「悟さんのこと、聞いてます?」 女性の言葉に。 佳苗は少しだけ表情を硬くした。「いえ……」 正直に答える。 聞いていない。 聞こうともしていない。 女性は少し困ったように笑った。「そうですよね」 その反応で。 佳苗は逆に気になった。「何かあったんですか?」 尋ねる。 女性は周囲を見回した。 そして。 少し声を落とす。「会社、ほとんど来てないんです」 佳苗は黙る。 母からも似た話は聞いていた。 けれど。 これは会社の人間の言葉だ。 少し重みが違う。「体調が悪いとか……?」 女性は曖昧に首を傾げた。「どうなんでしょう」 そして。 少し迷ったあと続ける。「正直、仕事になってなかったみたいです」 佳苗は目を伏せる。 何と言えばいいのか分からない。 心配。 同情。 罪悪感。 そういうものとは少し違った。 ただ。 複雑だった。「最近、会社でも色々あって」 女性は苦笑する。「みんなピリピリしてるんですよ」 佳苗は小さく頷く。 それはそうだろう。 あの騒動があったのだから。「でも」 女性が続けた。「佳苗さんが元気そうで安心しました」 その言葉に。 佳苗は少し驚く。「私ですか?」「はい」 女性は頷いた。「私、総務部なんです」 佳苗は思わず苦笑した。「知ってます」「え?」 今度
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