All Chapters of 最強のママチャリに乗って美少女と一緒に異世界をのんびりと旅する: Chapter 11 - Chapter 20

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何もない村と盲目の少女――2

 リリアナさんの家に戻り、しばらくゆっくりとさせてもらった後、夕食の時間になった。 チャーリーは客室に残り、僕とクルシェはダイニングへ行った。「すみません、こんなものしか出せませんが……」 リリアナさんが豆と芋がごろごろはいったスープと小さなパンをテーブルの上に置いた。「いえ、十分すぎるくらいです、ありがとうございます」「とてもありがたいです。うん、おいしそうだ」 クルシェと僕がお礼を言ってから、食事を始めた、 温かいスープをふーふーと冷ましながら食べていると、向かい側に座る盲目の少女がパンをスープに浸しながら声をかけてきた。「ねぇねぇ、旅の話を聞かせてよ、いろんなところに行ってるんでしょ?」「旅かぁ、そうだなぁ……」 僕はご飯を食べながら、今までの旅で体験したことを語った。 楽しかったことより苦労したことのほうが圧倒的に多いが、そういうことは話さずに、子供が興味を持ちそうなことだけを話した。 人の言葉をしゃべる植物の話とか、赤い海の話とか ある森で見目麗しいエルフに会ったこととか、ある雪の町でゴーストアップルというリンゴの形をした氷の塊を見た話とか、精一杯頭の中で面白そうな話題を探して喋った。 気づいたらご飯を食べ終えていた。盲目の少女は僕の長話を聞いているうちにうとうととし始め、とうとうすーすーと寝息を立ててしまった。「あらあら……よいしょっと」 リリアナさんは少女を負ぶって、寝室の方へ行った。 クルシェも「眠くなってきました……」と言って、客室の方へ行った。 長い間、しゃべり続けて疲れたので、ふぅと一息吐いて、お茶を飲んでいると、リリアナさんが戻ってきた。「フェイをベッドで寝かせてきました」「お疲れ様です」「そちらの方こそ、お疲れ様です、あ、お茶のお替り、いりますか?」「あ、では、お願いします」 リリアナさんがキッチンの方へ行き、急須持ってきて、僕の湯飲みにお茶を注いでから、僕の向かい側の席に座った。「ありがとうございます」「いえいえ……ところで、ごめんなさいね、旅人が珍しいものだから、あの子、はしゃいじゃって」「いえ、久しぶりにこんなに人と話せて、僕も楽しかったです」「そうですか? ならいいのですけど……」 とリリアナさんも自身の湯飲みにお茶を注いで、丁寧に両手で湯呑を持って一口すすった。「それにして
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悪人がいない町と赤髪の美男子――1

 今日も二人乗りで自転車をこいでいると、前方に町らしきものが見えてきた。「あそこは悪人がいない町と呼ばれているらしいわ」  とチャーリーが言うと、荷台に乗るクルシェが見るからにテンションが上がった。「悪人がいない町……なんだかすごいよさげなところですね!」「本当に悪人がいなかったらね……でも……」「でも?」 僕がチャーリーに訊くと、彼は少し間をおいてから、「いや、悪人ってどういう人のことを言っているのかな……と思ってね」 たしかに、悪の定義は明確でないし、人によって何を悪とするかは違うだろうから、悪人のいない町とだけ聞いても、いまいちイメージできないよな。 まぁ、そもそも、あくまで悪人がいない町と呼ばれている、というだけの話だから、実際のところはどうかわからないか。「そこについては行ってみないとわからないな」「そうね、それを確かめるためにも早く向かいましょう」 とチャーリーも言ったことだし、僕はペダルに乗せた足に力に力を入れ、先へ急いだ。 そして数十分後、町の入り口の前まで来て、自転車を降りたとき――「おっ、その珍妙な乗り物は……もしかして、テルとチャーリーじゃないか? おーい!」 突然、後ろから声をかけられた。 振り返ると、なんかものすごいイケメンがこっちに向かってきていた。 ……と思ったら、知り合いだった。 180センチを優に超える長身、手足が長くてスタイル抜群、燃えるような赤い髪、湖のように澄んだ青色の瞳、彫りの深い顔立ち……相変わらず、むかつくくらいルックスがいいな、こいつは。「おいおい、なんだよ、テル、その反応は、俺のこと忘れたのか? 寂しいじゃないか」 と僕たちの前まで足早に来ると、彼は言った。「いや、覚えてるよ、キラン」 キラン・グールディング。 僕と同じ旅人だ。最初に出会ったのは一年くらい前、最後に会ったのは半年前くらいか? かなり腕の立つ剣士で、勇者のパーティに誘われたこともあったとかなんとか。でも、ずっと旅人として各地をぶらぶらと放浪しているやつなので、その誘いは断ったんだと思う。なんでかはわからないが……。「チャーリーも久しぶりだな」「ええ、ほんと久しぶりね……ところで、あなた、さっき、あたしのこと珍妙な乗り物とか言わなかった?」 とチャーリーが怒気を含んだ声で言うと、彼は素知らぬ顔をし
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悪人がいない町と赤髪の美男子――2

