Todos los capítulos de 愛する妻が置き手紙一つ置いて家出をしました。~初恋を拗らせた旦那様は妻を取り戻したい~: Capítulo 101 - Capítulo 110

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100話 アンには絶対内緒

   自分の顔を両手で挟んでオリヴィアは叫び声を上げた。  鏡に映るオリヴィアは六歳の頃のオリヴィアだった。あんぐりと口をあけたまま、夢かと思って自分のお腹を抓ってみたが……痛い。と言ってもさっき顔を強打した時に夢ではないと立証済みである。 「うぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ???」 (好きな人と一つになったら、若返るって効果があるの?) 「こんな姿でイアンにキスしたら、イアンが捕まっちゃうわね……」  「──奥様」と扉をコンコンと叩く音でオリヴィアはピョンと跳ね上がった。慌てて寝台へ戻り、シーツへ潜る。 「叫び声が聞こえましたが、どうされました?」 「エレン……だ、大丈夫、ベッドから寝ぼけて落ちたの!」  メイドのエレンだ。心配そうな声音で扉の前に彼女は立っていた。 「ケガはされていませんか? 救急箱をお持ちしましょうか?」 「だ、大丈夫よ! 痛くないから……!」  と言えばエレンは「しかし……そんな叫び声ではありませんでした」と食い下がらない。 「あ、あ、あの、お腹がちょっとだけ、痛くて」 「ではお腹を温める物をお持ちしましょう」  まずい。  この姿を見られたら、誰か分からずに追い出されてしまう。 「そ、その、痛いって言うのは、病気じゃなくて、その、イアンと、昨夜、あれを、したからなの! あれっていうのは、交わりね!!」  他人に言うとなると恥ずかしく、全身カァーと赤くなってしまう。 「奥様のお身体を考えず激しめにされたんですね?」  信じられない、と軽蔑の声が上がってオリヴィアは心中でイアンに謝罪した。昨夜の彼はとても優しかった。誤解を解こうと口を開いたものの、それを告げるには少々ばかり遅かったようである。 「あんなデカい身体で向かってこられたら、お腹痛いで済む筈ありませんわ。そんな奥様を一人放って置いてお勤めに出て行かれるなんて夫失格です。身を清めるお風呂の準備と医者の手配を致します」 「医者!?」 (大袈裟じゃない!?)  ドアの前を去ろうとするエレンをオリヴィアは呼び止めた。この姿でみんなの前に
last updateÚltima actualización : 2026-09-24
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101話 ついに離婚ですか!?

   ※    アンはオリヴィアを起こす為に、彼女の部屋のドアをノックするも反応がない。ゆっくりとドアを開けると姿がなかった。昨夜、オリヴィアがイアンへ謝罪に向かってから戻ってきていないようだ。 (仲直りしたか)  アンはチッと舌打ちをした。  今度はオリヴィアの部屋と繋がった夫婦の寝室のドアを叩くと反応がない。寝台はもぬけの殻でシーツに乱れがなかった。 (あの男の部屋に行ったっきりか……?)  そして、夫婦の寝室に繋がったイアンの部屋の扉をノックしようとしたら、名前を呼ばれて手を止めた。声がした方に視線を送るとエレンだった。 「奥様がしばらくは一人にして欲しいって言ってたわ」 「一人に? なぜです?」 「昨日、旦那様とお話しされて色々考えたいんですって」 「ついに離婚ですか?」  やった、とアンは笑顔になった。エレンの顰め面なんて見てもいなかったし「違うわよ」という否定の言葉も聞いていない。 「と、とにかく! 部屋に行ってはダメよ!」  エレンからギュッと手を握られ念押しされているものの、アンは返事だけして全く聞いていなかった。彼女の頭の中は『オリヴィア様とあの男が離婚する』という事でいっぱいだった。 「人の話を聞いてる!?」  グイッと顔を覗き込まれ、エレンの手を払い今度は自分が彼女の手を握り締め、己に引き寄せた。  スラッと背が高く、中性的な顔をしているアンから顔を近付けられて同性にも関わらずエレンはドギマギしてしまう。しかも、 「エレン、ちゃんと聞いてます」  女性にしては低音で、耳元で囁かれ顔が一気に熱くなった。先ほど、オリヴィアの『愛された跡』というのを同時に思い出してしまって余計に顔が火照ってしまった。 「お嬢様が考えるお時間を邪魔しません」  エレンはアンを何度も振り返って、「ぜ、ぜったいにそっとしとくのよ……!」と念を押しながらその場を後にした。  アンは笑顔のまま手を振って見送る。彼女が廊下を曲がったのを見届けて「よっしゃーーーー!!」とガッツポーズ。 「オリヴィア様は
last updateÚltima actualización : 2026-09-25
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102話 それが間違いだった

