Alle Kapitel von 奴隷王女は宵獅子の愛に溺れる: Kapitel 11 – Kapitel 20

44 Kapitel

11話

「下品と言うが、性欲処理も大事だぞ。性欲が発散されると、身も心もすっきりする。自慰を強制するつもりはないが、セックスは子作りのためだけではなく、欲望を満たすためにもするということは覚えておいたほうがいい」 「そんな欲望、私には……ああっ!?」  前触れもなく乳首を吸われ、大きな声が出てしまう。 「流石は生娘。少し乳首を吸っただけで、初々しい反応をしてくれる」「い、今のはいきなりされたから驚いただけで……」「ほう? では、もう片方も吸ってやろう」「え? んあぁ……!」 もう片方の乳首を吸われ、甘い声が出てしまう。マリアネラの体は、快楽というものを理解し始めていた。だが、本人はそれを認めたくなかった。 「そのような声を出すということは、感じてはいるということなのだろう。初めての快楽で、脳の処理が追いついてないようだが、こればかりは慣れてもらうしかないな」「感じてなんか、いません……!」 チェセルは片意地を張るマリアネラを面白そうに見下ろしながら、乳首を摘み上げる。「んんっ!」 吸われるのとは違った感覚に、背筋が粟立つ。指先でこりこりと乳首をこねくり回される度に、甘く痺れ、下腹部が熱を持ってくるのが分かる。(これが、快楽? 怖い……。こんなの、いや……) 一方的に押し付けられる快楽に恐怖さえ覚える。王女としてのプライドが、涙と弱音を許さない。 「こうして指先でいじられるのはどうだ?」 「ん、ふ……。別に、大したこと、ありません」 「お前の強情なところは好きだが、夜伽の時くらい素直になれ。お前はただ感じ、鳴いていればよいのだ」 「ひゃうぅっ!? あ、あ、やあぁっ!」 片方の乳首をじゅるじゅると音を立てながら吸われ、甘咬みをされ、反対側の乳首は指先でこねくり回されたり、引っ張られたりする。刺激を受ける度にこらえきれない嬌声が零れ、体が震え、小さく跳ねる。されるがまま体をいじられるのが、屈辱的で仕方ない。なのに、期待してしまっている自分もいる。(ダメよ、こんなの……) 次は何をされるのか期待している自分に気づき、戒める。 乳首への激しい責めが止み、マリアネラは肩で息をし、なんとか自分を落ち着かせようとする。 「乳首はこの辺にしておくか。今日はお前に自分の性感帯を教えるのが目的だからな」  マリアネラの体に覆いかぶさっていたチェセ
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12話

「そう怯えるな。怯えると体に余計な力が入って痛くなる」「は、はい……」 マリアネラは自分を落ち着かせることも兼ねて、深呼吸をする。少し気持ちが落ち着くと、チェセルを見上げる。彼はそれを合図としたのか、マリアネラの秘部に指を這わせる。痛みこそないが、強い違和感がある。「や、な、なにを……」「恐れるな。痛くしない」 チェセルはマリアネラの愛液で濡れた指を、ゆっくり入れる。「んぅ、はぁ……」 マリアネラは異物感に震え、どうにか別のものに意識を逸らそうと必死になるが、うまくいかない。「この穴に私のモノが入るのは、流石に分かるだろう。今日は入れんが、いずれ結ばれた暁には、遠慮なく純潔を奪わせてもらう」 「あなたと結婚なんて……」 快適な暮らしをさせてくれていることには感謝しているが、マリアネラはまだ、チェセルを軽蔑している。自分を購入し、こうして弄んでいるのだから。そんな男と結婚するなんて、考えただけでも恐ろしい。 「昨日、約束したではないか。お前の国を取り返す、と。私は夕の国のような下賤な輩と嘘が嫌いだ。陽の国を取り返した暁には、必ずお前を后として迎え入れる。  マリアネラはチェセルを見つめる。どうしてそこまで自分に固執するのか分からない。 「さて、おしゃべりはここまでだ。指を動かすぞ」 チェセルはゆっくり指を動かし、腹側に指を曲げて小刻みに動かす。「ひ、んんっ! はぁ……」(なんなの、これ……) クリトリスとは違った、じんわりとした快楽に、触られてざらつく感覚に困惑する。 「今、腹側のざらついた部分を指先で撫で回しているのだが、分かるか?」 「んぅ、は、い……」 「ここはGスポットと言ってな。女の感じやすい場所に違いないが、多少の開発を要することがある。今日はお前が果てるまで、Gスポットとクリトリスを刺激してやる」「や、そんなこと……。あうぅ!?」 クリトリスを再び舐められ、甲高い声が零れてしまう。内側と外側からの刺激で、マリアネラの口から抑えきれない嬌声が零れ、体が小刻みに震えてくる。「あ、あ、あぁっ♡」  じゅるじゅると音を立てながらクリトリスを吸われ、Gスポットを小刻みに撫でられ、思考が回らない。 「悲鳴に近い声を出すとは。クリトリスを舐められるのが、そんなにいいか」 「わ、わからな、ひああっ♡」  クリトリス
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13話

