銀の怪盗は真夜中に覚醒する의 모든 챕터: 챕터 11 - 챕터 20

73 챕터

第11話 謎の店、アルカ

 店の前に立つと、空気が変わった感じがした。まるでこの場所だけが切り取られているみたいな感覚。 「シルバー……ほんとに行くの?」  ログチーが俺の肩で不安そうに呟く。 「ああ……」  目の前の扉に手を伸ばす。指先が扉に触れた瞬間、冷たい金属の感触が伝わり、喉がゴクリと鳴った。  そのまま扉を押すとわずかに軋む音がやけに大きく響いた。 「……えっと、お邪魔しまーす!」  特に返答はない。  中は薄暗い。なんとなくだけど空気も重苦しく感じる。建物の中なのに、ひんやりとした温度が肌にまとわりついてくる。 「さむっ……部屋の中なのになんでこんな寒いんだ? ログチー寒くないか?」 「うん、平気……それより、引き返したほうがよくない?」  ログチーは俺の腕にしがみついている。 「危険になったら逃げればいいじゃん」  俺は警戒しながら、ゆっくり周囲を見渡した。  ふと、視線が上に向く。  看板のようなものに見たことのない文字。  読めないはずなのに「アルカ……?」と、自然と口にしていた。 「え、え!? ちょっと待って!?」  ログチーが急に焦り出し、俺の服を引っぱってくる。 「シルバー! やっぱり引き返そう?」 「なんで?」 「なんで? じゃないってば!」  ログチーが青ざめながら小さく呟く。 「出れる保証ないかもしれない……」 「は?」  目線を上げると何かの気配。振り返るといつの間にか目の前に男が立っていた。 「うわああああ!!」  ログチーが勢いよく顔に飛びついてくる。 「ちょっ……おい!」  視界が塞がれる。 「ムリムリムリムリ!!」 「離れろっての!」 「やだ!! 前見て!! 前!!」 「見えねぇっつーの!」  ログチーを無理やり引き剥がす。塞がってた視界が開く。  視線を上げると、目の前にはガタイの良い長身の男。黒い長髪、そして感情の見えない瞳でこちらを見ている。 「……ようこそ」  男の低い声が静かに響く。  後ずさりしそうになりながらも俺は男に尋ねた。 「……どこだよ、ここ」  男はただ一言、「アルカ」と短く告げた。 「俺の店だ」 「アンタの店……?」  背中からの汗を感じながら、周囲を見渡す。気づくとさっきより明るく店内を照らしている。  でも、その光はどこか不自然で、影が不
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第12話 予期しなかった、拡散

 冬の日差しがカーテンの隙間から差し込み、白い光が部屋の中を照らす。 「……うっ、眩し……」  布団の中から手を伸ばし、スマホを掴んだ。スマホの画面は七時二十分と表示されている。 「は?」  上布団を押し退け、慌てて飛び起きる。  その直後、ノックの音がする。 「紫音ー! 起きてるの?」  母さんの声がドア越しに響く。 「うわぁっ!」  慌ててドアが開くのを即座に抑えた。 「今着替えてるから絶対に開けんなよ!」  思わず強い口調になる。 「はいはい、また思春期ー?」  呆れたような声。 「着替え見られて困るとか、一体何してんのよ」 「うるせぇって!」  そう言い返しながら鏡の前に立つ。 「もう、さっさと着替えて降りてきなさいよー」 「わかってるって!」  母さんの足音が遠ざかっていく。  鏡の中に映っているのはいつもの自分。  黒髪に黒のスウェット。寝起きのままの、見慣れた顔。 「……戻ってる!?」  鏡を見ながら自分の顔に触れてみた。思わず胸を撫で下ろす。  左腕の腕時計を軽く指で叩いてみたけど、ログチーは静かなままで反応はない。 「……まだ寝てんのか」  ぼそっと呟く。  ベッドに腰を下ろし、ぼんやりと天井を見上げる。変わらない、いつもの自分の部屋。  昨夜のことが頭をよぎる。  アルカにクロノス、そして黒いカード。  現実だったのかすら曖昧な感じだったけど、黒いカードが現実《リアル》で起こったことだと証明している。 「紫音ー! いい加減にしないと遅れるわよー!」  母さんの声で思考が途切れる。 「わかってるって!」  さっと制服に着替え、階段を降りた。 ダイニング——  食卓を見渡すと、またじいちゃんがいない。 「母さん、じいちゃんまた寝てるのか?」 「そうなのよー、なんか調子悪いみたい」  眉を下げながら、心配そうに呟く。 「病院行きましょって言ったんだけどね」  母さんは困ったように俺を見る。 「紫音も、おじいちゃん気にしてあげてね」 「うん、わかってる。あ、やべっ時間!」  慌てて靴を履く。  じいちゃんがいない。いつもならそこにいるはずの姿。冬の冷たい空気が静かに流れている。 「じいちゃん、大丈夫かな」  一人ボソッと呟く。じいちゃんのことが気になりながら俺は
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第13話 記憶のない約束