 宿へ行くことにしたのだが、当然、初めて来た町なので僕たちはその場所を知らない。 ということで、僕たちは通りがかった人に場所を訊くことにした。「この町は川を境に、北側と南側に分かれているんだけど、宿は橋を渡って、北側の方へ行くと、一軒だけあるよ」「ありがとうございます」 僕はお礼を言ってから、自転車を押して歩きだす。キランとクルシェも後ろからついてくる。 そしてまずは橋を渡って、北側に着いたのだが……「テル? さっきから三十分くらいグルグルしているんだが、迷ったんじゃないか?」 とキランが肩をすくめて、言う。「どうやらそのようだ」「おいおい、しっかりしてくれ」 しかたないだろ、土地勘ないんだから。 ていうか、お前だって、宿の場所わからないだろ。 と思っていると、老紳士というかんじの風貌をした男性が声をかけてきた。「どうしました、何か困っているように見えますけど」「あ、すみません、宿屋の場所がわからなくて」「あ、宿屋なら……いえ、そうですね、私がそこまで案内しましょう」 その老紳士についていくこと数十分後、宿屋の前に無事たどり着いたので、僕たちはお礼を言ってから別れた。「この町、ほんと親切な人ばかりですね」 とこの場から離れていく老紳士を見送りながら、クルシェが言うと、キランが眉根を寄せて、なにやらつぶやいていた。「おかしい、絶対に……ありえない……」 耳をよくすますと、そう言っているのが聞こえた。 声をかけようかと思ったが、なんだかそうしづらい雰囲気だったのでやめておいた。 なにがおかしいかはわからないけど、そのうち彼の方から話してくれるだろうと、そう考えることにした。 宿屋に入って、部屋を手配してもらい、用意された三階の客室に着くと、僕は荷物をそこら辺に置いてベッドに倒れこんだ。「お疲れですか、ご主人様?」「ああ、うん、ちょっと眠らせてもらうね」「わかりました、夕飯の時間になったら、起こしますね」「頼む」 目が覚めた。 ぐーぐーとチャーリーのいびきが聞こえる、彼も寝ているようだ。 起き上がり、クルシェの方を見ると、彼女は編み物をしていた。彼女は暇なときああやって防寒具を編んだりぬいぐるみを編んだりしている。「あれ、キランは?」 部屋の中を見渡すが、あいつの姿がない。「クルシェ、どこ行ったかわかる?
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悪人がいない町と赤髪の美男子――3

