Alle Kapitel von 奴隷王女は宵獅子の愛に溺れる: Kapitel 31 – Kapitel 40

44 Kapitel

31話

 翌日、マリアネラは朝食を終えると、話がしたいとチェセルに声をかけた。彼はふたつ返事で了承すると、1時間後に部屋に向かうと言ってくれた。 マリアネラはメリーに頼んでお茶を用意してもらい、チェセルを待つ。彼は時間より少し前に来てくれた。「珍しいな、マリアネラ。話とは?」「両親に送るものの相談をしたいと思いまして。食事は質素と聞きます。それがどの程度のものか、私は分かりません」 マリアネラの言葉を聞き、チェセルは顎に手を添え、考える素振りを見せる。「ふむ、両親の食事の心配か。お前は劣悪な環境にいたと聞いた。その手の心配をするのも、無理もない。参考までに聞くが、どういう生活だった?」「人間の暮らしはできませんでした。牛や豚のほうが、上等なものを食べていたように思います。私達に出されるのは、悪臭がする上に、虫やゴミが浮いたお粥のようなものでした」「そんなに酷かったのか……」 チェセルは顔をしかめながらお茶を飲み、話を聞こうと前のめりになる。「はい。お風呂に入ることもできません。お風呂の代わりに、井戸水を掛けられます。私は、井戸水を掛けられる時に口を開けて、必死に飲みました。それと、雨漏りもひどく、雨量も多いので、雨水も……」 当時の生活を思い出し、気分が悪くなる。だからこそ、両親が心配で仕方がない。彼らが虫やゴミが浮いたものを食べさせられていたらと思うと、胸が張り裂けそうだ。「なるほど、ここに来たばかりの頃、ひどく痩せていると思ったが、水だけの生活だったのか。お前が両親を心配したくなるわけだ。安心しろ。彼らはそこまで酷い食事ではない」「そうなんですか?」「パンとスープだと言っていた。それと、豆を数粒。お前よりはマシだろう」「よかった……。けど、それだけではきっと足りないでしょう。心の余裕もなくなってしまいます。手紙の他に、ちょっとした食べ物を渡してもらえることは可能でしょうか?」「ポケットに入るサイズなら、問題ない。それと、匂いを封じやすいもの。できるだけ小さいものがよいだろう」「
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32話

 翌日。マリアネラはメリーを連れて厨房に入る。レシピ本を見ながら、クッキーの材料を揃えていく。「えぇと、バターと卵黄は常温に……」 マリアネラは卵を割ると、卵黄と白身を分ける。メリーは白身に砂糖を入れ、よく混ぜてメレンゲにする。クッキーはふたりで何度か作ったことがある。その際、白身を捨てるのがもったいなくて、マリアネラがクッキー生地を作っている間、メリーはメレンゲクッキーを作ることにしているのだ。 マリアネラは作業台の隅にバターと卵黄を置くと、薄力粉を計量し、ふるいにかけていく。マリアネラはこの作業が好きだ。自分で雪を降らせているみたいで、楽しくなる。「さて、と」 今度はボウルにバターを入れてなめらかになるまで丁寧に混ぜていく。バターがなめらかになったところで、砂糖、卵黄、薄力粉を少しずつ、様子を見ながら混ぜる。最後にバニラエッセンスをくわえて混ぜ、円柱にすると冷蔵庫に入れる。 一段落してメリーを見ると、彼女はオーブンに天板を入れるところだった。「お疲れ様。メリーは本当にすごいわ。私、メレンゲは作れそうにないもの」 マリアネラもメレンゲ作りに挑戦したが、メレンゲは長時間素早く混ぜ続ける必要がある。マリアネラはもったりしたメレンゲを作るまで腕が持たず、結局メリーに仕上げをしてもらうことになった。それからは、マリアネラはクッキー生地を、メリーはメレンゲクッキーを担当することになったのだ。「適材適所ってやつですよ。私は薄力粉をふるいにかけたり、様子を見ながら材料を少しずつくわえて混ぜるなんて、めんどくさくてできませんよ」 初めて一緒にクッキー作りをした日のことを思い出す。ある程度料理していると聞いたから大丈夫だと思っていたが、彼女は材料を揃えるなり、すべてをボウルに入れて混ぜてしまった。バターは常温に戻さなかったし、卵も卵黄と白身にわけることなく、全卵を使った。それだけでも充分頭痛の種ではあるが、彼女は生地を1時間寝かせる工程を無視して焼いた。 結果、クッキーのような微妙な何かが出来上がってしまい、後から来た料理人を苦笑させた。 後から話を聞くと、メリーはお菓子作りの経験は、何
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33話

