あなたはもう、私のセーフティネットじゃない五年前、国境での暴動の際、私は戦場ジャーナリストとして、負傷した神前武蔵(かんざき むさし)を救うため、流れ弾で脳神経を損傷した。
それ以来、私は右手の震えが止まらず、話すのも一拍遅れる「どもり記者」になってしまった。
あの時、武蔵は私の前で跪き、誓ったのだ。
「亜矢、結婚してくれ。命に代えても君を守る」
それからの五年、彼は私のためにセーフティネットを築き上げ、あらゆる困難や中傷から私を守り抜いてくれた。
私が言葉に詰まると、彼は根気強く待ってくれた。手が震えてペンが握れない時は、未完の戦場レポートを代わりに書き上げてくれた。
武蔵は言った。「亜矢、恐れるな。俺が君の声となり、ペンとなるんだ」
その後、彼はトントン拍子に出世し、若くして傭兵部隊の戦闘チームを率いるリーダーに昇進した。
そして私は、彼の輝かしい経歴にそぐわない、人には見せられない傷となってしまったのだ。
全ては沢村恵麻(さわむら えま)が現れるまで。
恵麻は武蔵の新しい側近で、愛らしくて活発、家柄も超一流だ。
初めて会った時、彼女は首を傾げ、私を嘲笑うように言った。
「武蔵さん、奥様のお話し方って……ちょっと変じゃありませんか?」