 ニット帽のような帽子をかぶった子供――中性的な容姿だけどたぶん服装的に男の子――が、橋のへりでモンスターに足を掴まれていた。「チャーリー!」「わかってるわ」 僕が彼の名を呼ばなくても、彼はもうとっくに魔法を詠唱しようとしていた。「シンティラ!」  チャーリーがそう唱えると、バチバチと音を鳴らす電気の塊がモンスターの方へ向かっていった。 そのモンスターは子供の脚から手を放し、間一髪で避けて、再び川の中へ入っていく。 魔物の手が離れた子供は、こちらに一目散に逃げてきた。「怪我はない?」 と訊くと、その子は体を震わせながら、こくこくと頷いた。「もう大丈夫、僕たちがなんとかするから、巻き込まれないように遠くに離れていて」「う、うん」 その帽子をかぶった子は走り去っていく。「よし、俺たちも加勢するぞ!」 と僕たちの後ろにいた町民たちが前へ出ようとする。「いや、いいんで、後ろで見守っていてください!」 と僕が叫ぶが、町民たちは言うことを聞かなかった。「いや、少しでも多い方がいいだろ」「私たちにだって、できることが――」 と言いながら武器を構える町民たちに、チャーリーが声を張り合げた。「あんたたちが来ても、邪魔! 離れたところにいなさい!」」 明らかにイラついているのがわかる声。 さすがの町民たちもその剣幕に気圧されたようで、彼らはようやく言うことを聞いて、後ろに下がってくれた。 町民の集団と、先ほどモンスターに襲われていたニット帽の子が十分に離れたのを確認して、僕は再び橋の方へ体を向けた。 先ほどの半魚人的な見た目のモンスターが、川から頭をだして、橋の下まで泳いできているのが見えた。 そして、橋脚からよじ登って、そいつは橋の上まで来た。「さっき、魔法を使ったのは、その奇妙な乗り物か?」 とそのモンスターは喋った。「奇妙ってなによ、失礼ね、あんたの方こそ変な姿じゃない、なんていうモンスターかは知らないけどさ」 とチャーリーが言った後、モンスターの立つ地面に魔方陣が広がった。「イプピアーラ、それが俺の名だ、覚えておけ……グラキエス!」 敵が詠唱すると、つららのような形の氷が放たれる。 それはチャーリーに直撃したが、ほぼ無傷。わずかに傷ついた箇所も自動修復のスキルによって瞬時に元通りになった。「嘘だろ!?」 モ
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悪人がいない町と赤髪の美男子――4

 魔法で人形を操っている人物が誰かわかった僕たちは、そいつを探すが、酒場にいなかったので、店の外に出た。 店を出て少し先にある、広場のベンチにそいつはいた。「な、なにか、用ですか?」 ニット帽をかぶった男の子が、緊張した面持ちで、言う。 イプピアーラに襲われていた子だ。「君だよね、人形を動かしているの?」 僕が言うと、その子の瞳が大きく開いた。 こんな子供がこの町の全ての人形を操るほどすごい魔法を使っているなんて、にわかには信じがいたが、そうとしか考えられない。 他の町民たちは命の危険を顧みずにモンスターと戦おうとしていたし、僕たちの戦いを決着がつくまでずっと見守っていたけど、この子だけは町民たちの後ろでびくびくと怯えていた。 この子だけが、他の民と――人形たちと、明らかに性格が違った。「バレちゃいましたか……そうです、この町の人たちはボク以外みんな人形で、ボクが魔法で動かしていました」「なんでそんなことを……」 と僕が訊くと、そのニット帽の子は卒業アルバムを見ているかのような表情で、「少し、昔のことを話さないといけないですね、それを説明するためには」 彼はゆっくりと過去を語り始めた。「ボクは昔、この町の人たちにいじめられていたんです、みんなと違っていたから……」「違っていた?」 彼の姿をよく見てみるが、他の人と比べて、特別変わった点などないように感じる。 僕が疑問に思っていることが伝わったのか、彼は苦笑して、「これです」 と言って、帽子を脱いだ。 露わになったその子の頭には猫耳のようなものがついていた。「獣人?」「はい、父が人間で、母が獣人だったんです。父も母も病気で死んで、この町に獣の耳がついている人が僕しかいなかったので、それで迫害を受けて……僕に悪口を言ってきたり、暴力をふるってきたり、僕だけ税金を多くとってきたり、そういうことをたくさんされました……」 僕の問いに、苦しそうに彼は答えてくれた。「この町では珍しかったのかもしれないが、場所によってはたくさんいるけどな」「あたしの故郷でも、別に珍しい存在じゃなかったわ」「私の生まれ育った国にも多くはないですけど、少なからずいました」 とキラン、チャーリー、クルシェが言うと、猫耳の少年は、顔を明るくした。「そうなんですか、それを聞いて、少し安心しました」
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嘆きの森と吟遊詩人の美女