 ふたりは分担して満月のパイを作ることにした。満月のパイは、宵の国の伝統料理のひとつで、満月の日や、祝い事がある時に作られることが多い。 手始めにマリアネラはパイ生地を、メリーはカスタードを作る。カスタードは卵黄しか使わないため、再びメレンゲクッキーも作られた。メリーがメレンゲクッキーを作っている間、マリアネラは数種類のベリーのヘタをカットした。ベリーをたっぷり詰めるのが主流なのだ。 パイを整えると、メレンゲクッキーが焼き上がるまで冷蔵庫で冷やす。時計を見ると、午後1時前。メレンゲクッキーが焼き上がる時間を考えると、ちょうど3時頃にパイも焼き上がる。「流石にちょっと疲れたわね」「えぇ、そうですね。少し休みましょう」 食堂でアイスティーを飲みながら休憩し、メレンゲクッキーが焼き上がると、今度は満月のパイを焼く。パイが焼けるのを待つ間、先に作ったメレンゲクッキーをつまみながら待つ。慣れない工程が多くて疲れたふたりには糖分が必要だと判断した。もちろんそれは建前で、カスタードと一緒に作ったメレンゲクッキーをお茶会で出せばいいと思って、小腹を満たすために先に作った方を食べることにした。 オーブンがパイの完成を告げると、ふたりでドキドキしながらオーブンを開ける。「うわぁ……!」 香ばしくも甘酸っぱいにおいと、きつね色になったまんまるのパイを見て、ふたりは目を輝かせる。「すごい……! 思ったよりも綺麗に焼けてるわ」「はい! これならきっと、チェセル王子も喜びます。そうだ! お天気もいいですし、中庭で食べませんか?」 「いいわね。楽しそう」 メリーの提案に、胸が躍る。外でお茶会をするのは久しぶりだった。 「私はお茶の用意をしますので、マリアネラ様はチェセル様と東屋にいらしてください」 「えぇ、お願いね」 チェセルを探しに厨房から出たのはいいが、彼がどこにいるのか皆目見当もつかない。「鍛錬場かしら?」 精鋭部隊の隊長でもあるチェセルは、他の兵士達と共に鍛錬すると言っていた。戦争が近いこの時期なら、そちらにいるのかもしれない。
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34話

 翌日、マリアネラとメリーは、箱を見ながらクッキーを作る。クッキーは焼くと大きさが変わってしまう。オーブンの状態や、生地の厚さなど、条件は様々だ。焼く前は箱よりも小さめにしておくのだが、生地が少しでも分厚いと、オーブンの熱で予定より大きくなってしまう。何度もオーブンを使っていると、熱くなりすぎたせいで少し焦げてしまうこともある。 オーブンを冷ますために休憩を挟みながら、試行錯誤を繰り返し、形も見た目もいいものを箱に入れ、夕方前になんとか完成した。できれば明日作って渡したかったが、チェセルが明日の何時にスパイと会うのか分からないため、今日用意することにした。(これだけ時間がかかったんだもの。今日にして正解ね) 残りのクッキーはふたりでは食べ切れない量になったので、使用人達を呼んで、ちょっとしたお茶会を開いた。使用人達は予定外の休憩とおやつを喜んでくれた。「ありがとうございます、マリアネラ様」「こういう呼び出しはいつでも大歓迎ですよ。あ、もちろん、どんな御用でも」 食堂には笑い声が響く。こんなににぎやかな場は久しぶりだ。食事はいつも、チェセルとふたり。お茶会ではメリーも同席してくれるが、3人ではこんなににぎやかになることはない。(そういえば、国王様と王妃様はどちらに?) 極限状態でこの城に来て、回復したり慣れたりするのに必死だったため、すっかり頭から抜け落ちていたが、ここに来てから国王にも王妃にも会っていない。(チェセルに聞いてみようかしら) お茶会が終わると、マリアネラは箱を持って自室に戻った。小さな紙に『私はチェセル王子の元で快適な暮らしをしています。おふたりもご無事で』と書いた紙を折りたたみ、箱に入れた。 執事にチェセルの居場所を尋ねると、見回りをしているとのことだった。マリアネラは執事に、彼が返ってきたら自分の部屋に来るように伝言を頼むと、自室に戻った。 気づけばマリアネラは国宝のペンダントを握り、チェセルの無事を祈っていた。占い市場での襲撃が、脳裏によぎる。何より、今日はチェセルの顔をまだ見れていない。「少し会えないだけで寂しくなるなんて、よっぽど彼
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35話

