Todos os capítulos de 銀の怪盗は真夜中に覚醒する: Capítulo 11 - Capítulo 20

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第11話 謎の店、アルカ

 建物の前に立ち、扉に手をかけた。わずかに軋む音が、やけに大きく響く。 ゆっくりと扉を開く。 中は薄暗く、空気は重い。 ひんやりとした冷たさが、肌にまとわりついてくる。 静かだ。自分の足音と、呼吸だけがやけに響く。「シルバー、なんだか怖いよ……」 ログチーは、腕にしがみついたまま離れない。 俺は警戒しつつ、ゆっくり周囲を見渡す。「……なんだよ、ここ」 ふと、視線が上に向く。 看板のようなもの、見たことのない文字。 読めないはずなのに「アルカ……?」と 自然と口にしていた。「え、え!?ちょっと待って!?」 ログチーの声が、少し震え、言葉に詰まる。いつもと様子が違う。「……シルバー!引き返そう?」「は?」「は?じゃないって!ここは——」 途中で、ぴたりと止まる。「……出れる保証、ないかも」「は?」 その時だった。 人の気配。いつの間にか目の前に男が立っている。「うわああああ!!」 ログチーが勢いよく顔に飛びついてくる。「ちょっ……おい!」 視界が塞がれる。「ムリムリムリムリ!!」「離れろっての!」「やだ!!前見て!!前!!」「見えねぇんだよ!!」 ログチーを無理やり引き剥がす。塞がってた視界が開く。 視線を上げると、目の前には黒い長髪のガタイの良い長身の男、そして感情の見えない瞳。「……ようこそ」 低い声が、静かに響く。 俺は、少しだけ眉をひそめながら、背筋が冷たくなるのを感じた。「……どこだよ、ここ」 男はただ一言、「アルカ」と、短くそれだけ告げた。「俺の店だ」「アンタの店……?」 少し後ずさりながら、周囲を見渡す。気づけば、さっきより明かりが灯っている。 でも、その光はどこか不自然で、影がわずかに遅れて動くような不気味さ。 店内には、誰もいない。商品なのか、用途のわからないものが静かに並んでいる。「……てか、アンタは?」「俺はクロノス」「好きに見ていけばいい」 そう言って、クロノスはカウンターに腰を下ろした。「好きに見ろって言われても……」 視線を巡らせる。 その時、見覚えのあるものが、目に入る。 黒いカード。反射的にポケットから取り出す。「……これ、同じカードか?」 確かめるように、棚のカードへ手を伸ばす。触れた瞬間、銀のチェーンのような模様が、浮かび上がっ
last updateÚltima atualização : 2026-07-08
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第12話 予期しなかった、拡散

 冬の日差しが、カーテンの隙間から差し込む。白い光が、部屋の空気をゆっくりと照らしていた。布団の中から手を伸ばしスマホを掴む。「……7時20分?」「は?」「……やべっ!」 上布団を押し退け、慌てて飛び起きる。 その直後、ノックの音。「紫音ー!起きてるー?」 母さんの声が、ドア越しに響く。 慌てて、ドアが開くのを即座に抑える。「着替えてるから、開けんなよ!」 思わず強い口調になる。「はいはい、また思春期ー?」 呆れたような声。「着替え見られて困るとか、何してんのよ」「うるせぇって!」 言い返しながら、鏡の前に立つ。 映っているのは、いつもの自分。 黒髪。黒のスウェット。 寝起きのままの、見慣れた顔。「……戻ってるな」 胸の奥にあったわずかな緊張が、少しだけほどけた。 左腕を見る。腕時計。 ログチーは静かなまま。軽く指で叩く。 反応はない。「……まだ寝てんのか」 ぼそっと呟く。 そのまま、ベッドに腰を下ろし、ぼんやりと天井を見上げる。 白い天井。変わらない、いつもの景色。 昨夜のことが、頭をよぎる。 アルカ、クロノス、そして黒いカード。 現実だったのかすら、曖昧なまま。(……わけわかんねー) 小さく息を吐く。「紫音ー!いい加減にしないと遅れるわよー!」 母さんの声で、思考が途切れる。「わかってるって!」 制服に着替え、階段を降りた。ダイニング—— 食卓を見渡すと、またじいちゃんがいない。「母さん、じいちゃんまた寝てるのか?」「そうなのよー、なんか調子悪いみたい」 眉を下げながら、心配そうに呟く。「病院行きましょって言ったんだけどね」「紫音も、おじいちゃん気にしてあげてね」「わかった……あ、やべっ時間」 慌てて靴を履く。外に出てから、ふと縁側を見る。 じいちゃんがいない。いつもなら、そこにいるはずの姿。冬の冷たい空気だけが、静かに流れている。ほんの一瞬、胸の奥がチクッとした。「……行ってきます」 小さく呟き、家を出た。◻︎◻︎◻︎教室——「ねー見た!?」「マジでやばくない?」 朝から何だかざわついている。 教室の空気が、いつもより少し浮き足立っていた。「……?」 席に着き、大地に声をかける。「なんかあったのか?」「あー、それな」 大地がスマホを取り出す。
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第13話 記憶のない約束