 授業中もSNSの映像が頭をよぎって、全然内容が入ってこない。まあいつものことと言われればそうなんだけど。 「はぁ……」  ため息をつきながら、黒板の文字をノートに書いていく。 「これは次の試験に出るからしっかり覚えておけ!」  先生が力を込めて説明をしている。とりあえず教科書に丸だけつけておいた。 「ふわぁ……ねむっ」  ペンを置き、そのまま深い眠りに落ちた。 昼休み——  教室の一角。  いつものメンバーで机を寄せ合う。全員の弁当箱を取り出す音が重なった。  大地が、我先にとフタを開ける。 「やっと昼飯だー!」 「朝練やってたし、腹減ってたんだよなー」  そう言いながらもう箸を動かしている。  向かいのノブが呆れたように言う。 「お前、がっつきすぎー。弁当箱デカいし」  横からナオが笑う。 「その体のどこに入ってんだよ!」 「運動部なめんなって!」  気づけば、弁当はもう半分以上なくなっている。  俺はそのやり取りを横目に見ながら、静かに弁当箱を開けた。  その時——  左腕が、わずかに震えた。 「……ん?」  視線を時計に向けると (……シルバー、おはよー)  間の抜けた声。 「……っ!」  反射的に、左腕を押さえる。  箸を止めた大地が顔を上げる。 「どうした? 紫音」 「いや、何も?」  咄嗟に誤魔化し、押さえたままの左腕に小さく囁く。 「いきなり喋んなって言ったろ?」 「大丈夫だよー! シルバーにしか聞こえないはずだしさ」  自慢げにログチーが喋る。 「わかったから今は喋んなって」 「今なんか言ったか? 紫音」  大地が尋ねてくる。 「なんも言ってねぇよ? 空耳じゃね?」  目線を逸らしながら言葉を返した。 「ならいいけどさ、それよりお前らさ」  俺とナオとノブが一斉に大地を見る。 「明日は何時に待ち合わせする?」 「待ち合わせ? なんか約束したっけ?」 「ラウンドワンに行くって話だろ?」  ノブが説明する。 「あ、ああ、あれな」 (抜け落ちた記憶の中の約束か……)  動かしていた箸が止まる。 「話してただろ? 週末に行こうってさ」  ノブとナオも頷く。 「わりぃ、そうだったよな、ははっ」  とりあえず、合わせる。  大地が当然のように聞いてくる。
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第14話 力の異変