 月日は流れ、その日はいよいよ明日となる。マリアネラは鬱々とした気持ちで食堂に向かう。「随分と暗い顔をしているではないか、斜陽の姫よ」 低く通る声に顔を上げると、チェセルがいつもの席に座っていた。「チェセル……! お忙しいから、こうして一緒に食べることはないと思っていました」「しばらく離れ離れになるのだ、今日くらいはな。今日は休息だ。戦争の前に疲れが残っては、話にならんからな。他の兵士達も、身内に会いに行ってるだろう」 チェセルの言葉には、会うのはこれで最期かもしれないというメッセージが込められている気がして、胸が痛む。「そのような顔をするな。せっかく共に食事をできるのだから。はやく座れ」「はい」 マリアネラは椅子を少しチェセルに近づけ、彼と共有する時間を噛み締めながら朝食を食べた。「今夜、お前の部屋に行く。起きて待っていろ」「はい、分かりました」「公務を片付けてから行くので、遅くなるかもしれん。眠かったら寝ててもいい」(公務……? あぁ、王子だものね) チェセルは良くも悪くも王子らしくない。普通、王子が自ら戦場へ赴くことはない。第2、第3王子など、王位継承予定がない王子なら戦場に行く者も一定数いるが、チェセルのような王位継承予定がある第1王子は稀だ。特に、チェセルのように他に兄弟がいない者は、国王や家臣が全力で阻止するはずだ。「いえ、お待ちしております」「そうか」 マリアネラの返答に、チェセルは一瞬意外そうに目を見開き、満足げに笑った。「無理はするなよ」 チェセルはマリアネラの髪を撫で、食堂を後にした。 マリアネラは食堂へ行くと、心を込めてクッキーを焼いた。見た目はプロには叶わないが、歪さはほとんどない。これならチェセルに手渡せる。『あなたを想い待っています』と紙に書いて箱に忍ばせた。 今夜、チェセルに手渡すつもりだ。「喜んでくれるといいんだけど……」 少しの不安を抱きながらも、片付けをして部屋に戻った。
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36話

 唇が重なり、チェセルの舌がマリアネラの唇に触れる。マリアネラが彼を迎え入れるように僅かに口を開けると、舌が侵入し、マリアネラを味わうようにゆっくり絡んでくる。「んんっ、ふ、はぁ……」 キスにはまだ慣れていない。解放されて肩で息をすると、触れるだけのキスが落とされる。 「じっくり時間をかけて愛したいところだが、隊長が寝坊をしては、示しがつかん。手早く済ませるぞ」「はい……」 明日は戦争だ。こんな遅い時間に会いに来てくれただけでも感謝するべきだと頭では分かっていても、「手早く」という言葉が引っかかって寂しさを覚えてしまう。顔に出てしまったのか、チェセルは小さく笑い、再びキスを落とす。 「そんな顔をするな。時間はかけられないが、ありったけの愛を伝えてやる」 「はい……!」 たった一言でこんなにも心が軽くなる。(チェセル……。私、あなたを愛しています) 息さえ忘れる深いキスを受け入れながら、チェセルへの愛を心の中で紡ぐ。唇が離れると、チェセルの手はネグリジェに伸びた。「あ……」 脱がされると思うと、つい身構えてしまう。ただでさえ慣れていないのに、時間が空いたせいで、緊張が抜けない。 「相変わらずウブで可愛らしいな」 チェセルは頬にキスをすると、丁寧にネグリジェを脱がせていく。マリアネラはどこを見ていいのか分からず、目を閉じて大人しく脱がされる。「んんぅ……!」 首筋を指先で撫でられ、驚いて目を開く。愛おしそうに自分を見下ろすチェセルと目が合った。 「お前の肌は、絹のようになめらかだな。この柔らかな肌にしばらく触れられないのは、やはり寂しいものだ……」 チェセルの熱い舌が、マリアネラの白く細い首筋をなぞり、時折甘咬みされる。歯が立てられるたびに、もっとと願いながら、獅子の下で囀る。「んぅ、あ、あぁっ……♡ チェセル……。はぁ、んっ♡」(もっと、痛くして……) その願いはマゾヒズムからではなく、少しでも自分の身体に愛を刻んでほしいという純粋な願望。 「首筋から
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37話