 いつものメンバーで机を寄せ合う。全員の弁当箱を取り出す音が、重なった。 大地が、我先にとフタを開ける。「やっと昼飯だー!」「朝練やってたし、腹減ってたんだよなー」 言いながら、もう箸を動かしている。 向かいのノブが呆れたように言う。「お前、がっつきすぎー。弁当箱デカいし」 横からナオが笑う。「その体のどこに入ってんだよ!」「運動部なめんなって!」 気づけば、弁当はもう半分以上なくなっている。 俺はそのやり取りを横目に見ながら、静かに弁当箱を開けた。 その時—— 左腕が、わずかに震えた。「……ん?」 視線を時計に向けると(……シルバー、おはよー) 間の抜けた声。「……っ!」 反射的に、左腕を押さえて立ち上がる。椅子がガタンと鳴った。 箸を止めた大地が顔を上げる。「なに?どうした?」 ノブとナオもつられてこちらを見る。「えーっと……虫がいたような?」 笑ってごまかす。「虫?こんな時期に?」「……いや、あ!糸くずだった……」 ノブがニヤつく。「お前意外にビビリだなー」 軽く笑いが起きる。 俺は苦笑いしながら、押さえたままの左腕に小さく呟く。(いきなり喋んなよ……)「大丈夫だよー!キミにしか聞こえないはずだし?」 自慢げに、ログチーが喋る。(わかったから、今は喋んな……)「え?今なんか言った?」「いや、なんでもねぇ」 目線を逸らして返す。 大地が、何事もなかったかのように話を戻す。「でさー、お前ら、明日どうする?」「ラウンドワン行くだろ?」「……は?」 動かしていた箸が止まる。「話してたじゃん。週末に行こうってさ」 ノブとナオも頷く。(覚えてない記憶……)「まぁな……」 とりあえず、合わせる。 大地が当然のように言う。「行くよな?」「……まぁ、いいけど」 半分勢いに押されるように返す。(今、それどころじゃねぇんだけどな……) 心の中で、ため息をついた。「よっしゃ!」 大地が満足そうに笑う。 ナオが続いて「せっかくだし、女子も誘う?」 ノブもノリよく続く。「人数いた方が楽しいじゃん」「……別に俺はどっちでも……」 (面倒くせぇ) 大地が少し身を乗り出し、俺の耳元でボソッと呟く。「白石……誘ったら来てくれるかな?」「……さあな」 ノブがこっちを見
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第14話 力の異変

