「朕が眠っているあいだ……この夜更けに、一人でどこへ行っていたのだ?」長剣から滴った血が床に広がった。カリクスは壁際に追い詰めたレイラの前をふさいでいた。彼女が顔をそらすと、顎をつかむ手もそちらへ動いた。「答えろ、レイラ」カリクスがつかんだ顎をさらに持ち上げた。「へ、陛下……うっ」「門番にも知られず寝所を抜け出し、闇の中をうろついていたのはなぜだ?」「それは……まずは私の話をお聞きください」「言え! 朕を置いて……よもや朕を捨てて逃げようとしたのか!」「……逃げるなどと、何をおっしゃるのですか?」細かく震えるレイラの唇から、かすれた声がこぼれた。侍女服のスカートの裾の内側には、1,000万リュートの金券が隠してあった。ケイランが身分証を用意し終えるまで、見つかってはならなかった。体を調べられれば、その場で処刑される。カリクスの手に恐ろしいほどの力がこもった。「では、この時刻にどこへ行っていたというのだ!」「陛下のために行ってまいりました!」「何だと? 朕のためだと申すか?」「どうか手を……手をお放しください。息ができません……」「お前の息が詰まることが何だというのだ! 朕は今、全身をずたずたに引き裂かれる思いだというのに!」カリクスは唸り、顎を握る手にいっそう力を込めた。「目覚めたとき、お前の消えた寝殿がどれほど地獄のようだったかわかるか! 朕を欺こうとするな!」「欺いてなどおりません、陛下! どうか私の気持ちをお聞きください!」「気持ちだと? 漆黒の闇に一人で消えることが、お前の本心だというのか!」レイラの目元から澄んだ涙がこぼれ、カリクスの手の甲を濡らした。涙が触れると、カリクスの指がわずかに震えた。レイラはその隙に手を懐へ動かした。裾の金券に触れてはならない。手前に入れておいた薬草袋の紐だけを、指先で探った。その隙を逃さず、レイラは懐から小さな毛織りの袋を取り出し、床へ落とした。するり、ぽとり。袋の口がほどけ、強い薄荷の香りを放つ青い薬草の葉がこぼれ出た。「これは……いったい何だ?」「銀青草です」「銀青草?」「呪術による激しい片頭痛を鎮める、唯一の薬草です」レイラは胸元をかきむしり、激しく咳き込んだ。「ごほっ、ごほっ……皇室の薬材室の奥にしか保管されていない、貴重な薬草なのです」「なぜお前が侍
最終更新日 : 2026-11-03 続きを読む