――三日後。 アーバレストの新政庁の玉座の間は、煙と静寂に包まれていた。 帝国の紋章が焼け落ちた壁の前で、鎖に繋がれたひとりの男が引きずられてくる。 クロイツ男爵。 その顔には疲労と絶望の色が濃く刻まれていた。 彼の肩を支えるのは、彼のかつての側近たち。 彼らの軍服からは、すでに男爵の紋章が剥がされている。「……貴様ら、何をしている。私を誰と心得る――!」 男爵が吠えるが、誰も目を合わせない。 副官のマルセルが淡々と告げる。「我らは、もはや貴殿の部下ではありません。降伏文書はユリウス閣下に提出済みです。」 その声に、クロイツは言葉を失った。 膝が崩れ、鎖が床に鳴る。 広間の奥から、ツーシームと少年ユリウスが現れる。 少年はまだ若いが、今は凛とした領主の面をしていた。 ツーシームは煙草をくわえ、軽く片手を挙げた。「よう、男爵。三日ぶりだね。まさか部下に縛られて会うとは思わなかったろ?」 クロイツは顔を上げた。 その目には怒りよりも、どこか空虚なものが漂っていた。「……トブルク伯爵に……見捨てられたとき、運は尽きていたのかもしれんな……」 ユリウスが一歩前へ出た。「あなたは父の名を辱め、ヴァルカンの民を虐げた。帝国の法も、あなたをもはや庇わない」「法……? ハッ、子どもの口から法とはな……」 男爵は乾いた笑いをこぼす。「お前もいずれ知るだろう。権力の裏は、いつも汚泥なのだ」 ツーシームは無言で一歩進み、男爵の前に立った。「説教は結構。あんたの部下は、すでに投降済みだ。街も宇宙港も、もうアンタのもんじゃない」 クロイツは悔しさに唇を噛み、血を滲ませる。「……おい、海賊ツーシーム。貴様も金のために動く女だったはずだ。なぜ、あの小僧に肩入れする?」 ツーシームは肩をすくめた。「金のためさ。――あんたから奪った権益で、坊っちゃんが払う。それ以上に筋が通る話は、他にないだろ?」 一瞬、沈黙ののち、クロイツの目に、敗者の光が宿る。「……なるほど、筋は通っている。」 ユリウスは背筋を伸ばし、静かに命じた。「ルシアン=クロイツ。あなたを反逆と殺人の罪により拘束する。裁きを受ける覚悟を」 男爵はうなだれたまま、静かに呟いた。「……帝国の法の裁きか。結末としては、悪くない」 ユリウスは黙して見つめていた。 ツー
최신 업데이트 : 2026-06-08 더 보기