母が倒れて二十日目、私は彼氏と別れることにした母が重い病気で20日間も入院していたのに、この病院で医師として働いている彼氏の野口空(のぐち そら)は、一度もお見舞いに来てくれなかった。
一日目は、空の幼馴染である入江夏美(いりえ なつみ)が引っ越すとかで、わざわざ休みを取っていた。
二日目は、夏美が病院に研修に来たからって、一日中つきっきりで世話を焼いていた。
三日目、四日目……
母の病室は13階で、空の科は17階。
エレベーターなら10秒、階段でも2分とかからないたった4階の距離なのに、空は20日間、一度も母の病室に見舞いに来なかった。
母の退院の日、私は一人で駅まで見送った。
その途中、ようやく空からメッセージが届いた。
【ごめん、今日は夏美が飼ってる犬の予防接種があるから、そっちを先に送らないと……】
そのメッセージを見て、私は自分の気持ちを伝えようと決めた。
【うん、わかった。気をつけてね】
私は、フッと乾いた笑みを浮かべた。
【それと、私たち、別れよう】