怜司は上着を脱いで私にかけようとしたが、その腕を警察官につかまれた。「奥さんの死亡について、詳しく事情を伺います。署まで同行してください」警察官たちは暴れる怜司を砂浜へ押さえ込んだ。私の体が遺体袋に収められ、車へ運ばれていくのを目にすると、怜司は激しく身をよじった。「紗奈を下ろせ!どこへ連れていくつもりだ!」砂にこすれた怜司の頬から、血がにじんでいた。それでも、痛みには気づいていないようだった。怜司は警察署へ連行されるあいだも叫び続けた。取調べが始まってからも、警察官に私の遺体を返せと要求した。警察官が証拠写真を一枚ずつ机に並べると、怜司はようやく口を閉ざした。「あなたは奥さんを愛していたと言いますが、こちらで調べたところ、あなたは結婚してから3年間、奥さんを放っておき、奥さんの妹である玲奈さんとは人目もはばからず親密にしていた。今日も、その玲奈さんと結婚式を挙げていたんでしょう?」怜司は首を横に振り、頑なに否定した。「違う!玲奈なんか愛してない。俺が愛してるのは紗奈だけだ!玲奈は、紗奈を嫉妬させるために利用しただけだ。あいつなんか、紗奈と比べる価値もない。俺は13年間、紗奈だけを愛してきた。俺より紗奈を愛してる人間なんかいない!」必死にそう言い張る姿は、玲奈の遺影を愛おしそうになでながら、その思いを語っていた頃の怜司とは別人のようだった。怜司は、確かに私を愛していたのかもしれない。けれど怜司は、愛を好きなように分け与えられるものだと思っていた。ひと切れを玲奈に与え、残りを私に置いておけば、私はいつまでもそれを守って待っていると思っていたのだ。そして私を失って初めて、自分が一番大切なものを失ったと気づいた。結局、怜司の愛が向いていたのは、最初から最後まで自分だけだった。警察官は冷ややかな目で怜司を見て、写真を横一列に並べた。「写真を見てください。魚による損傷を免れた皮膚には、全身に強く締めつけられた痕が残っています。調べた結果、太い鉄製の鎖で縛られた痕だと分かりました。背中には広い範囲にあざがあり、目もひどく充血しています。窒息を含め、これらはすべて生前に受けた傷です」警察官は、さらに別の写真を怜司の前へ置いた。「つまり奥さんは、手足を縛られ、魚に襲われても逃げられなかった。息も
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