じいちゃんが真っ直ぐに俺を見て言った。 「……なんじゃそれは?」 何気ない声だけどほんのわずかに間があった。 「カード? 用途はわかんねぇけど」 「そうか」 じいちゃんは特に動じない。 「これさ、どこで手に入れたと思う?」 俺はじいちゃんをじっと見た。 「……さあ? 今の若いもんならAmazonかのぅ」 「Amazonじゃねぇし……」 頭をガシガシと掻く。 「これは拾ったんだよ」 「……じゃあゴミ拾いか、感心じゃのぅ」 「いや、そうじゃなくてさ」 俺は、手元のカードに視線を落とす。夕暮れの光が、黒い表面に鈍く映る。 「このカード、どこで拾ったと思う?」 「……さあのぅ?」 じいちゃんは飄々としながら答えた。 「これ、うちの縁側に落ちてたんだ」 そう言うと、じいちゃんは視線を少しこちらに向け、「そうか」と言って視線を外した。 「何か知らないのか? これ」 「どうしたんじゃ紫音、何をそんなにムキになっとる?」 いつの間にか口調が強くなってた俺をじいちゃんが諭してくる。 「あ、いや、ごめん」 じいちゃんは優しく微笑み、俺の肩をポンと叩いた。 「わしはそんなシャレたもんは知らん」 「えっ? じいちゃんそれってどういう意味?」 夕暮れの風が二人の間を静かに抜けていく。 「ゴホッゴホッ……」 急にじいちゃんが苦しそうに咳こむ。 「じいちゃん、大丈夫か?」 俺はじいちゃんの背中をさする。 「ゴホッゴホッ……すまんな紫音」 「じいちゃん……」 じいちゃんの背中が弱々しく感じてなんともいえない気持ちになる。 「じいちゃん、部屋で休もう!」 「ははっ……、そうじゃの。ゴホッゴホッ」 「もう喋んなって!」 じいちゃんを支えながら、部屋まで一緒に向かう。小さく丸まった身体を見て無性に悲しくなった。 じいちゃんを部屋で寝かせ、俺はそのままじいちゃんの部屋を後にした。 無意識にポケットのカードを握りしめていた。 外の空気は冷たいはずなのに、さっきより、熱を感じた気がした。 自室—— ドアを閉めた後、無意識にため息が漏れる。 カバンをベッド脇に置き、学ランを脱ぐ。 じいちゃんの顔が頭に浮かぶ。 「……」 白シャ
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第15話 嘘と、母と、ログチーと

カードが手から落ちる。 「な、なんだよ、これ……キッモ! 急に文字が浮かんできたし」 「シルバー怖いの?」 ログチーがニヤッと笑う。 「こ、怖くなんかねぇし! ちょっと驚いただけだし!」 慌てて落ちたカードを拾い上げる。 「8日、セントラルビル、21時……。なんかの予告なのか?」 「てか、8日って今日じゃん! ログチー、今何時だ?」 「今の時刻は18時だよー」 「……あと3時間か、一体そこに何があるんだ?」 静かな部屋に時計の音だけが響く。 「もしかして行くの? シルバー?」 ログチーが不安そうな声で聞いてくる。 「やめといた方がいいって! なんかそのカードに影響受けてるような気がするし……気持ち悪いよ」 ログチーが袖を引っ張りながら言ってくる。 さらにログチーは続ける。 「昨日、雨に濡れたのもあるし、何が起きるかわかんないからさぁ」 「……でもさ」 「でも?」 「なんか気になるし……」 さっき脳裏に浮かんだ光景。冷たい風、誰かの気配。あれと関係があるんだろうか? 「気になるだけで動いて危険な目に合うのはシルバーなんだからね!」 強い口調でログチーが言ってくる。 「わかってるって! ……わかってるけど、なんか助けを求められてる気がするんだよな」 「シルバー……」 ログチーが俺をじっと見つめる。 「なんだよ? そんな心配そうな目で見るなよ。そんなの面倒くせぇし、行かねぇよ……」 時刻は18:30 —— 階下から、母さんの声が響く。 「紫音ー?帰ってるのー? 夕飯にするから降りてらっしゃい」 ハッと我に返り鏡に映る自分の姿を見る。背中て白いマントが揺れている。 「ったく面倒くせぇな! Revert!」 だけど、何の反応もない。 「またかよっ!」 焦りながら、肩に乗っているログチーに視線を向ける。 「ログチー、この格好……どうにかならないのか?」 「んー……」 少し考えるような間。 「少しなら、いけるかも」 「少しってなんだよ?」 「いっくよー!」 「えっ? おい!ちょ——」 次の瞬間、体の感覚が、わずかに揺らいだ。光が弾けるように消え、鏡の中の姿がゆっくりと変わっていく。 「……」 恐る恐る鏡を見
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第16話 思いがけない、高揚感

