深夜、郊外の安アパートの一室。灯里はタブレットの画面をじっと見つめていた。保釈は認められたものの、裁判所からは厳しい条件を付けられていた。指定された住居を無断で離れないこと。事件の関係者には、一切接触しないこと。行動を縛られても、ネットを見ることまでは禁じられていない。だから灯里は今日も、画面の向こうから、ひそかに彼らの動向を追い続けていた。画面には、盗撮された写真の数々が並んでいた。山奥の工房での純夏の横顔。あの写真家と湖のほとりを並んで歩く後ろ姿。都内のフォーラムで自信に満ちた輝きを放つ姿。灯里は歯を食いしばりながら冷笑した。爪がタブレットのケースに食い込みそうになった。最近、克己が公の場に現れたときの写真をめくった。記者会見の場に立つその男は、目の下に明らかな隈があり、スーツはどこかだらしなく、ネクタイさえ緩んでいた。灯里は不意に、けたたましく笑い出した。誰もいないアパートに、その声が狂気じみた響きとなってこだまする。スマホが震え、弁護士からのメッセージが届いた。【堂田さん、最終公判は来週火曜に決まりました。検察の求刑は七年です。執行猶予を勝ち取れる見込みは、正直厳しいと思われます】その一文を見つめたまま、灯里の目の奥に残っていた最後の光が失われた。「純夏……あんたのせいよ、全部、あんたのせい!」三日後、暗号化された通信アプリを通じて、ある仲介人と連絡を取った。【二百万、前金は百万。ターゲットはあの地方にいる。詳しい場所と行動予定は送るから。事故に見せかけてほしいの】電話を切ったあと、克己に匿名のメッセージを送った。【純夏が今どこにいるか、知りたい?もうすぐ、彼女の身に何か起こるわよ。あなたのせいでね】同じ頃、純夏と蒼は、次の調査に向けた準備を進めていた。今回向かうのは、これまでよりずっと辺鄙な村。険しい渓谷の奥深くにあり、車で六時間かかる場所だった。「この村の刺繍、すごく独特なスタイルなの」純夏は地図を広げ、目印を指さした。「一番伝統的な草木染めを使っていて、色が何十年も褪せないんですって」蒼はカメラ機材を点検しながら言った。「道の状態が良くないから、雨季には地滑りが起きやすい。雨が降る前に山に入らないと」「物資は揃った?」純夏が尋ねた。「うん。薬、食料、それから
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