれまた囁いてくる。「それより倉庫の方が優先順位高いだろ?」「今年の冬もこの小屋で過ごす気か?」「ん? んーん……多少手直しすればもう一冬くらい大丈夫でしょ」「村長がそういうなら他にもやることは多いし?」 ジョーはちゃんと僕を村長として立ててくれる。「他で思い出したんだけど、井戸を掘り直したい」 と、鉄器生産ができるようになったらと、先延ばしにしてきた懸案事項を提案する。「村の中に水が出るのか? ならありがたいが」 ルダーがありがたがるのも当然だ。  人も増えたし、各家庭で水を使うようになったもんだから、水汲みは重要かつ重大な労働になっている。「もともとこの村には街中に井戸があったんだ。野盗に襲われて使えなくなったから埋め戻しちゃったんだけどね」「そいつはいい。村の中に井戸があれば有事の際もなにかと助かる」 それは僕も思った。  思ったけど、それって籠城するってことだぞ。「それとは別に用水路から村に水を引こうと思ってる」「なんでまた?」「んーん……なんとなく?」 いや、説明しても理解してもらえないと思ったからなんだけど。「まぁ、手段は一つより二つのほうがいい。三つ四つとあればなおさらいいけどな」「どこまで引く気だ?」 おや、興味がおありですか? ジャリくん。「中央広場まで。その後は用水路の下流域に引き戻す計画だ」「それなら、畑の近くを通してくれるとありがたい」 なるほど。  そもそも畑のための用水路だけど、そこから引き込むんならもっと便利に使うってのは悪くない。  
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復興のためにはやる事がいっぱい

「いつから始める?」 もうじき雪が降り出す。「水を引き込むのはすぐにやろう。この時期は水が少なくなる時期だから」「井戸は?」「専用の工具を作らなきゃならないからそれ待ち。あ。作るのは任せたよ、ジャリ」「どんなものか教えてくれればすぐにでも」「助かるよ」「じゃあ、武器の製作の前に工事道具を揃えてもらおう」 ルダーが皮紙にツルハシやらシャベルなどの絵を描いていく。  その中に日本の鋤鍬などの農耕具を混ぜていくのはどうかと思うけど。「一人で作れるのか?」 ジョーの懸念も判らなくはない。  結構な量になるぞ。「作る」 意固地よねー。「どれくらい日数がかかるもんかね?」 ルダーの問いにしばらく考えて出した返事が、「……十日くれ」 十日か……。  一日三本作れば十日で人数分作れる計算ってことかな?「作るだけならそれでいいのかもしれないが、使って三日でダメになるようなものはいらないぞ。畑と違って柔らかい土を耕すわけじゃないからな」 ずいぶん辛辣だな、ジョーは。「……努力する」 他に言いようないよね。  でもジャリって案外自分の力量をちゃんと理解してるよね。  むくれはしてもダメなことは自覚していて素直に認めてるし。「じゃあその間、北の森から木材を伐採してこよう」「また?」「冬の木は乾燥していて切りやすいと言われている。まだまだ大量に必要なわけだし。今のうちに村の中に積み上げとくのは悪くない案だ」 賛同ありがとう、ルダー。「雑木林の手入れは酒造りのおじさんとルダーに頼みたいんだけど」「任せておけ」「村長は何をする?」「僕? 僕はイラードとオギン連れて測量しようかな?」 水道引いたり井戸掘るためのね。
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もうすぐ春ですね