 じいちゃんは、何事もなかったかのように、尋ねてくる。「……どうしたんじゃ?それは」 何気ない声だけど、ほんのわずかに、間があった。「昨日、拾ったんだけどさ」 俺は、手元のカードに視線を落とす。夕暮れの光が、黒い表面に鈍く映る。 じいちゃんは、視線を少しこちらに向け「……そうか」と言って、視線を外した。 まるで、興味を持つこと自体を避けているように見えた。「ほんとに、知らないのか?」 少しだけ踏み込む。自分でもわかるくらい、口調が強くなっていた。 じいちゃんは、小さく息を吐き、「……さあな」と短く答えた。 夕暮れの風が、二人の間を静かに抜けていく。「……すまん」 じいちゃんが、ゆっくりと立ち上がる。「また、身体が少しつらくなってきた」「あ、ああ……」 足取りはいつもと同じはずなのに、どことなく重そうに見えた。 そのまま、部屋へと戻っていく。俺は無言のまま、その背中を見送った。 ふと気づくと俺は無意識にカードを握りしめていた。外の空気は冷たいはずなのに、さっきより、熱を感じた気がした。 自室—— ドアを閉めた後無意識に、ため息が漏れる。カバンをベッドに放り投げ、制服を脱ぐ。「……」 じいちゃんの顔が、頭に浮かぶ。あの一瞬の間、視線の外し方。胸の奥に、引っかかるものが残る。 白シャツのボタンに手をかけようとした時、左腕が、ぴくりと震えた。(シルバー……もういい?) うずうずとした、抑えきれない声。「ごめん……お前のこと、すっかり忘れてた」 頭をかきながら答える。(ええ!?ひどくない!?)「静かすぎんだよ」(だってさっきめっちゃ我慢してたんだよ!?)「へいへい」 適当に流しながら、シャツを脱ぐ。(ていうかさ!さっきのじいちゃん) ログチーの声が少し弾む。(何者なの?)「……?」 スウェットに伸ばした手が止まる。「何者も何も、俺のじいちゃんだけど?」(なんか只者じゃない感じがしたよ)「……まぁ、胡散臭いのは確かだけど……ただのじいちゃんだ」 スウェットに着替えながら、短く返す。制服をハンガーにかける。「つーか、お前」 腕時計を軽く叩く。「何かわかるのか?」(……ん〜わかんない〜)  ………… 呆れて、言葉が出ない。(でもね、ほんと只者じゃない!自慢の鼻がピクピクしてるしー)
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第15話 嘘と、母と、ログチーと

「8日……?」 カードの文字を見つめる。「……8日って、今日じゃないか」 「ログチー、今何時だ?」「今の時刻は18時だよー」「……あと3時間か」「何があるんだ……?」 静かな部屋に、時計の音だけが響く。「行くの?シルバー?」 少しだけ、不安そうな声。「やめといた方がいいよ。 なんか力バグってるし」 ログチーは腕を組みながら、首を傾げている。「昨日、雨に濡れたからかなぁ」「何が起きるかわかんないよ?」 「……そう、だよな」 自分に言い聞かせるように呟く。 行ったところで、何が起きるかわからない けど脳裏に浮かんださっきの光景。冷たい風、誰かの気配。「あの映像……」「……なんか、助けを求めてた気がする」 時刻は18:30 —— 階下から、母さんの声が響く。「紫音ー?帰ってるのー? 夕飯にするから降りてらっしゃい」 ハッと我に返り鏡に映る、自分の姿を見る。 白いジャケット、黒いインナー、銀のチェーン。「……今は無理だろ」 視線を足元のログチーに向ける。「ログチー、この格好どうにかならないのか?」「んー……」 少し考えるような間。「少しなら、いけるかも」「少しってなんだよ……」「いっくよー!」「おい、ちょ——」 次の瞬間、体の感覚が、わずかに揺らいだ。 光が弾けるように消え、鏡の中の姿が、ゆっくりと変わっていく。「……」 恐る恐る鏡を見る。 白いパーカーに、黒いパンツ。腰には、銀のチェーン。 一瞬——普通に見えた。「……お?」 銀髪、青い瞳。そして、黒い仮面。「ただ、着替えただけじゃん!」「えー!?そう言ったじゃん!」「言ってねぇよ!」 下から母さんの声が響く。「紫音ー?いるのー?」「……っ」「あ!リバートで戻れば……?」「無理じゃない?今バグってるし……」「最悪だ……」 ため息をつく。「……もういい、行くぞ」「え!?いいの!?」「仕方ないだろ!ここにいたって母さん来そうだし……」 階段を降りる。一段、一段、足音がやけに響く。「シルバー、なんかいい匂いするねぇ」 空気を読まずにログチーが呟く。「黙ってポケットに入ってろ」 無造作にパーカーのポケットにログチーを押し込む。 リビングの扉の前で立ち止まって深呼吸した。 母さん以外の気配はない。「……
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第16話 思いがけない、高揚感