 マリアネラの手に置かれたのは、1本のナイフだ。宝飾がついた美しいナイフは、マリアネラの小さな手のひらにずっしり重たく感じる。 「そのナイフは、私が愛用している暗器のひとつだ。といっても、それはスペアだがな」 「何故、ナイフを?」 それに彼は暗器というが、暗器にしてはきらびやかな気がする。 「護身用だ。万が一のために、使用人達もある程度戦えるように鍛えられているが、最後は自分で自分を守らなければなるまい」「なるほど、護身用ですか。ですが、宵の国は比較的平和な国と聞いております。必要になるでしょうか?」「どんなに平和な国でも、ここが城であることに変わりない。当たり前だが、城に住むのは王族と使用人だ。使用人の中には貴族出身の者もいる。スパイや暗殺者がいつ潜り込んでもおかしくはない」 チェセルの言葉はマリアネラに深く刺さった。陽の国は平和であるが故に慢心し、兵士もほとんど鍛錬をしていない。その結果、あっという間に夕の国に負け、国を乗っ取られてしまった。(私達にも、これくらいの警戒心があれば、きっと陽の国も……) ナイフを持つ手に力が入る。チェセルはその様子を顔をしかめて見ていた。「それを使って私を殺し、ここから逃げ出しても構わない。が、自分の命を粗末にするようなことだけはするなよ」 「そんな愚かな真似、しませんわ。私は、いつか陽の国を取り戻したいのです」 マリアネラはチェセルをまっすぐ見上げた。自分は本気だと伝えたかった。意図が伝わったかは不明だが、チェセルは小さく笑うと、マリアネラの頬に手を添えた。 「いい目だ。その力強い眼差しが、私の心を掴んで離さない。明日(あす)はもう少しマシな贈り物を用意すると約束しよう。おやすみ、マリアネラ」  チェセルはマリアネラの額にキスを落とすと、部屋から出ていった。「はぁ……」 知らず知らずのうちに緊張していたのか、彼が出ていった瞬間、力が抜ける。「くしゅっ……! 風邪を引いてしまうわ……」 マリアネラはネグリジェを手繰り寄せ、身にまとう。体に布が密着すると、安心感が戻って来る。
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14話

 翌日の午後、部屋でハープを奏でていると、誰かがドアをノックする。「はい」「マリアネラ様、メリーです。おやつを届けに来ました」「入って」 マリアネラが返事をすると、メリーはワゴンを押しながら、甘く香ばしい香りと共に部屋に入る。彼女はテーブルに紅茶と焼き菓子を並べた。 マリアネラはメリーを観察する。チェセルは使用人達はある程度戦えるようにしていると言っていたが、おっとりした雰囲気のメリーが戦えるとは思えない。 「ねぇ、メリー。あなた、戦えるの?」 「え? えっと……。どういうことでしょう?」  困惑するメリーが愛らしくて、自然と笑顔になる。 「いきなりごめんなさいね。昨晩、チェセル王子が言ってたの。万が一に備えて、使用人達もある程度戦えるようにしてるって」 「そういうことでしたか」  納得したメリーは、スカートをたくし上げる。太ももにはベルトが巻かれ、短剣が収めてあった。 「ある程度は戦えます」 「そ、そうなのね」  いきなりスカートをめくりあげるメリーに驚いたマリアネラは、そう返すのがやっとだった。 「いざという時は、私がマリアネラ様をお守りします」 ふんわりした笑顔は、先程見せてもらった短剣のせいか、心做しか頼もしいものに見えた。 「ありがとう。とても嬉しいわ。ひとつ、私のわがままを叶えてくれると、もっと嬉しいのだけど」 「なんでしょう?」 マリアネラはサイドテーブルの引き出しを開けると、昨晩チェセルから受け取ったナイフを取り出し、メリーに見せる。メリーはナイフを見た途端、目を丸くした。 「それは、チェセル様の!」 「昨晩、もらったのよ。護身用にって」 「そのナイフ、ちょっと見せてもらっていいですか?」 「えぇ、どうぞ」  ナイフを手渡すと、メリーは慎重に両手で持ち、まじまじと観察した。彼女の中で腑に落ちたのか、大きくうなずくと、マリアネラにナイフを返した。 「間違いありません。これはチェセル様が愛用しているものですね。こんなに大事なものを、人に手渡すなんて……」
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15話