 春になった。  年始である。  冬の間に村はずいぶんと発展した。  まず僕以外の全員分の家が建った。  何人かでシェアしている家があるので二十数人で十軒ではあるけれど。  うち北東に建てられた一棟がジョーのキャラバンが使う倉庫兼邸宅だ。  ジョーのこの村に滞在するときに使う家ってことになる。  倉庫はあと二棟建てる予定でいる。  倉庫の管理としてジョーの使用人というカーゲ・ストゥラー、ベル・ストゥラー夫妻が常駐する。  また前世の記憶をくすぐる名前だ。  余談だけど夫妻にはカーゲマンと言う今年十五歳になる息子がいて、彼はキャラバンに同行するとこになっているそうだ。  サビー、イラード兄弟とガーブラは倉庫の側に建てた家で暮らすことになったし、オギンとザイーダが村長の家予定地の西隣に家を建てて暮らしている。  ちなみに僕の家は中央広場から北へ続く道の突き当たり、村の範囲を北側五百シャル削ったのでそこはある意味村はずれだ。  縄張りだけは済んでいる。  平安京をイメージしてくれると判りやすいかもしれない。  村を守る高さ十シャッケンの塀を背にした場所だ。  塀といっても丸太を地面に打ち込んでばらけないようにツナで縛っている程度なんだけどね。  この塀は村をぐるっと囲んでいて南側中央に正面門、北側東端に裏門を開けている。  北側旧村域は予定通り牧場にして今は農耕や荷運びに使っているホルスとキャラバンのホルスが放牧されている。  他にもキャラバンが商品として運んでいたクッカーという飛べない鳥をいるだけ(七羽)飼うことになった。  クッカーには簡易のとり小屋を作った。  暇を見てちゃんとした飼育小屋を作ってもらう計画だ。  ルダーとの話し合いで五十羽規模にする計画になっている。  春になってキャラバンが動き出したらジップを仕入れる計画もある。  乳を利用するのが目的だけど、食肉としてもわりかし美味い。  そういえば冬の間にメスのホルスが妊娠していてそろそろ出産予定だ。
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水回りの整備

 出産で思い出したけど、ルダーがヘレンと結婚した。  ルダーにとって連れ子ってことになるアニーもよく懐いているのでいいことだと思うんだけど、ジャリとジャスがなんか複雑そうだった。  二人が結婚したことで、ヘレンたちがルダーの家に移り住み、ヘレンたちが一緒に住んでいたクレタとカルホの家は二人の家になった。  姉のクレタでもまだ十二歳。  ルダーは二人にも「一緒に住まないか?」と誘ったんだけど断られたようだ。  用水路から村の中に水を引く事業は、塀の建設に合わせて北側の塀沿いに村の中に引き込み、村長用地を通り中央広場に池を作って溢れる水を南西に広がる畑に向かわせるルートを作った。  そんなに水量を必要としないので簡単にできた。  あ、ちなみにこの水道は僕が一人で作ったよ。  他のみんなは家建てたり塀を作ったりで忙しそうだったからね。  なあに、剣道の素振りみたいなもんだったよ。  そうなるようにちょっと加工した道具を特注したからね。  加工といえば、ジャリの鍛冶屋がなかなか上達した。  また武器の質はギリ及第点かな? くらいだけど、その成果なのか農器具工具の類はルダーが合格のお墨付きを下した。  前世知識が刀鍛冶と野鍛治は別スキルと囁いてくるのが不安材料かな?  前世知識といえばその前世知識の中から鋳造技術を教えて鉄管を作ってもらい井戸掘りを開始。  溶接技術の知識はちょっと中世レベルに落とし込めなかったんで教えられなかったんだけど、現在某TV番組で記憶した井戸掘り技術で井戸の掘削作業をしている。  掘削作業に必要だった滑車などの道具はルダー指揮の元、数人の腕に覚えのある男たちの手によって作られた。  素人目に見ても素晴らしい出来だったあたり、木工は田舎の百姓なら当然のスキルってことだろうか?  ちなみに鋳造した鉄管は用水路から引いてきた水道にも水道管として利用している。
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商隊、再び