   アンは二人が結婚して同居した初日、同じベッドで寝ている姿を目撃して祖父から譲り受けた短剣を枕に刺したのは昨日のことのように思い出せる。  正直一緒に寝ることは今でも反対している。しかし、オリヴィアから 『お母様がいた頃のように誰かと同じベッドで寝たい』 『アンは寝てくれないでしょう?』  と言われて、最終的にアンが折れた。 『命に関わらない』  だろう……。しかし、貞操の危機はある。  万が一の場合、アンは常に動けるように就寝時でも短剣を枕の下に隠していたし、叫び声が聞こえたらすぐにでも動けるように寝着は動きやすいものを選んでいる。  だが、この数年間奇跡的に何もなかった。イアンという男はオリヴィアを好きだと言ってはいるものの、手を出す気配はない。 (無駄に筋肉を鍛えているわけではないな)  アンは男の機微に疎かった。だから、イアンがどれほど耐えているかなんぞ想像ができないのである。だから、オリヴィアがイアンとくっ付いて寝ている事に対して、ただ『鍛えている男は違うな』という感想しか抱いていなかった。イアンの努力の賜物だと考えた事がない。そういう彼女だから、夫婦の寝室とイアンの部屋が夫婦の営みの音が漏れないように作られていることなんぞ知りもしなかった。  アンが真実を知るのは二十分後。食堂の前を通過しようとした時である。  離婚の準備に新しいドレスを新調すると良いかもしれない。あの男から慰謝料もぶんどって──とか考えながらスキップして廊下を歩いていると、『奥様』という単語が耳に入って彼女は咄嗟に壁に背をつけて立ち、盗み聞きをする。 『奥様と旦那様が遂に結ばれたのね』  キャ~というメイドの悲鳴。語尾にハートマークがついていてアンが顔を顰めた。 (結ばれた、とは……?) 『やっと奥様に手を出されたんですね~。見ていてやきもきしてましたもん』 『奥様もやっとご自分の気持ちに気付いたんですね』 『愛された跡を見られたくない、って奥様が言ったんですって。きっと、初夜は激しかったんだわ』  キャ~と色めき
last updateÚltima actualización : 2026-09-25
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103話 たった一人を守れず

   アンの実家は帝国から遠くにある辺境の地だ。首都からどんなに馬を走らせても早くて二週間はかかる場所だ。 大昔、帝国の皇女が恋に落ちた騎士が居た。二人は身分の差があったものの、想い合っていたとされる。騎士は彼女を手に入れる為、数多くの武勲を挙げ遂には認められて、この地を皇帝から受け賜り、それから皇女は騎士の元へ降嫁した。以来アスコット家はこの土地を治め良き領主として、代々騎士の家系として繁栄し続けた。現在は二人の子孫であるアスコット家長女、アンの母親ジェレミアが領主として治めている。そこへ皇帝が邪険にしていた腹違いの弟、キースを遠くに行かせたいが為に皇帝の命で婿にさせた。 政略結婚だったが皇帝の思いとは裏腹に二人の仲は良好だった。曲がった事が嫌いで男勝りなジェレミアに思慮深いキースは意外とマッチした。だから愛し合った末に子供が五人、誕生している。 その実家へ足を踏み入れると、最初目にしたものにアンは唖然とした。危篤だと知らされていた父親が手紙を送った三歳年上の兄と元気に剣の稽古をしていたからだ。話を聞けば、そんな手紙を送っていないと言われ、アンは青褪める。胸騒ぎを抱えたまま飲まず食わずで馬を走らせても、二日早く着いただけだった。結果二十六日も留守にしてしまった。「オリヴィア皇女!!」 小屋に足を踏み入れるとオリヴィア様の姿はなかった。小屋を出た際にあった飲みかけのカップが置かれていて、虫が浮いている。それからテーブルの上には元凶の手紙と封筒があった。手に取ってアスコット家の家紋の入った蝋封をよく見れば精密に作られた偽物だった。剣二本を交差した中央に描かれた鷹に爪が一本足りない。右下がりの癖まで兄の筆跡と同じなのに、これは偽物だ。 小屋を出て城内を探し回る。四姉妹の元にもオリヴィアはおらず、行き先を訊ねても答えるわけがない。ただ、オリヴィアと同じ年の第四皇女だけが愉悦に口元を歪めていて、それが異様に不気味だった。 最後に踏み入れたのは皇帝の寝室がある王宮だった。部屋に近付けば近付くほど、泣き声と叫び声が聞こえる。オリヴィア皇女と名を呼ぶと「助けて」とアンの名前とともに助けを求められる声が耳に入った。剣を抜き、寝室へ向かう途中の
last updateÚltima actualización : 2026-09-26
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104話 また守れなかった