玄関を出た瞬間、俺は足を止めた。「……この格好で外は無理だな」 黒い仮面、銀髪…… どう見ても不審者だ。「あっ忘れてた!はいっ!」 白いパーカーが、黒いインナーに変わる。 白いマントとジャケットが、ふわっと肌に触れた。 肩の上で、ログチーが自慢げに呟く。「やっぱ、シルバーは正装じゃないとね」 ログチーを横目に、ため息がちに呟く。「……まあ、どっちみち不審者だな」「どうするシルバー?」 俺は黙って、周囲を見渡す。人の気配がないのを確認して——「上から行く」「え?」 軽く膝を曲げ、そのまま、地面を蹴った。「うわっ!?」 ログチーの声が裏返る。 一気に塀を越え、そのまま隣家の屋根へと飛び移る。「っと……」 軽く着地。 地面が、思っていたよりずっと遠い。(落ちたら終わりだな……) 額に汗が滲む。「ちょ、ちょっと待ってシルバー!」 ポケットの中からログチーが顔を出す。(何だ、この身体の軽さは…) 視線を前に向けると、夜の街が、広がっている。 屋根、屋根、ビル、足場には困らない。「……行ける」 建物から、建物へ飛び移る。夜風を切る音。身体が、軽い! 自分でもわかる。「これも……力の影響か」 ポケットの中で、ログチーが言う。「わかんない……でも元々の身体能力が高いんじゃないかな?」「……またそれかよ」 鼻の頭を指先で少し掻きながら、ログチーに尋ねる。「てか、今何時だ?」「んーっと20時20分」「……時間がない。急ぐぞ」 屋根を蹴り、壁を蹴り、まるで夜の中を滑るように進んでいく。 視界の先に、目的のビルが見えた。「……セントラルビル」「飛び移るには、ちょっと高いな」「え?」 ログチーの声を無視して、周りを見渡す。「逆から行くか」 再度、地面を蹴り、別のビルに飛び移る。 が、高さが足りず、姿勢を崩して落ちそうになる。「……クッ」 無意識に腰のチェーンを掴んで放つ。銀の鎖が、まるで意思を持つかのようにビルの柱に巻き付いた。 ガクンッ、と強い衝撃が腕を襲う。腕が引きちぎれそうな感覚。間一髪、宙吊りの状態で身体が止まった。「……あっぶねぇ」(一瞬、死ぬかと思った……)  背中にそっと汗が走る。 腕の痺れが残ったまま、再び壁を蹴り、窓枠を掴んで一気に上へと駆け上がる。地面が、どん
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第17話 初依頼、機密情報を奪還せよ

「銀の怪盗……?」 男は、すがるような目で俺を見た。 「……でも、あんたは、アルジェントではないんだろ?」 俺は少し眉をひそめながら尋ねる。 「アルジェントって誰だよ」 男は、小さくうなずく。 「悪事に使われたものだけを奪う凄腕の怪盗だ」 俺の後ろから、ログチーが小さく呟く。 「へぇ〜、すごい人なんだね」 男が、ぎょっとする。 「……ネズミが喋った?」 「ネズミとは失礼な!」 「何を隠そう、ログ——」 ログチーが飛び出しかけたのを制し、無言でポケットに押し込む。 「もごっ!?」 頭だけぴょこっと出して、頬を膨らませる。 俺は、ゆっくりと息を吐いてから、中川に視線を向けて、真っ直ぐに言う。 「俺はアルジェントではないけど……」 「飛び降りる勇気があるなら——」 「いっそ、俺にかけてみないか?」 男に、手を差し伸べる。 「事情、聞かせてくれよ」 男は、紫音の手を取り立ち上がる。 「中川だ……」 ◻︎◻︎◻︎ 時刻は既に22時を回っていた。少し落ちついたのか、中川が静かに話し始めた。 「信じてた部下に……やられたんだ」 「機密情報を……全部持っていかれた……」 中川は拳を震わせながら、絞り出すような声で言う。 「情報を盗られたのは、いつの話なんだ?」 「気づいたのは今朝だ。昨日の夜までは確かにあった」 「三谷……信じていたのに……」 中川は、その場で泣き崩れる。 俺は言葉をかけることも出来ず、そのまま、ゆっくりと立ち上がった。 夜風が、屋上を吹き抜ける。俺は中川に視線を向ける。 「取り戻さないといけないリミットは?」 中川が、答える。 「……月曜の、9時だ」 「場所は?」 「……証券取引所だ。 ただあそこは警備も厳しい。あそこに行ってから盗み出すのは至難の技だ」 「あそこに行くまでに取り戻して、このセントラルビルまで来て欲しい」 「12階……社長室に来てくれ」 縋るような目で、俺を見る。 「……わかった」 俺は真っ直ぐ中川を見て答えた。 中川が、俺をじっと見つめる。 「君はいい瞳をしているな。何故か、信じてみたくなる」 「……っ」 俺は、仮面を軽く押さえながら、中川に背面を向けて
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第18話 オフィスへの侵入