 もう一つ、鋳造に興味を示した村人がいたので鋳造の方はそのおじさんに任せてジャリには鍛治に専念してもらうことになった。  木工と違って金属器はある程度の専門性が必要だからね。  もちろん木工も質のよいものを作るには匠の技術が必要なんだけど。  叩き出しの鍋釜もいいけど鋳物の生活用品はいいものだ。  鉄瓶が欲しい……。  冬の間は基本的に農作業ができないので村人は案外暇なんだけど、村を再建中のここではみんな朝から忙しく働いてくれた。  その上で合間を縫って軍事調練もするんだから、多分みんな不平不満を募らせていたんじゃないかと思うけど、特に愚痴を言うわけでもなく黙々と日々を過ごしていた。  そうこうするうちに雪が溶けて川になって流れてゆく頃、春のキャラバン隊が再びやってきた。  このキャラバンはルダーたちをこの村に連れてきた隊だから、廃村になったなんて世間の噂に惑わされずにいつもの通り村を訪れたってわけだ。「一年ぶりに来たが、見違えるようだな」 元々おじいさん商隊長さんだったけど、めっきり白髪も増えてひとまわり小さくなったみたいだ。  この一年、だいぶん苦労したみたいだな。「荷車が減りましたね」 五台編成だったはずなのに三台しかない。  三頭のホルスがただ曳かれて歩いている。「野盗に襲撃されてね。ホルスも一頭失った。隊のメンバーも三分の一が殺されたよ」 それは……。「なんと声をかければいいか……」「商売柄危険とは常に隣り合わせだが、この一年は野盗に襲われる回数が倍近くになった」 そんなに!?「三割は王侯貴族の正規軍だがね」「話には聞いていましたが、王国内はそんなに乱れているんですか?」「うむ、ちょっとした小競り合いから本格的な軍事衝突に発展する事案も増えているよ」 そんな話をしているところにジョーがやってくる。  この村では同時期にキャラバンが来ることはほとんどないので知りようはなかったんだけど、二人は面識があるようだ。「ジョー
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元服という儀式(イニシエーション)

 キャラバンが来た時に行われる宴は田舎の村では数少ない娯楽の一つだ。  みんなで飲んで食って夜遅くまで会話を楽しむ。  この時だけは子供達も結構遅い時間まで起きていていい。  もっとも、普段はすることがないから大人もわりと早く寝るんだけど。  そうそう、この村の子供(未成年)はあと数日で十五歳になるカーゲマンを含めて四人。 …………・ 成人の儀式を済ませてない僕は数に入れるべきなのか?  まぁ、中世的因習はこの際無視しよう。  バンジーだのタトゥーだの肉体的苦痛を伴うことを無理やりやらせるのは良くないと思うんだ。  ああいうのは帰属意識の強要ってやつで、不良の根性焼きとかと変わらない。  できない人を認めない、仲間に入れないなんていじめじゃないか。  ──そういう教育を前世で受けてきたからね。  まぁ、近代国家だったはずの前世日本でも学校や会社内ではわりとグループ内儀礼は行われていたわけで……。 …………。 やめよう、学生時代の嫌な思い出が蘇る。 とりあえず一気に改革ってのは不可能というか、いろいろな軋轢を生むから得策じゃないし、帰属意識ってのは持っていて悪いものじゃない。  場合によっては大事になるものだ。  そんなこんなを勘案すると、様々な集落から集まった人たちの集まりであるこの村では、それぞれに配慮するために新しい通過儀礼を考える必要があるんじゃないかと思う。  幸い僕は今村長だ。  僕が新し元服の儀式を考える権利を行使できる立場にある。 …………はず。「何を難しい顔しているんだね?」 と、そんな僕に声をかけてきたのはおじいさん商隊長。  そういえば、名前知らないな。「いえ。僕、十五歳の誕生日の前日に村が襲われたんですよね」「そうだったのか?」「ええ」「ということは、元服してないってことか?」「そういうことになりますね」「それで難しい顔をしていたのか?」「あー……まったく
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風習は地域によって違うもの