「あのー……ここ、本当に通らないといけないんですか?」 と自転車を押して歩く僕の上着を掴んで、ビクビクと震えながらクルシェは言う。 僕たちは嘆きの森と呼ばれているところに来ていた。次の目的地へ行くためには、この森を通らなければならないのだ。「あの……なんでここって嘆きの森って呼ばれているんですか?」 とクルシェが左右に顔を動かして、周囲を落ち着きなく警戒しながら言う。「ここで死んだ冒険者とか商人たちの霊が、嘆きの声を夜な夜な響かせているって言われているからよ」「やっぱり今すぐ来た道を引き返しましょう!」 チャーリーがビビらせるようなことを言ったから、クルシェが僕の服を引っ張って逆方向へ歩こうとする。「ちょっと、クルシェ、わがまま言わないの!」「でも、ママ……」「大丈夫よ、どんなモンスターやおばけが現れても、あたしが追い払ってあげるから」 それを聞いて、クルシェはしぶしぶ森を出ようとするのを諦めた。 何だか本当に母親と子供みたいなやり取りだったな。 それから歩き続けること二時間ほど。 クルシェが不安そうに訊いてきた。 「あの……大丈夫、なんでしょうか?」「なにがよ」「さっきから全然景色が変わらないんですけど、私たちってちゃんと出口へ向かっているんですよね?」「そのはずだけど?」 とチャーリーが言っても、クルシェの表情は依然として暗かった。「大丈夫だよ、ちゃんと目印を定期的につけてあるから」 数分くらいの頻度で、近くにあった木に印をつけたり、形の特徴的な石を道に置いたりしている。 だから、大丈夫……なはず。 少なくとも、目印をたどって、来た道を引き返すことはできるはずだ。  さらに歩いて一時間以上が経過した。「暗くなってきたわね」 とチャーリーが言ったので、僕は立ち止まった。「そろそろ野宿するか」「え、ここでですか!?」「ああ」「しかたないでしょう、この暗い中、これ以上奥へ進むのは危険だわ」「うう……」 クルシェが泣きそうな目でこちらを見てくるが、残念ながらこの決定を変えるつもりはない。チャーリーの言うとおり、夜にこの視界の良くない森を移動するのは危険だ。 彼女には今夜は我慢してもらうしかない。 そして、僕たちは荷物を置き、焚火をするために薪になるような木の棒を集めていると、「なんだか音が聞こえ
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老人しかいない村と誰も知らない英雄――1

 嘆きの森を抜けて、そこからさらに数時間ほど歩き、目的地であった村に着いた。 この村については、事前の情報があまりない。 あまり旅人も寄っていないみたいだ。 昔、ある町の酒場で、この村に来たことがあるという人に出くわしたが、つまらないところだから行かなくていいよ、としか言わなかった。 しかし、僕の故郷では百聞は一見に如かずという言葉がある。だから本当にそうか確かめることにした。 さて、いつものメンバーにサフィラさんを加えて村の中に入って、しばらく歩いたのだが、今のところ老人しか見かけていない。 木製の簡素な家か田畑か高齢の人……この村で見るのは、そのどれかだった。「まさか、ここ、老人しかいないのかしら?」 とチャーリーが疑問を口にした。 村の人々は先ほどからこの自転車のことをチラチラと興味深そうに眺めている。「どうだろうな、まだ村の中を全て回ったわけじゃないから……」 と僕が周囲を見ながら言うと、その会話を聞いていたらしい、近くにいた老人がこちらに来て、声をかけてきた。「ええ、そうです……ここは、老人しかいないのです」「あなたは……?」 と訊くと、老人は口をゆっくりと動かした。「私はロルット……この村の民です」「老人しかいないって本当ですか?」「ええ、数年前までは若い人も多少いたんですが、みんな出て行ってしまいましたね」「そうだったんですか……」  老人との会話をそこで終えて、考え込む。 そうなると旅人が泊まれるような施設があるかも怪しそうだなあ。 と思っていたら、サフィラさんがそのことについてロルットさんに訊いていた。「あの、宿はありますか?」「宿はないが……村長の家に空き部屋がたくさんあるから、おそらく村長に言えば泊めてくれるでしょう」「そっか、よかった」アンタたち、ここに泊まるつもりかい?」「ええ」「そいつは嬉しいな、滞在してくれる人なんていつぶりだろう……村長の家まで案内しよう」 歩きだしたロルットさんに僕たちはついていく。 村長の家は村の奥の方にあったが、そんなに広くない村なのですぐに着いた。 呼び鈴を鳴らして、しばらくすると、老婆が出てきた。「私はムアナ……ここの村長だけど、あなたたちは旅人か? 何の用だ」「この人たちを泊めてやってくれないか?」「お安い御用さ、それくらい、何日でも泊ま
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老人しかいない村と誰も知らない英雄――2

