三浦に案内され、部屋へ入る。 佳苗は静かに息を吐いた。 思っていたより広い部屋だった。 中央にはテーブルと椅子が並んでいる。 まだ相手は来ていないらしい。「こちらへどうぞ」 三浦に促され、席へ座る。 佳苗の隣には雄吾。 向かい側は空席のままだ。 緊張で喉が渇く。 だが不思議なことに。 逃げ出したいとは思わなかった。「大丈夫ですよ」 三浦が穏やかに言う。「今日は私がいますから」 佳苗は小さく頷いた。 その時。 廊下から足音が聞こえた。 ドアが開く。 佳苗の身体がわずかに強張る。 入ってきたのは男性二人だった。 一人は相手方の弁護士。 そしてもう一人。 悟だった。 佳苗は思わず息を呑む。 最後に会った時より痩せていた。 スーツは着ている。 髪も整えている。 だが。 以前のような余裕は感じられない。 悟もまた佳苗を見ていた。 言葉はない。 ただ。 目だけがこちらを見つめている。 三浦が立ち上がった。「それでは始めましょう」 協議は淡々と進んだ。 別居期間。 財産分与。 今後の手続き。 主に話すのは弁護士同士だ。 佳苗は必要な時だけ答える。 悟もほとんど口を開かなかった。 思っていたよりも静かな時間だった。 怒鳴り声もない。 責める言葉もない。 ただ。 結婚生活を終わらせるための話が進んでいく。 それだけだった。 やがて協議は終了した。 三浦と相手方弁護士が今後の流れを確認する。
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