「若いのによく考えておる。確かに今後、その問題は避けて通れないだろう」「喫緊の問題ですよ」 いつの間にか二人の話を聞いていたらしいジョーが話に入ってくる。「うちのカーゲマンが三日後に誕生日を迎えて十五になります。彼はこの村に残る両親と別れてキャラバンに同行する予定になっているんですが、元服していない男を連れて行くわけにはいきませんからね」「ジョーのところはどんな儀式だったんだね?」「俺んとこは砂時計の砂が落ちるまでキャラバンの男たちと戦い続けるだけですがね」 と、懐から大きな砂時計を取り出した。  待て待て、そんなでかい砂時計で測るのかよ。  たっぷり一時間は戦わされることになるぞ。  おっと、この世界の一日は二十時間だ。  この世界の時間感覚に慣れちゃっていて、地球の二十四時間換算できないけど、前世の一時間より確実に長いと思う。  そんな長時間戦い続けるだけって……。「とにかく『元服の儀式はやめます』じゃ大人たちが納得しないと思うんですよね」「だろうな。年長者ほど抵抗するだろう」「かといってさっきも言った通り、どこかの儀式を踏襲……仮に元々のこの村の儀式を選んだとしてもわだかまりが残る気がする」「どんな儀式だったんだ?」「左上腕に森と太陽の意匠を彫るタトゥーです」「今はいいが、代が進むと今いる村人たちやこれからくる者達に疎外感を与えかねんな」「ですよね」 実際、流れ者はそのせいでなかなか集落に馴染めない。  大きな街ならそうでもないんだろうけどね。  この辺は日本の村社会もそんなだったと言われているけど、ここでは三代過ごしてようやく受け入れられるとその昔父ちゃんが教えてくれた。「ま、穏便な儀式を考えてみます」「穏便なやつねぇ……」 含みがあるなぁ、ジョー。「それはそうとジョー」「なんです? オヤジさん」「うちのキャラバン、もらってくれんか?」「なんです
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商売人の肝

「確かに唐突だがね。こうも世の中荒れていると、うちらのようなキャラバンはカモにしかならん。お前さんのとこくらい武闘派じゃなきゃ渡っていけんよ」「いやいや、うちを武闘派だなんて……」 僕も、ジョーのキャラバンは武闘派揃いだと思う。「頼まれてくれんか? そろそろ引退しようと思っていたのもあるんだが、跡取りがな……」「任せてもいいと思う部下はいないんですか?」「さっきも言ったが、うちの連中じゃ乱世は渡っていけんよ。その代わり商いの才覚は皆保証しよう」「判りました。俺のところもこの村に何人か常駐させて人手が足りなくなるところでしたし、オヤジさんのツテも受け継げるなら悪くない」「そう言ってくれるとありがたい。よろしく頼むよ」 二人はガッチリ握手を交わし、改めて酒を酌み交わす。  去年仕込んだダリプ酒だ。  甘くてアルコール度数の低い飲みやすい酒だ。  やっぱりキャラバンを率いるほどの商人は酒が判るのか、二人とも同じ見解だ。  でも、調子に乗って飲んでると熟成する前になくなるぞ。「あ、そうすると明日の市はどうなるんです?」「ん? オォ、そうだな」 おじいさん商隊長はジョーの顔を伺う。  ジョーは澄まして酒を飲む。「老後の蓄えは十分あるつもりだが、ただてくれてやるというのも商人としては面白くない」 そういって膝をポンと一つ叩く。「原価で売るとしようか」 原価……いや、前世知識もあるわけで、言ってることは理解できるんだけど貨幣経済とはとんと縁遠い田舎の集落でそんなこと言われましても……って話ですよ。  困って黙っていると、澄ましたままでジョーがいう。「金のことなら俺が出す」 これは以心伝心ととっていいのか?  それともジョーがキャラバンを買い取るついでに僕に借りを作らせたのか?  ──チッ!  やっぱ食えねー商人だ。
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商隊の解散と隊長の最期

