植物園からの帰り道。 佳苗は窓の外を流れる景色を眺めていた。 少し疲れている。 でも。 嫌な疲れではなかった。「眠いか」 隣から声がする。 佳苗は苦笑した。「少しだけ」「寝ていいぞ」「寝ません」 即答する。 すると。 雄吾は小さく息を吐いた。「頑固だな」「先輩に言われたくありません」 思わず返す。 そのやり取りが可笑しくて、 二人とも少し笑った。 佳苗は窓へ視線を戻す。 今日一日を思い返す。 特別なことは何もなかった。 花を見て。 歩いて。 話をした。 それだけ。 それなのに。 久しぶりに楽しかったと思えた。 その時。 スマホが震えた。 母からのメッセージだった。 佳苗の表情が曇る。 雄吾も気づいたらしい。「母親か」「はい」 少し迷ったあと、 佳苗はメッセージを開いた。『今、少し話せる?』 続けて新しいメッセージが届く。『今日、うちに来て話していったの』『最近、会社も休んでいるみたい』 佳苗は固まった。 思わず画面を見返す。『仕事にも行けてないって言ってたわ』 佳苗は目を伏せる。 母はおそらく同情している。 だから伝えてきた。 でも。 佳苗には何と言えばいいのか分からなかった。「休んでいるんですか……」 ぽつりと漏れる。 雄吾はスマホの画面を見て、小さく眉を寄せた。「本人がそう言ったのか?」「たぶん&hel
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