 駅に向かおうとして俺は足を止めた。 「ログチー」 「どうしたの? 行かないの?」 「いや、そうじゃなくて……この格好、何とかならねぇ?」  黒い仮面、銀髪……帽子を被ってるとはいえ、どう見ても変な奴だ。 「あっ! 忘れてた! はいっ!」  白いパーカーが黒いインナーに変わり、白いマントがふわっと肌に触れた。 「は?」  肩の上でログチーが自慢げに呟く。 「やっぱシルバーは正装じゃないとね」  ログチーをジッと睨み、小さく呟く。 「お前に期待した俺が悪かったな……」 「何か言った? シルバー」  ログチーがキョトンとしながら俺を見る。 「いや、何も」  視線を上げると登れそうな塀がある。俺は人の気配がないのを確認し、地面を軽く蹴り塀を登った。 「うわっ!?」  ログチーの声が裏返る。  塀から隣家の屋根へと飛び移り、次の建物へと次々に飛び移った。 「っと……」  軽く着地。  地面が思っていたよりずっと遠い。 (落ちたら終わりだな……)  額に汗が滲む。 「シルバー、目が回るよ〜」 「ログチー、ポケットに入ってろよ」  ログチーはモゾモゾと胸ポケットに入る。  視線を前に向けると夜の街が広がっている。  屋根、屋根、ビル、足場には困らない。 (何だ、この高揚感。ワクワクが止まんねぇ)  建物から、建物へ飛び移った時の夜風を切る音、何よりこの身体の軽さ。 「これも……力の影響なのか?」  ポケットの中でログチーが呟く。 「シルバーは元々の身体能力が高いんだよ! カッコイイよー!」 「……そういうのいらねーから!」  鼻の頭を指先で少し掻きながらログチーに尋ねる。 「てか、今何時だ?」 「んーっと20時20分」 「……時間がない。急ぐぞ」  屋根を蹴り、壁を蹴り、まるで夜の中を滑るように進んでいく。その視界の先に目的のビルが見えた。 「あれがセントラルビルか」 「飛び移るにはちょっと高さがなぁ」 「え?」 「うん、逆から行くか!」  再度地面を蹴り、別のビルに飛び移る。  が、高さが足りず、姿勢を崩して落ちそうになる。 「……クッ」  無意識に腰のチェーンを掴んで放つ。銀の鎖がまるで意思を持つかのようにビルの柱に巻き付いた。  ガクンッ、と強い衝撃が腕を襲う。腕が引きちぎれそ
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第17話 初依頼、機密情報を奪還せよ

「銀の怪盗……?」  男は呆然としながら俺を見た。 「アルジェントじゃなくて残念ってか?」  俺は少し揶揄うように男に尋ねる。 「いや……そうじゃない」 「てか、アルジェントってそんなすごい奴なのか?」  男は俺を見て小さく頷く。 「彼はいわゆる義賊だ。悪人に盗まれたものだけを奪う……凄腕の怪盗だ」 「義賊ねぇ……義賊だったとしても警察には追われるんだろ?」 「まあ……そうだな、世間ではそうだ」 「変な世の中……あれっ?」 「どうした?」 「い、いや……別に」 (なんだ? この既視感)  ポケットからログチーが話しかけてくる。 「その人すごい人なんだね〜」  男が、ぎょっとする。 「……ネズミが喋った?」 「あん? ネズミとは失礼な!」 「何を隠そう、ログ——」  ログチーが飛び出しかけたのを制し、無言でポケットに押し込む。 「もごっ!?」  頭だけぴょこっと出して頬を膨らませる。  俺は男を真っ直ぐに見る。 「俺はアルジェントではないし、凄腕でもない。だけど……アンタが困ってるなら助けたい!」  男にそっと手を差し伸べる。 「事情、聞かせてくれよ」  男は俺の手を取り、クスッと笑った。 「中川だ……」 ◇◇◇  時刻は既に22時を回っていた。少し落ちついたのか中川は静かに話し始めた。 「信じてた部下に裏切られたんだ」  悲痛な表情で話す中川。 「裏切り……」 「ああ、会社の機密情報を全部持っていかれた」  中川は拳を震わせながら、絞り出すような声で言う。 「機密情報……。でもそういうのってセキュリティとかに守られてんじゃないのか? まあよくは知らねぇけど」 「セキュリティな……そう普通はそうだ。だがその部下にセキュリティ部門を任せていたんだ」 「それはアウトだよね」  ログチーが頷く。 「……そうか、じゃあ情報を盗られたのはいつの話なんだ?」 「気づいたのは今朝だ。昨日の夜までは確かにあった」  中川が拳を握りしめて叫んだ。 「三谷……信じていたのに……」  中川はその場で泣き崩れた。  俺は言葉をかけることも出来ず、そのままゆっくりと立ち上がった。  夜風が屋上を吹き抜ける。俺は中川に視線を向けた。 「なあ、中川さん」  中川の体がピクッと動く。 「傷を抉るようだけ
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第18話 オフィスへの侵入

