LOGIN手には、やはり札があった。 クラリスは覗き込む。 そこには、こう書かれていた。 条件を出せました クラリスは思わず笑った。 「採点されているみたいね」 「満点ではございませんが、かなり良いです」 「満点ではないの?」 「即答しなかった点は満点です。ですが、会議中に三度ほど自分で補足資料を配ろうとなさいました」 「見ていたのね」 「当然でございます」 レオンハルトが横から言った。 「私から見ても、かなり良かった」 「殿下まで」 「一人で背負わなかった」 その言葉に、クラリスは少しだけ目を伏せた。 一人で背負わなかった。
その言葉に、クラリスは少しだけ嫌な予感を覚えた。 国王の視線が、彼女へ向く。 「クラリス・フォン・エルディア」 「はい」 「そなたは、臨時顧問としてこの調査を進めた。見えなかった仕事に名をつけ、届かなかった物資を記録に戻し、再発防止策を示した」 国王の声は重い。 「この制度を一時的な改革で終わらせぬため、王宮に正式な役職を置く必要がある」 クラリスの指先が、わずかに動いた。 イリスが壁際で、札を一枚持ち直す気配がした。 何の札かは見えない。 見えないが、たぶん「即答しない」あたりだ。 国王は、ゆっくりと言った。 「王宮筆頭実務顧問」
国王が尋ねた。 「人員は?」 「初期配置として、記録官一名、補佐二名。繁忙期には臨時補助を追加します」 「財源は」 そこで会議室の空気が少しだけ硬くなった。 制度は美しい。 だが、人を置くには金が要る。 バルツァーが突きつけた問いは、ここにもある。 誰を削るのか。 クラリスは、用意していた資料を出した。 「本件で取引停止となる不正関与商会への支払い保留分、ならびに追回収予定金の一部を初年度費用に充てます。ただし、恒久財源としては、王宮慈善予算の中に“確認費”を明記することを提案します」 「確認費」 国王が繰り返す。 「はい。これ
クラリスは言った。 「元の寄付品、回収者、再仕立て業者、最終受領先を分けて記録します」 ミレーヌが、隣で資料を持つ手に少し力を入れた。 ここからは、彼女の様式の話になる。 「この点については、ミレーヌ・フォン・エルディアが作成した五欄様式を基礎といたします」 会議室の視線が、ミレーヌへ向いた。 ミレーヌは、明らかに緊張した。 けれど、昨日のように逃げなかった。 クラリスは彼女に小さく頷く。 「ミレーヌ、説明をお願いします」 「はい」 ミレーヌは立ち上がった。 資料を持つ指が少し震えている。 それでも、声は出た。 「五欄様
善意という言葉は、美しい。 だが、美しい言葉ほど、ときに中身を見えなくする。 寄付しました。 届けました。 支援しました。 助けました。 そう言えば、誰もが少し安心する。 寄付した者は、自分の善意が誰かに届いたと思う。 受け取るはずだった者は、届かなくても声を上げづらい。 商会は、納入済みの報告書を出せば仕事を終えた顔ができる。 王宮は、美しい報告を受け取って満足する。 その隙間で、冬服は消えた。 膝掛けは届かなかった。 包帯布は薄くなった。 クラリスは、御前会議の長机の前に立ち、深く息を吸った。 「では、
会議室の視線が、ミレーヌに集まった。 かつて「お姉様の仕事くらい私にもできます」と言った少女。 その彼女が今、布の用途を分け、補填対象を説明している。 クラリスは、黙って聞いた。 助け舟は出さない。 今は、ミレーヌの仕事だ。 ミレーヌは一度言葉に詰まりかけた。 その時、リーナが隣で小さく資料を指した。 ミレーヌはそれを見て、頷き、続けた。 「また、再仕立て品については、元の寄付品、回収者、再仕立て業者、最終受領先を別欄にしました。途中で消えないようにするためです」 国王が静かに言った。 「よく整理されている」 ミレーヌの目が大きくなる。 「ありがと