屋上の外階段から、12階フロアへ降り、外側のドアから、そっとフロア内を覗く。 静かだ……。人の気配が、まるでない。営業時間がとっくに終わっているのか、廊下には電灯の光だけが鈍く点灯している。 階段のドアをゆっくりと開ける。ドアを開く音が、やけに大きく感じる。息を殺し、周囲を見渡す。 ——奥に一枚の扉。 「……あそこか」 プレートには、「株式会社オクトパス」と書かれている。 ドアの横にはインターホン。カードキーの認証装置。そして——監視カメラ。 赤いランプが、チカチカと点滅している。 「……さすがに正面突破は無理……だよな」 口元に手をあて、思考を巡らせる。 宅配員のフリをしてみる…… うん、無理だな。こんな格好の宅配員なんて、信じるのはうちの母さんぐらいだ。 ログチーに鍵開けさせるか…… いやいや……そもそも中に入れないから無理だ。 小さく息を吐き、ふと天井を見上げる。 通気口!? (……これだ!) でも……廊下は、誰かに見られる可能性もある。一歩間違えれば、ゲームオーバーだ。 再度廊下を見渡す。トイレの表示。 「よし!ログチー、トイレだ!!」 「シルバー!こんな肝心な時にトイレ?」 ポケットから顔を出し、首を傾げる。 「ちげーわ!」 思わず声を抑えながら返す。 「真正面が無理なら、裏から行くしかないって事」 足音を殺しながら廊下を進む。 トイレまでの距離はあまりないのに、なぜか遠く感じた。 周りを警戒しながら、男子トイレの前に立ちトイレのドアを押す。 中は無人。蛍光灯の白い光が、静かに空間を照らしていた。 個室に入り、鍵をかける。 天井を見る。通気口があった。 「……ビンゴだな」 「え、ちょっと待って?ここから行くの?」 ログチーが怪訝な顔をしながら尋ねる。 「他にねぇだろ」 手をかける。押しただけでは動かない。 (……押してダメなら) 壁に手を引っ掛け、足で蹴りあげる。 ギィ、と鈍い音。わずかに、外れる。 「……よし」 そのまま手で押し上げる。 蓋が外れ、暗い空間が見える。冷たい空気が、わずかに流れ込む。 通気口に手を伸ばし、縁を掴んで懸垂をするように身体を持ち上げる。 ——が 手が滑って
last updateÚltima atualização : 2026-07-09
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第19話 初めての闘い