  ※ ──ドンドンドン!! 七年前の過去を思い出しながら、アンはオリヴィアが寝ているだろうイアンの寝室のドアを激しくノックした。 七年前に目撃した光景のようにシーツに包まって震えているかもしれない──そう思うと息が上手くできず息苦しさを覚えた。いっそ、この息の根をオリヴィア様に止めてもらいたい。オリヴィア様をまた守れなかった私は彼女に殺されるべきだ。「オリヴィア様!! ご無事ですか!? あのクソ男に手籠めにされたと聞いて、私は、私はっ……!」 泣いている場合じゃないのに涙が溢れた。必死になって袖で拭くのに自分の意思とは反対に一向にやんでくれない。 ドアノブを回すと鍵がかかっているようで、アンはガチャガチャと回した。「アン!」 声が聞こえて、アンは安堵した。意識はあるようだ。「オリヴィア様の元へ今から行きますから」「アン、落ち着いて。私はなんともないから!」 まだ、あの男を庇うのか──。なんてお優しい。 アンは恋を知らない。オリヴィアに対する忠誠心だけで生きてきた彼女に恋をする暇がなかったと言えばなかったのだが、決して騎士仲間同士でも美人の部類に入る彼女はモテないわけではなかった。しかし理想が高い彼女は自分より弱い男に興味が湧かず、三十一年生きてきた。「エレンから行かないように言われなかったの?」「言われました。しかし、私は使用人達の話を聞いてしまったのです。オリヴィア様があの男から手籠めにされたと聞きました」 使用人達はそんな事一言も言っていないのだが……アンの脳内でそう変換されてしまっている。「手籠めなんてされていないわ」「グスッ、うっ、うぅっ……お辛かったでしょう……」「アン? 泣いているの?」 泣きじゃくるアンに面食らったオリヴィアは「泣かないで」「私はなんともないから」と慰める言葉を室内からアンに伝える。その優しさにもっとアンは嗚咽を溢した。「ここを開けて下さい。手当しな
last updateÚltima actualización : 2026-09-26
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105話 の世には居ない筈

  蹴り飛ばした音と共に、悲鳴がこだまする。部屋に一歩足を踏み入れると寝台の上が小さく盛り上がっていた。 寝台に向かって足を進めるも、足元に何か落ちていることに気が付いた。拾いあげると、昨夜アンがオリヴィアに着せた檸檬色のナイトウエアだ。ビリビリに引き裂かれたそれを握り締め、彼女は顔を歪めた。「無理矢理だったんですね」「無理矢理じゃないわ。同意のもとなの」「あの男を庇わないで下さい」 盛り上がったシーツにそっと手を触れると中にいるオリヴィアの震えが手に伝わった。シーツを掴み引っ張ろうとするも、中からも引っ張られてしまう。「私のことは、放っておいて!」「いいえ! そういうわけにはいきません! 荷物をまとめましょう!」「まとめないったら!」 グイッ! と掴む。そこまで強く引っ張ったつもりはなかったが、簡単にシーツは奪えた──が、目線の高さにオリヴィアはいなかった。「あっ!」 と声が目線より下から聞こえて、視線を下げると、オリヴィアはそこにいた。 カーテンの隙間から漏れた日の光を浴びてキラキラ宝石のように光る銀髪、染み一つない肌──くりっとした大きな目。オリヴィアが居る筈なのに、自分が知る彼女ではない。いや、知ってはいる。知ってはいるのだが──……。「随分、小さくなられて……」 寝台に素っ裸で身を小さくするオリヴィアを呆然と見下ろす。「わ、わたしって分かるの……?」 オロオロと恐れるオリヴィアをシーツで包み込んだ。「どれだけ毎日いっしょに過ごしたとお思いです」 跪いて目線の高さを合わせると、オリヴィアの瞳に、零れんばかりの涙が溜まり出した。「とりあえず……天使そのものなので画家を連れてきて良いですか?」 ※ オリヴィアの話をアンはひたすら無視して、六歳のオリヴィアを褒め称えた。「六歳になった私を見てもイアンは気付いてくれるかしら?」
last updateÚltima actualización : 2026-09-26
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106話 イアンにかけられた呪い

