Alle Kapitel von 奴隷王女は宵獅子の愛に溺れる: Kapitel 41 – Kapitel 44

44 Kapitel

41話

 マリアネラは毎日祈った。チェセルと軍隊。そして両親の無事を。 そして少しでも力になればと、非常食作りや荷造りを手伝った。 負傷者や戦死者が運ばれるたびに不安で押しつぶされそうになりながらも、手当をし、安らかに眠ることを祈った。「マリアネラ様に手当していただけるだなんて、光栄です」 負傷した兵士は照れくさそうに笑う。「私にできることなど、これくらいですから……」「そんなお顔なさらないでください。チェセル隊長はご無事です。きっと今も、あなた様の為に、剣を振るっていますよ」「無事なのね、よかった……」 チェセルの無事を知って安堵するも、それは彼が運ばれてくる前の情報だ。今頃負傷しているかもしれないと思うと、再び不安にかられる。「マリアネラ様、これを」 兵士は懐から箱を取り出した。それはマリアネラがクッキーを入れて手渡した箱だ。「隊長が「美味であった」とおっしゃられていました」「そう、そうなのね……」 涙をこらえきれず、箱を抱きしめて静かに泣く。「マリアネラ様。俺は怪我が治ったら、また戦場に戻ります」「え……?」「俺達負傷者がすぐに国に帰されるのは、また戦場に戻るためなんです。怪我を癒やして戻ってこいと、チェセル隊長にも言われました。俺が戻る時、また隊長にクッキーを焼いてくれませんか? 俺が責任を持って届けますから」「いいの……?」「もちろんですとも! 愛の力は偉大ですね。隊長、いつも以上に張り切っちゃって、敵を次から次へと薙ぎ払って、すっごく頼もしくて、かっこよくって! イテテ……」 兵士は興奮気味に身振り手振りを交えながら、マリアネラに伝えてくれる。傷に障ったらしく、包帯の上から傷をさする。「もう、無理はしないで。でも、ありがとう。あなたが戻る時に、またクッキーを焼いておくわ」「はい! きっとチェセル隊長もお喜びになると思います」 マリアネラは改めて兵士に感謝を伝えると、自室に戻って箱を開ける。土埃が着いた箱の中には
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42話

 戦争が始まって半年が経つ頃、複数の負傷した兵士と共に、ふたつの棺桶が城に運ばれてきた。 マリアネラは追悼の祈りを捧げようと、蓋を開けた。中の遺体はボロボロの鎧を着ており、戦争の凄惨さをマリアネラに伝える。「私と陽の国のために……」 胸を痛め、顔にかけられた布を取ろうとすると、遺体は勢いよく起き上がる。「きゃあああっ!!!」 腰を抜かし、尻餅をつくと、蘇った兵士がマリアネラを見る。「は、母上!?」 夕の国で捕虜になっているはずの母が、ボロボロの鎧を着てにっこり微笑んでいた。「マリアネラ、会いたかったわ! こっちに来て、顔をよく見せてちょうだい」「母上!」 マリアネラは母の胸に飛びつき、涙を流す。鎧に覆われた胸に顔を強打したが、そんな痛みなど気にならないほど、胸がいっぱいになった。この瞬間をどれほど待ちわびていただろう。「よかった、本当によかった……。でも、どうして、棺桶に?」「それはね……」 母が説明をしようとすると、もうひとつの棺桶から音がした。「まさか……!」 その棺桶を開けると、父が起き上がり、マリアネラを見る。彼もボロボロの鎧を身にまとっていた。「父上!」「マリアネラ!」 父と抱き合い、再会の涙を流す。(ありがとう、チェセル……。父上と母上を取り戻してくれて……。お願い、はやく帰ってきて……) 戦場にいる想い人に心の中で感謝を伝え、彼の無事の祈り、改めて両親の顔を見る。ふたり共やつれてはいるが、思ったより元気そうだ。「今すぐ食事を用意します。その間、お風呂にお入りください」 使用人達がふたりに手を貸し、棺桶から出して鎧を脱がせる。「おっと……!」「大丈夫ですか?」 鎧を外してよろけたふたりを、使用人が支えてくれる。「父上、母上……」「そんな顔しないで。ずっと棺桶にいたから、ちょっと立ち眩みしたのよ」「鎧を外して急に体が軽くなったものでな。それに、棺桶で街の入口からここまで来たものだから、あちこち痛いんだ」 ふたりはマリアネラに心配させまいと笑ってみせるが、しばらくまともな食事をしていないふたりは、顔色があまりにも悪い。「そうだ! 皆、ふたりを座らせて待っててくれる? メリー、手伝って」「はい、マリアネラ様」 マリアネラはメリーを連れて調理場に行くと、料理長に事情を話す。「料理長。私の両親が帰
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43話