屋上の外階段から12階フロアへ降り、外側のドアからそっとフロア内を覗く。 人の気配がまるでない。営業時間がとっくに終わっているのか、廊下には電灯の光だけが鈍く点灯している。 階段のドアをゆっくりと開ける。ドアを開く音がやけに大きく感じた。息を殺しながらフロアに入った。 廊下の先に一枚の扉。 「……あそこか?」 ドアにあるプレートには「株式会社オクトパス」と書かれていた。 「ネーミングセンスすげぇな……」 少し唖然としながら見上げた。 ドアの横にはインターホン。カードキーの認証装置。そして監視カメラ。 赤いランプが、チカチカと点滅している。 「……さすがに正面突破は無理……だよなぁ」 口元に手をあて思考を巡らせる。 「うーん」 例えば、宅配員のフリをしてみるとか? 自分の姿をじっと見る。はい! 却下! まずこんな格好の宅配員なんか存在しねぇ。信じるのは多分うちの母さんぐらいだ。 「違う方法は……と」 じゃあログチーに鍵開けさせるとか? いやいや……そもそも中に入れないから無理だな。ドアの隙間から入れるとは思えねぇし、そもそもログチーに任せるのは危険だな。 小さく息を吐き、ふと天井を見上げる。 「ん? 通気口!? これだ!」 でも、廊下からだと誰かに見られる可能性もある。一歩間違えればゲームオーバーだ。 「なんかないのかよ……」 頭をガシガシ掻きながらあたりを見渡す。廊下の壁にトイレの表示。 「これだ! よし、ログチー、トイレだ!!」 「シルバー! こんな肝心な時にトイレ?」 ポケットから顔を出し呆れた顔をする。 「ちげぇし!」 声を抑えながら返す。 「じゃあなんなのさ?」 ログチーが首を傾げる。 俺は少し口角を上げながら答えた。 「真正面が無理なら、裏から行くしかないって事」 足音を殺しながら廊下を進む。トイレまでの距離はあまりないのになぜか遠く感じた。 周りを警戒しながら、男子トイレの前に立ちトイレのドアを押す。 中は無人。蛍光灯の白い光が静かに空間を照らしている。 個室に入り、鍵をかける。 天井を見ると予想通り通気口があった。 「……ビンゴだな」 「え、ちょっと待って? ここから行くの?」 ログチーが怪訝な
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第19話 初めての闘い