  「顔をあげなさい、このクズが」 可愛らしい声と容姿なのに、いつもあの子は毒を吐く。細い綺麗な指で私の頬を殴り、鞭を持ち、振り上げる。細い脚で頭を踏みつけ、コロコロと可愛らしい声で笑う──。「聞こえていないの?」 枕を抱き締めたまま爪先からやっとの事で視線を上げて姿を瞳に映し出すと綺麗な顔を歪めて立つ妹──ミシェルが裸で立っていた。 十三歳で亡くなった筈のミシェルは成長した姿だった。妖艶に笑う彼女からは昔の幼さは消えている。ウェーブがかった栗色の髪をかき上げてるのをオリヴィアは呆然と見た。言葉を発そうにも震えて出てこない。彼女にされた仕打ちは、そう簡単に忘れられないのだから。(死んだ、って聞かされたのに、どうして目の前にいるの……?) 考えても答えが出なかった。 寝台の上で後退れば彼女もまた一歩近付いてくる。「夢──」「にしては生々しいわね」 顔がグイっと近付いてきて、碧い瞳がスゥっと細くなる。それから右手が上げられて条件反射でオリヴィアは目を閉じた──ら、痛みはいつまで経ってもなくて、馬鹿にされたように笑われた。「いつまで経ってもビビりね」 クスクス笑いながら言われ、反論出来ない。「ど、どうして生きているの……?」「ハッ。そんな事どうでも良いのよオリヴィア。それは私の台詞なの──どうしてあの男はまだ生きてるの?」「あの男……?」 忌々しそうに訊ねたミシェルにそう聞き返せば、「イアン・ジョー・グゥインよ」「イアンに何したの!?」 ニィ、と口角が上がる。昔と変わらないその表情に吐き気がした。「お姉様とグゥインが婚約をした時、呪いをかけたの」 お姉様、なんて今まで言った事がないのにわざとらしい──。「そんな事ができるの?」「えぇ。私魔女だから」(魔女?) 魔女が存在する事は聞いた事がある。しかし彼
last updateÚltima actualización : 2026-09-27
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107話 スェミス大国を滅ぼす

 「スェミス大国を滅ぼすの」「──はぁ?」 あまりにも突拍子過ぎて間抜けな声が出てしまう。裸でふんぞり返るミシェルが憐れに見えてきた。「お母様を殺した事は恨んではいないわ。でも私の心臓に剣を刺したグゥインを私は一生許さない」「でも、貴女は生きているわ」「身代わりを立てたの。首を刎ねられる寸前にね。でも刺されはしたから完治するまでだいぶ時間がかかったわ」 その身代わりが誰かは恐らく彼女の周りに居たとりまきの一人だろう。私が彼女に痛めつけられている姿をただ傍観していた人たちだから可哀想だという感情は湧かなかったが。「私がこの国を乗っ取る為にまず邪魔なのはグゥインよ。それ以外はどうにかなる」「その自信はどこから来るの? イアンだけがスェミスを防衛している訳じゃないのよ」「私には協力者がいるの」「──協力者?」(ミシェルに協力者──? 他にも生き残りが居るの?) 旧帝国の皇族と皇帝派もろとも処刑され生き残りはいないと聞いていたのに。(イアンに言わなきゃ) 服をアンから用意して貰ったら、すぐに出掛けよう。アンが説明すればこの姿でも問題ないだろうし。 そう考えあぐねていると、頭上からミシェルに話しかけられた。「まぁ良いわ。グゥインを殺せなかったけど、呪いが失敗した訳じゃないから。呪いが失敗すれば術者に返ってくる。でも私には返ってきていない。だから呪い自体は発動している筈なのよ。なのに、あの男は死んでいない……何かがおかしいわ。今後どう作用するかは私にも分からない。お姉様と顔を合わせた時に何か起きるかもしれないわね」 自分の考えが読まれて分かり易く表情を崩してしまう。その様子にミシェルはニタリと笑った。「赤髪を使って伝えてもらうのも無駄よ。余計な事はしない事ね。もし、計画が漏れるような事があれば、あんたの秘密をバラすから」 幽体姿のミシェルは水晶玉を取り出した。彼女がブツブツと呪文を唱えると、パァッと水晶玉が光に包まれる。それから玉の中が揺らぎ、人影の
last updateÚltima actualización : 2026-09-27
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108話 言いたきゃ、言えば良いじゃない

