第五総管区外縁―― 航路図にも、資源リストにも記載されない、名もなき宙域。 重力の癖が悪く、恒星光も届きにくいその場所には、観測価値のない瓦礫として扱われてきた小さな小惑星が漂っていた。 角度を変えれば、背景の星海に溶け込み、センサーを通せば、ただの質量ノイズとして処理される。 誰も気に留めず、誰も探そうとしない――まさに「宇宙の盲点」とも言うべき位置である。 その小惑星の内部は、丁寧に、そして緻密にくり抜かれていた。 外殻の自然な歪みをそのまま残した空洞は、人工構造物の反応を極力抑え、内部に灯る最低限の光だけが、そこが基地であることを示している。――秘密基地。 反乱軍の、そして帝国の目が決して届かぬ場所。 その中央区画に、一隻の小さな次元潜航艇が、怯えた獣のように身を潜めて停泊していた。「……ふぅ。この船、空調が死にかけてるんじゃないかい?」 ハッチが開き、這い出るように姿を現したのは、紅い髪を無造作にかき上げた女海賊――ツーシームだった。「そりゃ禁煙にもなるわけだねぇ……」 彼女を迎えたのは、反乱軍側の研究者たちだった。 白衣の裾を翻しながら、興奮と緊張を隠しきれない様子で彼女を見つめている。「あなたは本当に……宇宙のエネルギーの潮流が『見える』のですね」「理論では理解していましたが、実際に目の当たりにするまでは信じられませんでした」 ツーシームは肩をすくめる。 彼女は、通常のセンサーでは捉えられない種類のエネルギーの流れを読み取り、潜航中は極端に鈍足となる次元潜航艇を、まるで追い風を受けた帆船のように走らせてみせたのだ。「この航路データは驚異的だ……!」「磁気嵐を利用した区間は、ここで合っているのか?」「あってるかどうかなんて知らないよ」 ツーシームは素っ気なく言い放つ。「あたいは成功報酬さえもらえりゃ、それでいいのさ」「……ああ、もちろんだとも」 研究者の一人が頷く。「例の『アレ』も、惑星ヴァルカンへ急いで輸送させよう」 差し出されたのは、高額なエーテル兌換札の束。 ツーシームはそれを手慣れた指で数えながら、壁のモニターへ視線をやった。――帝国公共放送。『――聖帝国ノヴァ皇帝陛下、崩御――』「あらら……皇帝陛下がお亡くなりかい」 彼女は特段驚くこともなく、硬いパイプ椅子に腰を下ろし、安煙草に
최신 업데이트 : 2026-06-10 더 보기