 その日の夜、マリアネラは就寝しようかと本を閉じてテーブルに置く。本棚に目をやると、1番上の棚が半分ほど埋まっている。ドレスを購入した日、チェセルが買ってくれたものだ。ほとんど城から出られないため、もうほとんど読み終わった。「あとで、本の追加を頼もうかしら」 日中、チェセルは忙しいのか、あまり顔を出さない。それにやることと言えば読書かハープの演奏くらいだ。奴隷にしては充分すぎる贅沢をしているが、元は王女。それに、家族や民が気がかりだ。こうして気を紛らわせておかないと、どうにかなってしまいそう。 考え事をしていると、チェセルが相変わらずノックも無しに入ってきた。言っても無駄なので、マリアネラはもう諦めている。「ご機嫌麗しゅう、斜陽の姫。今夜は約束通り、昨晩よりもマシな贈り物を持ってきた」  そう言ってチェセルがマリアネラに手渡したのは、小さなハープ。以前贈った新品のハープは軽い金属で出来た美しいものだったが、このハープは木製で、大人のマリアネラが演奏するには小さい。それに、随分古びている。 「これは……!」  マリアネラはハープを受け取ると、大事に抱えた。このハープは子供の頃、父王に贈られたものだ。人前で演奏する時はもっと立派なハープを使って演奏していたが、自室で息抜きをするために演奏する時は、このハープを愛用していた。父王は成長したマリアネラに、「今のお前にあったハープを贈ってやる」と言ったが、マリアネラはそれを断り、古びたハープを使い続けていた。 このハープは幼い頃から苦楽を共にした。何より、父からのプレゼントだ。使えなくなるまで大事に使いたいと思っていた。 「その小さなハープは、お前のものだろう?」 「どこで、これを……」 記憶が正しければ、ハープは地下に行く前、クローゼットの奥に隠しておいた。このハープを持ってきたということは、チェセルが城に入ったことを意味する。マリアネラの瞳は、期待と不安で潤んで揺れる。 「どこでもなにも、陽の国にある城のお前の部屋からだ」  チェセルは当たり前だと言わんばかりの口調だが、マリアネラは驚きのあまり開いた口が塞がらない。マリアネラが地下から連れ出された際、少
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16話

「はい」「珍しく素直だな」 チェセルは近くの椅子を引き寄せると、座って足を組む。(私がチェセル王子にできるのは、音で癒やすことくらい……) マリアネラは小さく息を吸うと、ハープを奏でる。曲名は愛の贈り物。練習曲としてよく使われる曲で、マリアネラのお気に入りでもある。 力強くもあたたかな音色が部屋を満たす。マリアネラはチェセルへの感謝を込めて、一生懸命演奏する。この曲を奏でていると、勇気が湧き、あたたかな気持ちになってくる。(チェセル王子。私はまだ、あなたを愛せません。ですが、あなたに感謝しています。あなたを、もっと知りたい) 演奏が終わると、チェセルはマリアネラに拍手を送る。マリアネラはドレスの裾を持って一礼した。「実に心地よい音色だ……。確かその曲は、3年前も奏でていたな」 「3年前?」 「3年前、陽の国で舞踏会があっただろう? お前はその時もこの曲を奏でていた。ハープを奏でるお前は、あの時も今も、女神のようだ」 「御冗談を」 社交の場に何度も顔を出しているため、お世辞は言われ慣れている。だが、チェセルの言葉にはお世辞にはない重みがあるように感じ、返事に困る。「私は冗談や世辞は好かん。本心しか口にしない。演奏はもういい。私の上に座れ」 チェセルはマリアネラの言葉に不機嫌そうに顔をしかめ、自分の膝を指さした。 「え?」 「向かい合う形になるように、私の膝の上に座れ」「……分かりました」 マリアネラはおずおずとチェセルの上に乗る。殿方に密着することでさえまだ恥ずかしいのに、足を大きく開いて乗るのは、気が引けたが、いざ乗ってみると、安心感がある。(そういえば、子供の頃、父上にこうやって抱っこしてもらったっけ……) 懐かしくなってチェセルの厚い胸板に顔を埋める。彼の匂いで昨晩のことを思い出してしまい、胸板から顔を離す。(私ったら、なんてことしてるの……!)「マリアネラ」「なんでしょう?」 名前を呼ばれて顔をあげると、す
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17話