「……誰なんだ! お前!」  三谷が目を見開きながら俺を見る。  俺は答えない。ただ無言のまま少しずつ三谷との距離を詰めていく。 「……近寄るなっ! ほんとに警察を呼ぶぞ!」  俺は呆れながら短く返す。 「呼ばれて困るのは……アンタだって言っただろ? 聞いてた? 俺の話」 「……ふざけるな! 俺は残業してただけで警察に世話になる筋合いはない!」 「へぇ、そうなんだ。だったらなんで……アンタはそんなに怯えているんだよ?」 「な、何言ってるんだ! 別に怯えてなどいない!」 「めちゃくちゃ動揺してんじゃん? 話せば楽になるぜ? 何してたんだよ?」 「だから! ただ残業してただけだ!」  三谷の顔が青ざめている。 「なあ、そこのパソコンにマル秘って書いてるみたいだけど、そういうのって普通ダメなやつじゃないのか?」 「お、俺はセキュリティを扱ってるからいいんだよ! 人の会社に口出しをするな!」  三谷がますます動揺する。 「それに、アンタが握りしめてるのってUSBだよな?」 「USBの何が悪いんだ? データの保存が罪になるのか?」 「いや、それは知らねぇけど……」 (あれ? USBは関係ないのか?)  考えろ、何かないのか? こいつに自供させる何か……?  そういえばナオが言ってたっけ? 会社とかのセキュリティの場合、データ保存するには暗号化がどうとか……? 外部端末はNG……。  外部端末ってUSBのことか! 「なあ? 思い出したんだけどさ、そんなマル秘情報って外部端末に保存するとかはセキュリティ的にダメなんじゃないのか?」  三谷は黙って俯いている。 「三谷さん、聞いてるか?」  そう言った瞬間、三谷が口を開いた。 「お前に何がわかる? ただの素人だろ? 誰に頼まれた? まさか社長か? あのお人好しのバカか?」  中川の悲痛な言葉を思い出し、怒りが込み上げてくる。 「アンタ、それ本気で言ってるのか?」 「……そうだと言ったら?」 「救いようがない奴だな……」  小さくため息をついた。 「お前の言う通り、この手にあるUSBは会社の機密情報さ、だからどうだって言うんだ? 目撃者をこのまま返すとでも?」  三谷が俺に向かっていきなり殴りかかってくる。 「……遅ぇよ」  軽く身をかわす。 「生意気な小僧め!」
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第20話 疲労感と満足感

 三谷を後にし、颯爽と去る……はずだったが、現実はそう上手くいかない。  カメラの位置を気にしながら死角に入る。 「……さて、どうやって出るか」 「シルバー、もう一回機械止めてみようか?」  ログチーが心配そうに袖を引っ張る。 「いや、ログチーのそれは半径2mだろ? 行きはいいかもだけど、帰りはキツいって」 「場所が特定出来たらいいんだけどね」  俺は来た道を思い浮かべる。  天井の通気口を見るけど、高さがありすぎる。しかもカメラだってある。  てか全身が痛くて登れる気がしない。 「ん? 待てよ?」  戻って三谷に出口はどこだ! って聞いてみるとかどうだろう?  いや、いやいやいや、それめっちゃ恥ずかしい奴じゃん! 去り際にアンタは終わりだよ! なんて言っておいて、 『おい三谷!出口教えてくれ!』だって?  ないない!それはない!  そんなこと聞かれたら三谷だって気まずくなるよな……。  あっ! 非常口とか? 学校にもあるから、きっと会社にもあるよな?  フロアをサッと見渡すが、あの緑の目立つ表示マークは見当たらない。  アクション映画みたいに窓を打ち破って出るとか……? それこそ怪盗っぽくね? うん、シミュレーションしてみよう。  窓に向かって走る。その間はカメラに映らないようにログチーが集中する? いや、無理だな。いつもポケットの中で目を回してんのに集中なんて無理だ。  とりあえず突っ切って窓を突き破る? でも防弾ガラスなら頭をぶつけるだけだし、仮に割れたとしても身体中にガラスが突き刺さって病院行きだよな……。それに12階だし落ちたら確実に死ぬ。 「詰んだ……」  頭をガシガシと掻く。  ポケットからログチーが呼ぶ。 「シルバー、今の時間さぁ?」 「……時間!?」  そう言われてハッとする。慌ててポケットを探りカードを出した。 「時間が、消えてる……? まさか……」 「間に合わなかったのか?」  カードを無意識に握りしめる。 「ねぇねぇ? シルバー、聞いてる?」  ログチーが服を引っ張る。 「……なんだよ、お前いい加減」  言い終わる前に、ログチーが言う。 「だからさ、今、21時58分だよ?」 「間に合ったんだよね?」  嬉しそうにこちらを見ている。  自分でも、スマホで確かめてみる。時
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