「ひゃううぅっ♡」 熱い舌が、敏感な蕾を撫であげる。ひと舐めされるたびに目の前がチカチカして、体の力が抜けていく。「きゃふっ、あ、あああっ♡ んぅ、ひああっ♡」「少しクリトリスを吸い上げただけで、派手に鳴くようになったな」「だ、だってぇ、こんな、すごいの……あうぅっ♡」  蜜壺に指が入り、Gスポットに軽く擦れる。以前はそこまで感じなかったというのに、震えるほど敏感にされてしまった。 「ここも、私の指をすんなり受け入れる。ゆっくりだが着実に、私のものになりつつある。これがどれほど喜ばしいことか、お前には分かるまい」「きゃふっ♡ あ、ああっ♡」 ナカをかき混ぜられ、Gスポットを指の腹で擦られ、下腹部がじんわり熱くなる。 「以前は大して反応もしなかったGスポットでも、感じられるようになったではないか」 「2本目、追加するぞ」 「あうぅっ♡」 指を増やされただけで感じてしまい、体が小さく跳ねる。チェセルは満足げにその様子を見ていた。 「指を追加しただけで、可愛い反応をする……。お前ほど私を喜ばせることができる女は、存在しないだろう」 「そろそろ3本目の指を入れるぞ。覚悟はいいな?」 「は、はい……」 マリアネラは緊張しながらうなずく。今までは2本の指しか入れてこなかった。3本目は未知の領域だ。 3本目の指がずぷりと入り、蜜壺を広げていく。「んっ、く……!」 想像以上の圧迫感に、身を固くする。内臓がせり上がるような感覚に震え、涙目になってしまう。 「3本は流石に苦しいか。だが、私のモノは、指3本よりも太く長い。これくらい、すんなり受け入れられるようにならなくてはな」「こ、これより……!?」「そう不安がるな。今すぐ入れるというわけではないのだ。私が戦場にいる間、せいぜい心構えでもしておけ」「あふ、んんっ、ふ……」 ゆっくり動かされるが、快楽より圧迫感が勝つ。マリアネラは息をするのに精一杯だ。 「まだ苦しいか? 私の指に合わせて、腰を動かし
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38話

 腹部に熱い何かを乗せられる。恐る恐る視線をそちらに向けると、チェセルの太く逞しい陰茎だった。彼の陰茎は、ちょうどマリアネラのへそまである。「お前の体は心もとないな。私のモノが、へそに届くぞ。入れたらこの位置まで入るということだ。全部押し込んだら、お前の子宮が潰れてしまいそうだ」 「や……!」 恐怖で身を固くすると、チェセルは安心させるように体を撫でた。 「お前の神聖な体を貫くのは、戦争が終わってからだ。それに、無理やり全部ねじ込むつもりはないから、そう怯えるな」「はい……」 チェセルはマリアネラに覆いかぶさり、力強く抱きしめる。体が密着し、性器が擦れた。「あっ……」 「分かるか? 私達の性器が擦れ合っているのが。今から入れなくてもお互いに気持ちよくなれると教えてやる」 チェセルはマリアネラの額にキスを落とすと、律動を始めた。先端が蜜壺の入口とクリトリスを擦る。舌や指での愛撫とは違う快感に震え、チェセルにしがみつく。「あ、あぁっ♡ チェセル、チェセル……!」  たまらずに彼の名を呼ぶと、チェセルは悩ましげに熱い吐息を零す。 「我ながらこんなにがっついてみっともないと思うが、私がここまで執心するのは、お前だからだ。お前のすべてが私を狂わせる」「んむぅ……♡」 唇を塞がれ、激しく舌を絡められる。マリアネラも応えようと彼女なりに必死に舌を絡ませた。 「こんな大男が、宵獅子と恐れられている男が、お前のような小娘相手に必死になって、馬鹿らしいと思うか?」 「そんなこと、ありません……。んんっ、ふ……♡」 「私相手にそんなに優しいこと言っていいのか? 調子に乗って漬け込むかもしれんぞ?」 「構いません」 「酔狂だな、お互い」 チェセルは苦笑してキスをする。マリアネラは彼の背中に腕を回した。少しでも多く、チェセルのぬくもりを感じたかった。 「あ、ああぁっ、は、んんっ♡」 「お前の潤んだ瞳を見ているだけで、気分がよくなる。もっと無防備でか弱い部分を、私だけに見せて欲しい。縋るようなその眼差しを、私だけ
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39話