  翌朝、僕たちは起きた後、ムアナさんが作った朝食をいただいた。 食事を終え、客室に戻ると、これからどうする、という話になった。 「正直、この村でやることってあんまりないわよね、どうする、もうちょっと村を見て回る?」 「でも、この村を見て回っても、特に何もなさそうな気がしますけど……」 とチャーリーの提案に、クルシェが批判的な意見を言う。 たしかに、見渡す限り、田畑と家しかないもんな、ここ。 そのとき、眠気が来て、ふわぁーっと僕があくびをすると、チャーリーが少し咎めるような声で、 「なに、テル、眠いの?」 「ああ」 「ダメじゃない、テル君、しっかり寝ないと、睡眠は大事よ?」 とサフィラさんが僕に向かって人差し指をびしっと突き立ててくる。 ……あんたのせいで寝不足なんだけどな。 と恨みがましい目で見ていると、彼女はいたずらっぽい笑みを浮かべてきた。 ……この女、気づいた上で僕をからかってるな。 「あ、そうだ、私、ちょっと気になるところがあるんだけど、いいかしら」 とサフィラさんがぱんっと軽く手を叩き合わせる。 「気になるところ?」 とクルシェが頭の上に?マークが浮かんでいそうな顔になる。 「べリック、ていう名前だっけ、たしか。あの人が毎日行っている洞窟というのが気になるわ」 「……あー、そんな話あったわね」 とチャーリーが記憶を遡っていたのか、少し間をおいてから言った。 「じゃあ、洞窟に行ってみましょうか」 とチャーリーが言うと、サフィラさんとクルシェがうなずいた。 「待て、その前に、べリックという人に話を聞きに行かないか? 洞窟がどういうところだとか、なんで洞窟に毎日行っているのかとか、そういうのを事前に聞いておかないか?」 「それもそうね」 とチャーリーが僕の出した案に賛同した。 他の二人も首肯している。 「ついでに、他の村人たちにも、洞窟について聞き込みをしましょうか」 とチャーリーが言うが、特に異論は出なかった。 さて、やることが決まった。 僕たちはムアナさんの家を出て、聞き込みを開始した。 外に出て、一番最初に出会った村人に、洞窟について尋ねてみた。 「ああ、あの洞窟か……わし、入ったことないんだよなぁ、あそこ暗いし、時折、変な鳴き
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老人しかいない村と誰も知らない英雄――3