 おじいさん商隊長が死んだ。  宴の翌日のことだ。  この一年、キャラバンは相当死線をくぐり抜けてきていたのだろう。  それは五台の荷車が三台に、隊の人数が三分の二になっていたことからも判る。  隊のみんなを食わすため、危険な道中でできる限り仲間を生かすために随分と心を砕いてきたことは間違いない。  高齢の身には過大な負担だったことは想像に難くない。  昨日の宴でジョーに隊を譲り渡したことで緊張の糸が切れたのかもしれない。  けれど、と言うか「だから」なのかとっても穏やかな死に顔だった。  葬儀はその翌日に行われた。  いい商隊長だったからか、隊の人たちは心から嘆き、哀悼の意を示した。  遺体は隊のみんなの意思を尊重し、火葬にした。  亡骸を商隊長の故郷に連れ帰るのだという。  この国は基本的に土葬が行われている。  この村も野盗に襲われるまでは土葬だった。  野盗に皆殺しにされた時も殺された村人は全員土に埋めた。  村に火をかけられたのでどれが誰だか判らなくて、まとめて一箇所に埋めたのが今でも心残りなんだけど……。  遺骨を箱に納めたあと、ジョーはおじいさん商隊のみんなに自分のキャラバンに入るかどうかを自分で決めてくれと話した。  もちろん、おじいさん商隊長の意向は伝えた上でだけど。「結論は急がなくてもいい。この村に残るのでもいい。故郷に帰るのでもいい。俺からは以上だ」 そういってジョーは彼らの集まりから離れる。  僕も一緒にその場を後にした。「何人残ると思う?」「え? そうだね……十六人いたけど十人残るかな?」 僕はそう答えた。  おじいさんの縁者が三人いた。  故郷に連れて帰ると主張した人たちだ。  おじいさんの身の回りの世話をする従者が一人、縁者に賛同した人が二人。  この六人がここを去るというのが僕の見立てだ。
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旅して回るおじいさんのお供といえば

「それで済むと思うか?」 どうだろう?  キャラバンのメンバーって基本的にひとつ所に腰を落ち着けることが元来苦手な人ばかりってのが印象なんだけど……。「集団ってのは合う合わないがある」 僕が沈黙を続けていたのをどう取ったのか、半ば独り言のように話し始めた。「長く同じキャラバンにいた連中ってのは、そこが居心地よくて居続けていた奴らってことだ。そして、長く同じところにいると人は保守的になる」 おぉ、判る気がする。「『それしか出来ない』と考えるか、『あそこが良かった』と思うかでも結論が変わるもんだ。社会経験の少ないお前には難しいか?」 いや、現世は確かに十六年ちょっとだけど、前世四十五年の記憶と知識もあるから理解できるぞ。「ジョーは何人残ると踏んでるんだ?」「確実なのは番頭のノーシンと手代のブローの二人。懐刀だったヤッチシが残ってくれるとありがたいがな」 頭痛薬?  いや、これまでの傾向からしてそんな由来じゃないはずだ。「フルネームは?」「必要か?」 心の安寧のためには結構重要だ。  力強く頷いたら教えてくれたけど……。 ノーシン・カークス。  ブロー・スッケサン。  ヤッチシ・ホイルピン。 と、おじいさんの周りに揃ってればあの時代劇しかないでしょ。  あとはうっかりしたのがいれば完璧だな。「何をニヤついてるんだ?」 ──っと、にやけてたか。「いや、なんでもない……ヤッチシが残ってくれるとありがたいってどうして?」「ほとんど武装していないオヤジさんのキャラバンが曲がりなりにも生き残ってたのはヤッチシの戦闘力と情報収集力のおかげといってもいい。うちのオギンをこの村に残している今、代わりになってお釣りのくる男は喉から手が出るほど欲しいのさ」 お・おぉっ! オギン・エン!!  やっぱうっかりしたのが必要だな。 …………。 いや、メンバー構成的には欲しいが、村
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