 翌朝、朝食を食べ終えると、チェセルに連れられ、馬車に揺られながら貴族の街へ行く。マリアネラはこの街があまり好きではない。血税を貴族達の娯楽のために使って出来た街には抵抗がある。「お前はあまりこの街を好かんだろうが、ここが1番安全だ」 顔に出ていたのか、チェセルが言葉を発する。彼は興味深そうにマリアネラを見ていた。「安全と言われても、あまり好きになれません。血税で娯楽だなんて……」 窓の外を見ると、貴族達が楽しそうに買い物をしている。「この街にも、歴史がある」「歴史?」「そうだ。貴族の街を作ろうと決意した王は、家族思いでな。先代王は邪智暴虐な王だったが、家族思いの王は、先代の尻拭いに必死になっていた。だが、そうすぐに良くなるものではない。王は無能だと勘違いした民衆が、貴族狩りをした。王は外交に行っていたため無事だったが、城に帰ると妻と子供の葬式の準備が進んでいたという」「そんなことが……」「どの国にも、暗黒の時代はある。その王も運が悪かったのだ。妻と子供の死を悲しんだ王は、このような悲劇を繰り返さぬよう、貴族達が安心して買い物や外食を楽しめるよう、貴族の街を作ったのだ」「そう、だったのですね……」 マリアネラは己の浅慮を恥じた。事情を知ろうともせず、軽蔑してしまったことを。自分が同じ立場になったとしても、きっと貴族の街を作ろうという発想にはならなかっただろう。顔も名前も知らない王に、敬意を払う。「実際、王の願いは叶った。この街は宵の国で1番安全な街だろう。多くの兵士が見回りをしているからな」 チェセルの言葉にもう一度外を見ると、剣を腰に差している者が多い。だが、貴族のような服装をしていて、兵士には見えない。 「剣を携えている方が大勢いますが、兵士らしき人は見えません」 「剣を差している者の大半は兵士だ。鎧を着た兵士がうろついていては、買い物も楽しめんだろう」 「確かにそうですけど、鎧を着てなくて大丈夫なんですか?」 「あの下には防刃服を着ている。鎧ほど頑丈というわけではないが、その辺の剣で斬りつけられても、簡単には着
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18話

「これが1番適当だ。まず、クッキーならなんでもいい。クッキーを割って、割れた形で決めるというものでな。割った本人のフィーリングで解釈するから、どうとでもなる」 「本当に適当なんですね」「そうだな。子供がよく、ズルをするのに使う。順番だったり、学校に行くかどうか、宿題をするか……。そういったことにクッキー占いを使うものだから、家庭によっては、クッキーを買うこと自体禁止にしているそうだ」「ふふ、面白いですね。チェセルも、クッキー占いをしたことがあるんですか?」 きっとクッキー占いが原因で、親子喧嘩がよく起きたのだろう。そう思うと、少し微笑ましい。「ないな。こう見えても勉強は好きだったし、剣の修行も苦ではなかった」「けど、何かから逃げたいと思ったことはあるのでは?」「そのようなことを知ってどうする?」 言い方こそ棘はあるが、一瞬、チェセルの目が泳いだように見える。彼のことを知るチャンスだと思い、じっと見つめる。「なんだ」「何から逃げたかったんですか?」「……はぁ、しつこい女だ。笑ったら、承知しないぞ」 チェセルは観念したようにため息を着くと、珍しく目を逸らした。「バイオリンの稽古だ……」「バイオリン?」「あぁ……。音楽を聴くのは好きだが、奏でようと思ったことはない。母が、王族なら楽器のひとつやふたつ出来なければ格好がつかないと思っている人でな。それで無理やりやらされていたのだ」 当時のことを思い出しているのか、チェセルは苦虫を噛み潰したような顔をする。チェセルがここまで人間臭さを見せたのは初めてで、可愛らしくて笑ってしまう。「ふふ」「おい、笑うな。承知しないと言っただろう」 チェセルは目を吊り上げて怒るが、頬が染まっているせいで怖くない。「チェセルにも、可愛い時期があったのですね」「うるさい。笑うのなら置いていくぞ」 チェセルは背を向けて歩き出し、マリアネラは慌ててチェセルの腕にしがみつく。この男なら、本当に帰ってしまいそう
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19話