 目的地である洞窟に着いて、僕たちは中に入った、そこは大人が数人くらい入っても余裕なくらいの広さで、スペース的には全く問題なかったのだが、「暗いわね」 とサフィラさんが四方を見て、僕の思ったことを代弁してくれたかのように言う。「安心してください、自転車のライトが点くんで」 僕がそう言った直後、ママチャリに着けられていたオートライトがパッと点灯して先を照らした。「多少ましになったけど、これじゃあ物足りないわね……」 チャーリーがそう言って魔法陣を展開させる。「イルミナ!」 そう叫ぶと、自転車のフロントバスケットの上らへんに、サッカーボールくらいのサイズの光る球体が現れて、一気に辺りが明るくなった。「これなら安心して進めるわ」 とサフィラさんが進んでいくので、僕も自転車を押しながらついていく。 モンスターがいないか周囲を警戒しながら歩いたが、不思議と一体も出くわさなかった。 奥に強力なモンスターがいるという話だからそいつを恐れてここには寄り付かないのかもしれない。 そのまま三十分くらい歩いて、ついに例のモンスターと出くわした。「ようやく来たか……遅いぞ。もう腹ペコだ」 とそのモンスターは横たえていた体を起こす。 筋骨隆々とした巨躯の、目が1つしかないモンスターだった。その右手には、木製の棍棒のようなものが握られている。 僕がいた世界のファンタジー作品とかに出てくる、サイクロプスというモンスターに似ている。確か元はギリシャ神話に出てくる怪物かなんかだったかな。「ん……? よく見れば、お前べリックじゃないな、他にもメスが一人、あとなんか変なのがいるな……まぁいいや、お前らが代わりに貢物をくれるのか?」「変なの……それ、まさかあたしのこと?」 チャーリーから殺気のようなものを感じるが、とりあえずスルーして、モンスターの問いには僕が答えた。「いや、貢物はない、べリックさんも僕たちももう持ってくるつもりはない」「あ?」 ピキキッとこめかみに青筋を立てるモンスター。 チャーリーが先ほどのあいつの発言に怒っているようで、煽るようなことを言う。「食料くらい自分で取りなさいよ、まさかあんた、食い物も自分で取れないわけ?」「お前ら……今まで食料を届けてくれたから見逃していたが、もう怒ったぞ。まずお前らを殺して、その後、村へ行って皆殺しだ
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魔法都市シャリア――1

 老人しかいない村を出て、野宿をしながら三日間、自転車で移動した。 そして、着いたのが、ロスガヘレル公国の領内にある町――魔法都市シャリア。 この町は生活の様々なところで魔法が活用されているらしい。 門番からの許可を得て、門をくぐると、そこには、転移する前の僕が期待していたような異世界の光景が広がっていた。「おお……」 と思わず、感嘆の声を上げてしまう。 レンガ造りの家が点在していて、遠くには瀟洒な城のような建物や大きな時計台や教会の鐘が見える。往来では全体の半数くらい獣の耳をつけた人達が歩いていて、空では、魔法使い風の格好をしている人達が箒に乗って飛行していたり、どういう原理かはわからないが、色とりどりの花々が浮かんでいたりする。 「これだよ、これ、僕はこういう異世界を望んでいたんだよ」「はしゃぎすぎよ、こんくらいで」 と、チャーリーが我が子を叱るような感じで言ってくる。「わー、すごいです、空を飛んでる人がこんなにいますよ、ご主人様!」 クルシェが目をキラキラさせてあっちを見たり、こっちを見たり、と忙しない。「まったく、あんたたちは……これだから田舎者は嫌だわ。あたしまで変な目で見られちゃう」 そうは言っても、どのみちお前がいる時点で変な目で見られると思うけどな。 実際、さっきから遠巻きにチラチラと自転車の方を見ている人たちがいるし。「見てください、空に花が浮かんでいます!」 とクルシェがチャーリーを見ながら、空の花々を指さす。「フライフラワーね、この町の名物よ、魔法の力で浮いているわ」「チャーリー、あれはなんだ、町の中をなんかキャスターが下についた小屋みたいなのが移動しているが」「あれは自動移動式トイレね」「え、あれ、トイレなのか?」「ええ、男用と女用、それぞれ数十個はあるトイレが町を巡回しているわ。急にお手洗いへ行きたくなってもたいていは近くにあるからとても便利よ」 確かによく見ると、小屋の入り口の上にこの世界の男子トイレのマークである赤色の棒人間が描かれている。「あ、あんたまた女子トイレに入るつもりじゃないでしょうね?」「……入らないよ」 と言うが、チャーリーは依然として猜疑心に満ちた視線を送ってくる。 実はこの異世界では、男性は赤色で女性は青色というイメージがあるから、トイレの色が日本にいたときと逆で
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