 「これは記録魔法よ」「どうして、そんなものを……そこまで私の事が嫌いなの?」「大嫌いよ」「……私が何をしたの」 血は繋がっていない姉妹達はオリヴィアを苛める事を楽しんでいた。その中でミシェルからの体罰が一番酷かったように思う。髪を引っ張り、鋏で髪を切り、馬乗りになって頬を殴る。それを姉三人は愉快に笑った。オリヴィアは彼女達の機嫌を損なわないように息を潜めて過ごしていたのに、関係なく暇があればオリヴィアを呼び出して笑いものにして彼女の心を痛めつけた。姉達が他所へ嫁いで行ってミシェルだけ残ったが、暴力はエスカレートした。鞭で背中を痛めつけるようになった。『目が気に入らない』『髪が目障り』『服の色が気に入らない』 理由はなんでも良かったのだろう。オリヴィアをただ痛めつけられたら、何でも良かったのだ。頭を踏みつけられ、汚れた床を舐めて綺麗にしろと命令された事だってある。一度拒否すれば、鞭で散々痛めつけられた。可愛らしい顔に加虐に満ちた笑みを浮かべ、鞭を何度も何度も何度も振り下ろす。 オリヴィアはブルっと大きく身震いをした。 六歳になったオリヴィアの背中は真っ新で染み一つもないのに、思い出したせいで鞭で打たれた後のようにジンジンと疼いたように痛みだした。俯き震えているオリヴィアを見て、ミシェルはさも愉快そうだった。「あんたの存在そのものが嫌なの。私より先に生まれたことも気に入らない。どこの種馬の子供かも分からないのに皇女って呼ばれるのが気に入らない」(そんなに嫌いなら、放っておいたら良かったのに) そっちが勝手に絡んできたんじゃない――……。 お母様は盾になって私を守ってくれた。結果……殺されてしまったけど、お母様が亡くなって私を守る盾がなくなったなら捨て置いてくれたら良かったのに。(あぁ……でも、そうなっていたら私はイアンと再会できなかったのね)「でも、歳を取ったらあんたの瞳は嫌いじゃなくなったわ。むしろ今は好
last updateÚltima actualización : 2026-09-27
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109話 お母様の記録もあるの

  「……白髪。地獄に堕ちるのは貴女よ」  懐かしいあだ名で呼ばれる。 クツクツとした笑い声が徐々に大きくなっていく。腹を抱えて笑うミシェルにオリヴィアは眉を顰めた。「あー、おかしい」 笑い過ぎて出た涙を指先で掬ってから、訝し気にこちらを見上げるオリヴィアにミシェルは意地悪く笑みを深めた。「あんただけの記録とは言っていないわ。あんたの母親の記録もあるの」「なんですって……?」 無邪気な笑いを浮かべるミシェルとは逆にオリヴィアの表情は消えていった。「私のお母様は第四側室として嫁いだけど、その前からお父様とは顔見知りだったの。お母様は媚薬や薬品を皇宮へ流していたから。その時、この水晶玉をお父様に贈ったわ。お父様は悩んでいたわ。スェミス大国から嫁いできたあんたの母親が自分に靡かなかったから。国に帰りたい、と故郷のお姉様に一筆書こうとしていたくらいよ。プライドだけは高いお父様にとって許せる事ではないわよね。だから、あんたの母親と初夜の晩から毎晩のセックスを記録して脅したのよ。『逃げようとか離縁を考えたりすれば、お前の家族に見せる』 って、ね。それを恐れて従順になったらしいわ」「…………」「お母様もずっとこれであんたの母親を脅していたわ。誰にも見せたくなくて何でも言う事をきくって面白がってた」 言葉を発せずにいるオリヴィアを見てミシェルは歓喜した。オリヴィアが幼い頃から大嫌いだった。でも、彼女の絶望に満ちた表情を見ると加虐心が刺激されて心地良い。大嫌いで、でも苦痛に満ちた表情は大好きで……真逆な感情が混ざり合い、歪な感情となって身体中を駆け巡った。「あんたの母親の最期も残っているわ」 ミシェルは口角を釣り上げる。「ぶっさいくな死に顔が映ってるわ!」「──殺してやる!」 オリヴィアは咆哮した。 怒りに任せて声を荒げ暴言を吐いたのは人生で初めてだった
last updateÚltima actualización : 2026-09-28
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