「どうした? 何か気になるものでも見つけたか?」 「はい。この本が……」  マリアネラが手にしたのは、刺繍の本。刺繍どころか、針に糸を通したことすらないが、昔からやってみたいという気持ちはあった。もっとも、「そんなことは使用人のすることだ」と言われ、やらせてもらえなかったが。 「刺繍か。好きなのか?」 「いえ、したことはありません。ただ、幼い頃、裁縫や料理など、何かを作ってみたいと思ってたんです。ですが、そんなことは使用人がすることだと言われて、やらせてもらえなくて……」 「まだやりたいという気持ちがあるのなら、やってみればいい。宵の国では、咎める者はいない。宵の国では、貴族の女も料理や裁縫をする」 「そうなのですね。私にできるかしら」 マリアネラは宵の国を羨ましいと初めて思った。陽の国では、女性貴族は舞踏会とお茶会、そして読書と楽器をするのが至高とされ、針仕事や料理は、使用人や平民がすることで、貴族にふさわしくないとされている。下級貴族ならそこまで咎められることもないだろうが、マリアネラは王女。王女がそんなことをしては、示しがつかないと口を酸っぱくして言われてきた。 「はじめはうまくいかなくても、何度もやっていれば、成功するだろう。お前も、ハープを始めたての頃は、うまく奏でられなかったのではないか?」  チェセルの言う通り、始めた頃はどの弦がどの音を出すのかも、楽譜の読み方さえ分からなかった。弦を張り替えるのも苦労したものだ。今では苦もなくできるから、忘れていた。 「そうですね、やってみます」 「それでこそ、私が愛した女だ」 チェセルのお言葉に甘えて、マリアネラは裁縫や料理の本も何冊か選んだ。かなりの冊数になってしまったが、チェセルは平然とすべての本を持っていた。 本屋を後にすると、馬車は手芸店へ向かった。 手芸店の店内は、暖色系の照明で照らされ、あたたかな雰囲気だ。毛糸、生地、裁縫道具などがずらりと並んだ手芸店は、マリアネラにとって夢の空間だった。「可愛い……!」「何を買うのか見当はついているのか?」「えっと、一通りの道具と、毛糸と生地を……」
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20話

 マリアネラ達が城に帰る頃には陽が落ち始めていた。マリアネラは紙袋を抱え、メリーをはじめとした数人の使用人達が本を抱え、マリアネラの部屋へ向かう。 チェセルは用事があると言い、別の馬車でどこかに行ってしまった。 部屋に入ると使用人達に本はテーブルの上に置くように指示し、抱えていた紙袋は椅子に置く。「ありがとう、お疲れ様」 マリアネラが礼を言うと、メリー以外の使用人達は一礼し、部屋から出ていく。「マリアネラ様、久方ぶりの外出、お疲れでしょう。なにか甘いものをお持ちしましょうか?」「嬉しいわ、メリー。お願い」「はい、マリアネラ様」 メリーは一礼し、部屋から出ていった。「さぁて、どうしようかしら」 その声は無垢な少女のように弾んでいる。マリアネラは元々ある本を少し並べ替えると、上から資料本、小説、料理・裁縫・占いの順に並べていく。もう少しで並べ終えるというところで、メリーが紅茶と焼き菓子を持って戻ってきた。「随分片付きましたね」「えぇ、あとはこれだけよ」 マリアネラはテーブルの上に残った占いの本を棚に入れる。1番上に数冊程度あっただけの寂しい本棚は、だいぶ賑やかになってきた。それでも半分以上の空きがある。「マリアネラ様の本棚になってきましたね」「ふふ、素敵な表現ね」 もう一度本棚を見る。どれもマリアネラ自身が選んだ本だ。メリーの言う通り、マリアネラの本棚なのだ。陽の国にはもっと本があったが、今は何故か、その時以上に嬉しい。「ところで、この紙袋には何が?」「裁縫道具よ。それと、生地と毛糸。陽の国では出来なかったけど、ここでならやっていいって言われたから、買ってもらったのよ」「そういうところにも、文化の違いがあるのですね」「そうね。宵の国では貴族も裁縫や料理をすると聞いて、驚いたわ。ねぇ、メリー。あなたも裁縫はできるの?」「ちょっと縫うくらいなら出来ます」「私はそれさえも出来ないわ。困った時は、聞いてもいいかしら?」
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