 暗がりの中から、俺はゆっくりと姿を現す。「……誰なんだ、お前」 三谷は一歩、後ずさるがその先には逃げ場はない。 俺は答えない。ただ、無言のまま距離を詰めていく。「……近寄るなっ!ほんとに警察を呼ぶぞ!」 呆れたように、短く返す。「呼ばれて困るのは……アンタだって言っただろ?」「聞いてた?俺の話」「……ふざけるな!」 逆上した三谷が、狂ったように殴りかかってくる。「……遅ぇよ」 軽く身をかわす。「ふざけてんのは、お前だろ」 三谷の足を払う。 体勢を崩した三谷が、机にぶつかる。そのままポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。「どこの誰だか知らないが……邪魔をするなら容赦しねぇぞ!」 次の瞬間—— スタンガンが押し当てられる。「ぐっ……!」 電流が一気に流れ込む。(……っ、息が……出来ねぇ……) 膝から崩れ落ちる。視界が揺れる。(……やべぇ、クラクラする) マントを掴まれ、顔を覗き込まれる。「なんだ、ガキじゃねぇか……脅かしやがって」手が、仮面に伸びる。(マズい——) その瞬間——「シルバー!」 ログチーが三谷の顔に飛びついた。「うわっ!?なんだコイツ!」 視界を塞がれ、三谷の動きが止まる。 俺は、歯を食いしばりながら体勢を立て直す。蹴りでスタンガンを弾き飛ばした。 ——が、スタンガンの衝撃なのか、足に力が入らずそのまま膝から崩れ落ちる。(身体が言うことを聞かねぇ……)「っ……!」(あと一撃……動け俺の身体!) 膝をつきながらも、無我夢中で左足を三谷に向かって蹴り上げる。脇腹に会心の一撃。「ぐわああああっ!」 三谷の体が吹っ飛び、椅子にぶつかる。その衝撃で、気を失ったようだ。「……はぁっ……はぁっ……」 荒い息を吐く。「……あっぶねぇ、助かった」 ログチーが、得意げに戻ってくる。「でしょ?」 ポケットから黒いカードを取り出す。 残り時間——15分。「……時間がねぇな」 周囲を見渡す。「……ま、これでいいか」 デスクにあったガムテープを掴み、三谷を縛り上げる。ぐるぐると、容赦なく。「よし」 気がついた三谷が、うっすらと目を開ける。「なんだこれは……離せっ!」 暴れるが、びくともしない。 俺はその様子を冷めた目で見下ろした。「もう、お前は終わりだよ」 三谷が
last updateÚltima atualização : 2026-07-10
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第20話 疲労感と満足感

三谷を後にし、颯爽と去る……ハズだったが、現実はそう上手くいかない。 カメラの位置を気にしながら、死角に入る。 「……さて、どうやって出るか」 来た道を思い浮かべる。通気口…… いや、あそこはカメラがある。ログチーをぶん投げるわけにもいかないし。てか、全身が痛くて登れる気がしない。 ……ん、まてよ?戻って三谷に出口はどこだ!って聞いてみるとか? いや、それめっちゃ恥ずかしい奴じゃん!去り際に、終わりだよ……なんて言っておいて、『おい三谷!出口教えてくれ!』だって? ない!それはない! 考えがまとまらず、頭をガシガシと掻く。 ポケットからログチーが呼ぶ。 「シルバー、今の時間さぁ……」 「……時間!?」 ハッと気づく。慌ててポケットから、カードを出す。 「……っ!?」 「時間が、消えてる……?」 「……まさか」 「間に合わなかった……のか?」 カードを無意識に握りしめる。 「ねぇねぇ?」 「シルバー、聞いてる?」 ログチーが、ポケットから呟く。 「……なんだよ、お前いい加減……」 言い終わる前に、ログチーが言う。 「だからさ、今21時58分だよ?」 「間に合ったんだよね?」 キョトンとした表情でこちらを見ている。 自分でも、スマホで確かめてみる。時刻は、21:58を指していた。 「……はは、は……びっくりさせんなって」 安心したら、壁から滑り落ちるようにその場に座り込んだ。 「……身体が痛ぇ……正直もう限界だ……」 一気に疲労感が押し寄せてくる。意識が落ちそうになったその時—— 視界が、歪む。体の感覚が、足元から消えていく…… ◻︎◻︎◻︎ …… ……ルバー 「……シルバーってば」 うっすらと目を開けると顔の上にログチーが立っている。 「うわぁぁぁっ」 驚いて、思わず起き上がる! ログチーが転がり落ちる。 周りを見渡す。誰もいないビルの屋上。 夜風が顔にあたる。 「……戻ってきたのか……?」 ログチーが、ふくれっ面をしながら言う。 「もう!びっくりしたのはこっちだよ!」 スマホを見る。 11月8日22:00。 (カードのタイムリミットで、戻ってきた……のか……?) スマホを取ると
last updateÚltima atualização : 2026-07-12
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