偽りに満ちた愛流産を五回繰り返した後、なぜ私の身体は赤ちゃんを守れないのかと医師に相談に行った。
しかしドアの外で、夫と医師の会話を耳にしてしまった。
「君が処方した中絶薬はなかなか良く効くな。彼女はもう五回も流産した。いつになったら子宮摘出手術ができる?安斎恵梨(あんざい えり)に俺の子供を産ませるわけにはいかないんだ」
「ああ、それと流産予防薬も追加で処方しておいてくれ。真希が妊娠したからな。絶対に健康な赤ちゃんを産ませるんだ」
医師が言った。「しかし恵梨さんの身体はこの数年で随分弱ってて、もう二度と子供を授かることは難しいかもしれないが……」
滝沢竜一(たきざわ りゅういち)は平然と答えた。「だから何?奴に子供が産めなくなるように、わざと何度も流産させてきたんだ!」
「まあいい、その話はこれまでだ。これから真希とマタニティ用品を買いに行くんだ」
ドアの陰でその言葉を聞きながら、私は全身の血の気が引いていくのを感じた。
結局、私が必死に守ろうとした愛は、ただの笑い話に過ぎなかったのだ。