 ふたりの息遣いだけが、部屋を満たす。呼吸が落ち着くと、チェセルはマリアネラの目を真っ直ぐ見つめ、抱き寄せた。「明日から戦争が始まる。夕の国に遅れを取るつもりはないが、万が一城に攻め込まれたら、テーブルで扉を塞げ。テーブルの下に敷いてある絨毯をめくれば、地下に続く小さな扉がある。ひと月分の水と食糧と、護身用の銃と予備の弾丸がある」 チェセルの話で甘い幻想から血生臭い現実に戻される。マリアネラは残念に思いながらもチェセルを見上げ、疑問を口にした。 「2階なのに、隠し扉? それに、銃なんて……」 「盲点だろう? だからあえて2階に作ったのだ。ここの真下は、物置部屋だ。物置部屋の裏に隠し部屋がある。それに、銃なんてなど言うが、私が以前贈ったナイフより、心強い武器だろう」 「それは、そうですが……」 返答に困った。それらが必要になるということは、チェセルの死を意味する。そんなこと、考えたくもない。特に、今は。 「私が率いる軍と、鍛えた使用人がいるとはいえ、いつ何が起こるか分からない。それが戦争だ。最後に自分を守れるのは自分自身。襲われたらためらわずに撃て。私の大事な宝物を、お前自身を守るのだ。よいな?」 「はい……」 彼の眼差しを見て、本気で心配してくれていることが伝わる。チェセルはマリアネラのために戦うのだ。いい加減、自分も現実を受け入れなければならない。 「いい返事だ」「チェセル……。私、あなたのこと、あ……、!」 愛の言葉は唇に添えられた指で止められてしまった。 「おっと、その言葉を口にするのは、まだはやい。その言葉は、私が帰還する時まで取っておいてくれ」 今のマリアネラは奴隷だ。彼との約束は、陽の国を取り戻したら彼の妻になること。きっとチェセルは、奴隷としてのマリアネラではなく、妻としてのマリアネラからの愛がほしいのだろう。そう解釈したマリアネラは、大きくうなずいた。 「分かりました」 「お前からの愛の言葉、楽しみにしている。おやすみ、マリアネラ」  チェセルはマリアネラの額にキスをすると、脱ぎ捨てた服を拾おうとする。「チェセル」
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40話

 翌朝、マリアネラは朝日の眩しさで目を覚ます。寝ぼけ眼をこすりながら起き上がり、ぼんやり外を見る。 門の前にある広場に、多くの兵士が集まっているのが見えて目が覚める。「チェセル!」 彼と寝ていたことを思い出し、隣を見るも、彼はいない。触ってみると、ベッドは冷たい。だいぶ前に部屋から出たらしい。 マリアネラは慌てて着替え、1階に降りる。外に向かう途中、甲冑を身に着けたチェセルとばったり会った。「チェセル……!」「マリアネラ、起きていたのか」 紺色の甲冑を身に着けたチェセルはいつもより精悍な顔つきをしているように見えた。その姿がこれから戦争が始まると実感させて胸が痛くなる。(ダメ、私も向き合うって決めたじゃない) まっすぐチェセルを見上げる。「よかった。起きたら見当たらなかったので、もう行ってしまわれたかと……」 「お前の顔を見る前に行くわけがないだろう。出発まで、まだ時間がある。もう少し寝ていてもよかったのだぞ?」 「いえ、できるだけ一緒にいさせてください」 「ふ、いじらしいことを。私は必ず生きて帰る。不安に思う必要などない」 「それでも、心配です」 「できるだけはやく帰る」 チェセルはマリアネラを抱き寄せ、触れるだけのキスをする。「お前も来るといい」 一緒に外に出ると、門の前には先程より多くの兵士が集まっていた。「ここにいろ」 マリアネラは門の近くに設置された椅子に案内される。そこには数名の家臣が複雑な顔で兵士達を見つめながら座っていた。 人々は忙しなく動き回り、整列する。軍隊の後ろには救護班などがいて、その中に女性がいるのを見つけた。(私も、一緒に行ければいいのに……) きっと許可は出ないだろう。仮に行けたとしても足手まといになるのは明白だ。マリアネラはもどかしい気持ちを抱えながら、彼らを見守る。  整列した軍隊の前にチェセルが立つ。 「これから夕の国との戦争が始まる。卑劣な夕の国から、陽の国に再び陽の光を
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