「唇……」 突然ボソッと呟くイアンの声に釣られて下唇をペロリと舐めると若干、鉄の味がした。どうやら声を我慢する為に噛んだはいいものの、力加減を誤って怪我をしてしまったようだ。 彼を見上げると、何故か彼が泣き出しそうな顔をしている。そしてイアンから謝られてオリヴィアは首を振った。悪いのはイアンじゃない。それなのに項垂れているイアンを見て、大丈夫という意味合いを込めてイアンの首に腕を回してギュッと引き寄せる。スリスリとイアンの頬に自分の頬を擦り寄せると、彼もまた甘えるように同じ仕草をしてきた。 自分よりもうんと年上の筈なのに、同じ仕草をされてキュンと胸が高鳴ってしまう。横目でイアンを見ると、愛おしそうに見つめる瞳とかち合って、オリヴィアもまた目を細めた。それから、そっと心に誓う。(もう二度と、声を我慢するのやめよう……) 自分は悪くないのに、イアンからそんな表情をされるよりも、全然良いから。(おかしな声さえ出なきゃ大丈夫よ) オリヴィアはイアンから離れて、再度背中をベッドに沈める。 太腿同士をくっつけて脚を閉じていると、イアンはオリヴィアの首筋に顔を埋めた。チュッチュッと服で隠れていない肌の部分を啄むようにキスをして、オリヴィアから吐息が漏れる。そのキスをじっと受けていると、ゴツゴツしている指が足首に触れ、ナイトウエアの裾を捲し上げられて、オリヴィアは咄嗟にイアンの手を取った。 首筋に埋もれていたイアンの顔が目の前に来る。目の奥の獣はまだ彼の中に居て、オリヴィアはその獣から視線を逸らす事はせず、じっと見つめた。 ──どうしても、イアンに言わなきゃならない事がある。 それを隠したままで彼にこのまま抱かれる事は、ダメな気がした……だって、イアンは自分の胸の奥にしまった私への昏い想いを告白してくれたから、私だけ隠すのは違う気がした。「わたし、イアンに言わなきゃならないことがあって」(私、処女じゃないの) 声に出来ずに言葉が詰まる。
Última actualización : 2026-09-06 Leer más