 そこは自室の向かいにある部屋だった。中に入ると部屋の奥にはふたつのベッドが並び、手前には大きな丸テーブルと3脚の椅子がある。 他にも、クローゼットやサイドテーブル、ドレッサーなどが設置されていた。「ここでお待ち下さい」「ありがとう、メリー」 メリーはにこりと微笑み、部屋を後にする。マリアネラは椅子に座って待とうとしたが、そわそわしてじっとしていられなくなり、室内を歩き回ったり、クローゼットやサイドテーブルの引き出しを開けたりした。 クローゼットにはシンプルなデザインの服やバスローブが収納してある。ドレッサーにはアクセサリーとスキンケア用品が、サイドテーブルは空っぽだった。(まだかしら……) 夕の国ではまともに入浴もできなかったのか、ふたり共かなり汚れていた。時間がかかるのもうなずけるが、それでもはやくふたりに会いたいという気持ちが強くて、今か今かと待ちわびていた。 ようやくドアが開き、シンプルながらも品のあるシャツやワンピースに身を包んだ両親が部屋に入ってくる。「父上、母上!」 ふたりに抱きつくと、石鹸の香りと共に、懐かしいにおいがした。太陽のように優しいふたりのにおいだ。「あぁ、マリアネラ……」「お前が無事だとは聞かされていたが、こうして直接会えて、私も母上も、安心したんだよ」「私も、ふたりのお顔を見て安心したわ……」 マリアネラとしてはまだ抱き合っていたかったが、ふたり共衰弱していることを思い出し、椅子に座らせる。「ふたり共、お腹が空いてるでしょう?」「そうね。サンドイッチを食べたけど、もう少し……」「あぁ、食べたからこそ、腹が減る。なんとも不思議な感覚だ」 ふたりは腹に手を添える。空腹のつらさはマリアネラにもよく分かる。「お待たせいたしました」 メリーと他の使用人達が、食欲をそそるにおいと共に、ワゴンを押して部屋に入ってくる。彼
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44話

 陽の国の両陛下奪還から1年半の月日が流れ、終戦の知らせが届く。宵の国が夕の国を討ち取ったと。その知らせを聞いて、マリアネラはすぐに宵の国の入口に行ってチェセル達を待ちたかったが、使用人に止められてしまい、やきもきしながら城で待つことになってしまった。「チェセル、無事だといいのだけど……」 マリアネラは自室から外を見る。2階からだと門が邪魔でよく見えないが、遠くから英雄達がこちらに向かって歩いてきているのが見える。街はお祭り騒ぎで、歓声と紙吹雪でいっぱいだ。 チェセルの姿を探そうと目を凝らすが、遠すぎて見えない。どうにかして城を抜け出そうかと考え始めた矢先、誰かがドアをノックした。「はい」「マリアネラ様、メリーです」 ドアを開けると、メリーがにこやかに立っている。「どうしたの?」「マリアネラ様、こちらへあなた様にお会いしたいという方々がいらっしゃいます」「誰?」「会ってからのお楽しみ、と言われていますので」 メリーは困ったように笑う。(こんな時に客人なんて……) 複雑な気持ちでメリーの後についていくと、応接室だった。メリーがノックすると、返事が聞こえてくる。声からして、若い人ではなさそうだ。「どうぞ」 メリーがドアを開けると、中では国王と王妃が仲睦まじくお茶をしていた。テーブルにはアフタヌーンティーのセットが並んでいる。 「あなた方は……!」 「お久しぶりです、マリアネラ王女」 「今まで、いったいどこに?」 マリアネラがこの城に来てから、1度も見たことがなかったからずっと気になってはいた。もしかして陽の国が戦争をしている間に亡くなったから知らなかったのかとも考えてみたが、メリー達がチェセルを王子と呼ぶのを見て、彼らが存命であることを知った。 出た答えは、「奴隷になった自分と一緒にいたくないのだろう」というもの。だが、ふたりからはマリアネラを軽蔑したり、見下したりするような雰囲気を感じられない。「私達には広すぎる城は落ち着かなくてな。別棟で暮らしているのだ。王女よ。あなたのことは使用人達から聞いていた。とてつもない苦労をしてきたな」 チェセルのような風格を持つ国王が、ねぎらいの言葉をマリアネラにかける。それだけで胸が震えた。 「えぇ、想像すらしたことのない生活をしていた時期もありました。ですが、チェセル王子が、私を救ってく
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